キャラクター詳細
機械生命体の「自我」について、学者たちは次のような考えをめぐらせた——「ある機械が部品を毎日少しずつ取り替えられ、最終的にその機械を構成するすべての部品が当初と違うものになった時、それは『元の自分』と同じであると言えるのか?」
この問いはイネファからすると、悩むほどのことではないらしい。機体や部品をどれだけ取り替えようと、彼女の「コア」は決して変わらない。つまり、「コア」のある場所にこそ「イネファ」は存在するのである。
では、コアまで分解するとしたら、どうだろうか?どの部分が彼女の自我を表すのか?現在の技術では成し得ないが、イネファの製造者はコアを徹底的に分解して調べることを切望してきた。だが、うっかりイネファを壊してしまうようなことがあってはならないと、今ではもうそういった考えは捨てたようだ。
しかし、彼女の「自我」を定義するものがコアに含まれる思考と記憶だとして、そのデータが先ほどの問いに出てきた部品のように、自分の意思と無関係に消えたり現われたりしたら、「イネファ」という存在の定義はあいまいになっていくのではないだろうか?
あるいは「外的な力」を借りることで、イネファは自我を保つことができるかもしれない。たとえば彼女がどんなに変わろうと、ずっとそばにいてくれる友人たち——
「お前ほど『徹底的』に掃除をするメイドは他に知らない…いや、もう一人いたな!」豪胆な騎士はそう話した。
「あんたは…ナド・クライで一番の菓子職人だな。まっ、人じゃなくてロボットだけど!」と時々顔を出す賞金稼ぎは語る。
そして、彼女を作った天才機械技師はこう言った。「イネファはアイノの家族なんだから——絶対帰って来るんだよ!」
この支えがあるからこそ、イネファは何度も記憶を失い、途方に暮れることになろうと、はっきりこう答えることができる——
「私はイネファ、万能型家庭用ロボット——貴方の友人です。」
キャラクターストーリー1
「カチャカチャ・クルムカケ工房」で一体のロボットが製造された。その知らせは、瞬く間にナシャタウン中を駆け巡った。
そして、情報が広まると共に、妙な噂話まで飛び交い始めた。たとえば…
「彼女は強力な磁場を発生させ、人々の日常生活をかき乱す」、
「彼女の目と耳は壁越しであろうと情報を収集できる」、
「彼女は手のひらから岩石を溶かすほどの熱線を出すことができる」といった内容だ…
……
これらの噂について「壁越しに透視や盗聴なんてできないし、一撃で丘を吹き飛ばすこともできない」とイネファは何度も否定したが、なかなか信じてもらえなかった。
人間という生き物は、知らないものに関してあれこれ憶測するばかりで、その真実を明らかにしようとするほどの勇気や意志を持つ者は、ごくわずかしかいないのだ。
アイノは特にこのことを気にかけておらず、「イネファにやるべきことをやらせるまで」といった感じだった。どうせ客がロボットだからといって、ナシャタウンの青果店が会計をおまけてくれるわけではないのだから。
イネファは半信半疑で言われたとおりに行動した。すると八百屋は驚き、たじろぎ、震えながらも、イネファの手にあるモラに「説得」され、勇気を振り絞って商品を量り、包んでくれた。
同様に、その日は鍛冶屋と雑貨屋でも次々と驚きの声が上がった。
一週間後、イネファが再びナシャタウンを訪れると、店員たちがちょうど彼女の噂話に花を咲かせていた。本人が来たので驚いていたが、先週に比べると控えめな反応だった。
三週目になると、彼らはもう驚きと好奇心を目の奥にしまい込む術を身につけていた。
そして四週目を迎えた頃、ナシャタウンの噂話にかすかな変化が現れた——
「彼女の磁場は秤の測定値に影響を与えない」、
「彼女の目と耳では、商品の原価まで見抜くことはできない」、
「彼女が熱線を武器にして、値切り交渉することはない」といった具合だ…
……
「一体なぜでしょう…私はごく普通に交流をしていただけで、人間関係を良くしようと特別なことをしたわけではないのですが…」
この変化についても、アイノはこれといった反応は示さず、気にかけている様子はなかった。彼女はイネファがナシャタウンに溶け込めると、最初から分かっていたようだ。
結局のところ、ナド・クライのような玉石混交の場所では、何の悪意も持たないただのロボットのほうが、人間よりもよっぽど信頼できるということなのかもしれない。
キャラクターストーリー2
イネファを造り、目覚めさせるまでの間、アイノは深夜まで作業に追われ、イネファの金属製の腕を枕にして眠ることがよくあった。そしてイネファが目覚めた今でも、彼女はしょっちゅう添い寝をせがんでいる。
イネファはこのことについて、特になんとも思っていなかった。データベースの検索でも、アイノの表情分析でも、一緒に寝ることで彼女の気分と睡眠の質を大幅に改善できるという結論が示されていたからだ。ただ、抱き合った時に金属製の体はどうしても冷たく、アイノが風邪を引いてしまう恐れがあった。
「つ…冷たくなんてないよ!——っくしゅん!」アイノはくしゃみをしながら強がりを言った。
「提案——まずは薬をお飲みください。」イネファは少々あきれた様子でカップを渡した。「ご安心を。砂糖は入れてありますから。」
アイノは温かなカップを両手で包み込み、立ち上る湯気に頬をくすぐられながらつぶやいた。「…イネファもこのカップみたいに温かかったらなぁ…」
その夜、イネファはやっとの思いでアイノを寝かしつけると、ひとり工房の外で自身の両手をぼんやりと見つめた。
金属の外装に、冷たく澄んだ月明かりが映った。その下では、無数の歯車と駆動軸が動いている。
この「体」を温かくする方法がないわけではない。だが、非稼働時にも適度な温度を保つには、どうしたらいいのだろう?
アイノの眠りを妨げないよう、できるだけ騒音は抑えないといけない…そうなると、より緻密な方法と、繊細な制御が必要となる…
イネファは計算しながら、自分の体を使って実験を繰り返した。
連日にわたるイネファのかいがいしい看病もあって、アイノの風邪はほとんど治った。ところがある朝、どれだけ待っても、イネファが起こしに来てくれなかった。
そういえば、ここ数日イネファは様子がおかしかった気がする…アイノは思わず心配になった。「まさか、ロボットに風邪がうつるわけないよね?」
そう考えたら、アイノは横になっていられず、布団をはねのけて工房を飛び出した。しかし、イネファの名前を呼ぶよりも先に、ピクリともせず地面に倒れている彼女を見つけた。
「イネファ…大丈夫?」恐る恐るイネファの額を撫でると、アイノはすぐさま驚きの声を上げた。「熱い!イネファ…本当に熱を出したの?」
「…内部パーツが過負荷で発熱しています…ただ今、回復を試みています…」動けなくなったイネファは、観念したように失敗を認めて言った。「私の計算ミスです。最適な温度は割り出せましたが…現在のハードウェアでは、長期的にその温度を維持することができません。どうか温度制御モジュールを追加してください。」
「任せて!明日…いや、今すぐやる!冷却機能のアップグレードが必要なんだよね?」アイノはイネファが「最適な温度」を求めている理由など気にも留めず、大急ぎで工房に駆け出そうとした。
「いいえ…もう少し繊細な機能が必要です。現在の体表温度を維持できればベストです——」イネファは地面に横たわったまま、空をまっすぐに見つめてそう言った。
朝日が銀白色の外装に降り注ぐ中で、イネファは「誰かと抱き合うのに最適な温度」を算出していた。
キャラクターストーリー3
いくらイネファが高性能でも「低評価」を下されることはある。
「このケーキはおいしいし、見た目もいい。甘さも文句ない…でも、魂がこもってない。分かるか?魂だ!」
ある日、食事目当てで訪ねてきたヤフォダは、アイノの不在をいいことに、口元を拭いながらあれこれと文句をつけ始めた。
それに対して、イネファは無表情のまま皿を下げてこう言った。「そもそも食べ物に魂はありません。」
「これだから鉄の塊は!今のは『たとえ』だよ!」
そしてヤフォダは「魂のこもっていないスイーツは、スイーツとしてダメだ」、「魂のない料理人は料理人じゃない」などと難解な理論を長々と語り始めた。
イネファはダメ出しのほとんどを自動的にシャットアウトしたが、その中である一言が彼女の耳に届いた。
「…ただ手順通りに作るだけじゃ、よりおいしいスイーツにはならない!」
「それは違います。アイノは私に味覚センサーを搭載してくれましたので、味付けの良し悪しを判断して、自主的に調理プログラムを調整できます。」
それを聞いて、ヤフォダは核心を突くことを言った。「合理的だからって、おいしいとは限らない。甘さや塩加減をきっちり計算して作ったって、アイノが出来上がったものをうまいと感じるかは別だ!」
イネファはヤフォダとの言い争いで、珍しく言葉に詰まった。そもそも彼女の味覚センサーには、「おいしい」というような主観的判断をする機能が備わっていなかったのだ。
それから少し間をおいてイネファは答えた。「…アイノのフィードバックから情報を集め、人間が好む味のモデルを構築することにします。」
ヤフォダはささやかな勝利を噛みしめるようにして言った。「でもアイノが甘い物を食べられる頻度は限られてるし、一日で集められるフィードバックなんて、たかが知れてるんじゃないか?」
真剣に考え込むイネファを見て、ヤフォダは追い打ちをかける。「アイノにサプライズをしてあげたくないか?ふふっ…あたいが『外付けセンサー』をしてやってもいいぞ…?」
……
その後、ヤフォダはこの日の偉大な勝利について、日記に熱く書き綴った——憎たらしい鉄の塊を見事な交渉術で言い負かした、ついでに長期の食い扶持を言葉巧みに手に入れた、と…
アイノはイネファの料理開発能力がみるみる向上していること、そして料理の後に残った食材を集めていることに気が付いていたが、その目的については分かっていなかった。
この円満な協力関係は、イネファが自身の料理プログラムの最適化に限界を感じ、突破口を探し始めるまで、人知れず続いた。
「今回の試作品は、貴方の仰っていた『魂』を特に意識して作りました。」
イネファが差し出した新作を前にして、ヤフォダは何も疑わず嬉々としてそれを口に運んだ。「ほ、ほら…だから言っただろ?…料理には魂が必要だって…あんたにも、その意味がようやく分かったみたいだな!」
この鉄の塊、あの時適当に言ったことをまだ覚えてたのか!ヤフォダは咀嚼しながら、そんなことを思った。うん…もう結構食わせてもらったし、そろそろ引き際だな…よし、軽く褒めてやって、「もう一人前だ」とでも言っておくか…
すると、イネファが言った。「私は『魂』の定義について再考しました。」イネファは大真面目に語り始めた。「『魂』という言葉は、生物の生命力を表現する際によく使われます。ですので、今回は生命力が感じられる食材を使ってみたのです。」
ふむふむ、魂…生物の生命力ね…ん?ヤフォダはふいに嫌な予感がした。だが、もう遅かった——口の中で何かがうごめくような異様な感触がする。
下を見ると、ケーキのスポンジの間にまだピクピクと動いているトカゲのしっぽが挟まっていた。しかも途中で千切れている。
「…トカゲのしっぽは、体から離れてもしばらくは生命力を保っています。食材の鮮度を保つため、今回はあえて…あら?ヤフォダさん?どうして気を失っているのですか?」
キャラクターストーリー4
「花燭と矢羽根の司祭」は、かつて自身の領地を完全に閉ざされた避難所に変え、理想の国を築こうとした。彼女はその計画を「シバルバー」と名付けた。これは当時、人類の伝説に登場した冥府の名である。
しかし、理由は謎だが「シバルバー」は完成後も運用されず、彼女が処刑された数十年後に、彼女が育てた人間の娘によって使われた。それも、別の領主を何千年も閉じ込めるための牢獄として。
「曙光の鏡」が分裂した際、「領主」はその力の大部分を引き継いだ。封印されているとはいえ、その存在は十分脅威である。
完全に滅ぼすとなれば、至高なる領主は死に際に激しく抵抗し、広範囲にわたって被害を及ぼすだろう。だが封印によって力を削ぎ、いずれ消滅するのを待つとしても、どれほどの歳月が必要となるかは見当もつかない。ましてや、その間に当時「矛盾」と呼ばれていた存在が——イネファが「領主」の影響を受けないとも言い切れない。
至高なる領主の力は謎に満ちている。最も簡単かつ安全な方法は、イネファを遥か向こう岸へと送り、同じ起源を持つ二つの意志を果てしなく広がる海によって隔てることだろう。
また、これはある意味でチャンスとも言える。当時すでにナタは人と龍の血に染まって長かった。イネファの境遇を考えると、海の向こう側に渡ることが、新たな居場所を見つける近道になるかもしれない。
そんな期待を胸に、イネファはナタを去った。かつて王女が龍の巣を去った時と同じように。
こうして彼女は、海と時間の波に揉まれながら、一人孤独に「居場所探し」の旅に出た。
彼女は魔神戦争直後の世界をその目で見ている。雪原からやってきた人々は暖かい場所を求めて、未知の土地に足を踏み入れ、大地を耕して村を築いた。
それから開拓時代の輝きも実見した。機械の轟音が響く中、雄大な都市国家が築き上げられ、冒険者の笑い声と金貨のぶつかり合う音がなんとも小気味よく響いた。
さらには厄災に蝕まれた荒野も目にした。「ワイルドハント」あるいは「アビス」と呼ばれるその災いは、大地を隅々まで蹂躙し、人々の心を絶望の色に染めた。
その後、途方もなく広がる闇を見た彼女は、死よりも静かな眠りに落ちた。
すべては一瞬にして時間の奔流に呑まれた。雨に溶ける涙のように、跡形もなく…
歩んできた道のりを振り返れば、無数の記憶が地面に敷き詰められている。だが、その始まりも終わりも見ることはできない。
キャラクターストーリー5
古代のナタ人はバニラという名の作物を育て、料理や薬などに用いていた。
バニラは本来、森の奥深く仄暗い場所に育つ。太い枝も立派な根もないので、他の樹木に寄りかかるようにして、木々の隙間からこぼれる日の光を頼りにひっそりと成長するのだ。
なんてか弱い植物だろう、まるで人間のようだと幼い娘は嘆いた。
一方、少し年上の兄は「強者に依存することも一種の生存戦略」だと思った。
だが単なるツル草でも、蜘蛛の巣のように複雑に絡み合い、鎖のように固く結びつけば、大木を締め付けて命を絶つことはできる。
母は鋭いナイフで熟したさやを切り開くと、かぐわしい香りと共に小さな実が露わになった。
自身の気高さを忘れずにいれば、たとえジメジメとした腐葉土で育とうと、たくましいツルは空高く伸びていく。
……
十三の至高なる領主は秘源技術の最高峰であり、炎の龍王の末裔でもある。誇り高き彼らが「命ノ星座」などという束縛を受け入れるはずがない。
「曙光の鏡」と対を成すイネファは、そもそも星屑の加護を受けるべき存在ではなかった。
ナド・クライを彷徨った二千年の間、彼女は絡み合う無数の道を名もなき旅人のように進み、無数の星が輝き尽き果てる瞬間を見届けてきた。時には「運命」という名の糸に導かれることも…時には「人間」という星の光に照らされることもあったが…彼女はそれらのことを次々と忘れていった。
しかし、コアの奥深くにある「月の輪」が灯された瞬間、記憶が一気に押し寄せ、とうとう旅の最初に見た星の光を思い出した——
イネファが旅立つ時、リアンカは記念と称して、手折ったバニラを彼女の部品の隙間に飾った。
その時のイネファには、なぜそんなことをするのか分からなかった。
あの花はとうの昔に広大な海の果てで枯れてしまっている。そしてバニラ自体も、ナタの地から姿を消しつつあった。
あれから二千年経った現在、天空の彼方、星々の間には、天高く伸びた「バニラ」が静かに花を咲かせている。
「ビルギッタ」
いつもイネファの傍にいる小さなロボット、多機能スマート補助ユニット「ビルギッタ」。本来の名前は「ピポピポチッタチッタガシャンシュゴーグルポイ…(中略)…汎用型マルチマシン」という。
「本来の名前」と言っても、実は「最初の名前」ではない。アイノが設計した当初、このマシンにはスパナを手渡したり、部品を運んだりといった簡単な機能しかなかった。そこで「ピポピポ」というマシンの起動音と、部品がぶつかり合う「チッタチッタ」という音を元に「ピポピポチッタチッタ運搬機」と命名されたのだ。
イネファが目覚めた後は、彼女がアイノの身の回りの世話をする傍ら、そういった単純だが骨の折れる力仕事もやるようになった。そしてイネファの強い要望を受け、小さなロボットには掃除機能が追加されることになった。
ただ、アイノが「吸引力がカギ。パワーはあればあるほどいい」と主張した結果、改造後のマシンはゴミや汚れであろうと、アイノがうっかり落とした小さな部品であろうと、何でも掃除するようになってしまった。硬い物に「ガシャン」とぶつかっては、強烈な吸引力でバラバラにして「シュゴー」と吸い込む…こうしてロボットは「ピポピポチッタチッタガシャンシュゴー運搬清掃兼用マシン」と改名された。
イネファがその名前を記録してまもなく、小さなロボットはまたもやアップグレードを迎えた。強力なエネルギー貯蔵機能とレーザーモジュールが搭載されたことで、アイノ曰く「イネファとの共同作戦能力」が向上しており、緊急時にはイネファにエネルギー補充して、稼働時間を引き延ばすことができるようになった…そして名前は「ピポピポチッタチッタガシャンシュゴーグルポイ運搬清掃畜エネ作戦兼用マシン」と変更された…
こうして何度も改造を重ねるうち、アイノでさえロボットの名前を覚えられなくなってしまった。音声で呼びかけて起動するとなると、かなりの時間を要するため、イネファもさすがに効率が悪すぎると感じていた。そういったわけで、小さなロボットの名前を簡略化することになった。
アイノはこめかみを押さえながら、しばらく悩んで言った。「う~ん…思い切って最初の部分だけにしよっか。『ピポピポ』に決まり!」
「ピポピポ」は「ピポッ…」と小さく返事をしたが、モニターの輝度が落ちている。どうやらエネルギー不足のようだ。
その時イネファはふと首をかしげ、ずっと思考モジュールの片隅にあった疑問をぽつりと漏らした。「そういえば、私の名前は『イネファ』で、擬音と機能を元に命名されたわけではありません。どうしてですか?」
アイノは「目覚めるまで、どんな音を出すか分からなかったから」とか「機能が多すぎて名前を覚えるのが大変」など、いくつもの理由を挙げた…そして最後に背を向けて小さくつぶやいた。「…それにあの時、ふと思ったの…『イネファ』って、まるで家族の名前みたいだなぁって…」
それを聞いて、イネファの思考モジュールの中に不思議な温もりが生成された。まるで暖かい風に包まれているかのような…陽だまりの中に立っているかのような感覚がする。今は夜で、外には風一つ吹いていないというのに。
だが、それから間もなく、アイノは先ほどの言葉を振り払うように大きな袖をぶんぶんと振って叫んだ。「あっ、違うよ!別に『カタカタ』や『ガーガー雪玉機』や『コポコポお茶淹れ機』が家族じゃないって言ってるわけじゃないからね!みんなにも、唯一無二の名前をつけてあげたつもりだし。保護者って大変なんだよ?それぞれの名前を考えないといけないんだから…」
「でしたら、この子の名前は私が決めてもよろしいですか?」イネファはしゃがみ込んで「ピポピポ」の角ばった鉄の頭を撫でながら聞いた。
「えっ?別にいいけど…どうせ今はイネファと一緒にいるし…」
「それでは『ピポピポ』よりも『家族らしい』名前にしましょう。たとえば『ビルギッタ』はいかがですか?」
月の輪
【ネフィルヘイムの祭具と願いに関する研究】
……
…派遣された龍従は、エクプリニクで騒動を起こした人間の痕跡から、対象の擬似サンプルを無事回収した。領民によると、そのサンプルはナタランティア外部の商人から「神の目」と呼ばれているらしい…
…サンプルの作動原理について、第三席と簡単な意見交換を行ったところ、彼女は興味深い仮説を提起した。サンプルはネフィルヘイムの祭具と、何かしら関係があるかもしれないと彼女は言う…
…少々強引な手段ではあったが、現在も作動する「月の輪」を入手した。(この「月の輪」はネフィルヘイムの祭具であり、より正確には三人の裏切り者がその追従者に授けたもの…人間と彼女たちが意思疎通するための「おもちゃ」だ。)王から賜った知識のとおり、「月の輪」は簒奪者の汚れた元素力ではなく、より純粋な力によって動いている…
……
…さらなる実験により、第三席の見解は実証された。北方の祭具と同様、「神の目」を動かす素材もまた魂である。理論上は願うことによって(…)を固定し、そこから(…)を用いて元素力を引き出す…
これもまた、現在の「神の目」が人の「願い」に呼応して現れる理由なのだろうか?
——CL-08イ・カコツィ・イキスマルワシャ・ク・レール
……
「…このコアが燃素で動くなら、燃素で制御することもできる。花燭と矢羽根の司祭が残した知識を見る限り、これが一番適しているはず…でも…」
イキはリアンカの持つ「宝石」を見つめ、わずかに眉をひそめた。
「…本当にあいつのために使うつもり?これはお母さんが残してくれたものなんでしょ…?」
リアンカは「宝石」を撫でながら、自らの答えを返した。
「…彼女の数ある研究対象の一つに過ぎない。気にすることないわ。それに、母が私に残してくれたものの中で、何よりも大切なのはこれでも、チェーンブレイカーでもない…」
悠久の歳月を映し出してきた「宝石」は、リアンカの手のひらでキラキラと輝いている。まるで滅びることを知らない龍の瞳のようだ。
「何よりも大切なもの…それは私に託された、この道を歩んでほしいという『願い』よ。」