キャラクター詳細
ナド・クライの春は残酷なものだ。
一年中白銀の雪に覆われ、泥中の生命に一切の幻想を抱かせない北国とは異なり、ナド・クライの春は常に偽りの希望を見せる。
厳しい冬が過ぎ去り雪解け水が大地に染み込むと、前年に地中深く埋もれた種は再びその甘く湿った味わいを口にする。それにより、自らの茎葉を破壊した大敵が時の流れと共に消え去ったと思い込む。そして、すべての芽は必死にもがいて大地の亀裂から顔を出し、久しぶりに新鮮な空気を吸おうとするのだ。
しかし、それは自己欺瞞の誤解に過ぎず、時機を弁えない者への罠にほかならない。早春のただ一夜の霜があらゆる努力を無に帰し、寂寥たる荒野だけが残される。
ナド・クライの春は狡猾なものだ。
だが幾度もの理由もなく吹き荒れる風や霜にさらされ、大地さえも疲弊する過酷な状況を生き延びることができたなら、たとえそれが最もありふれたヴィンテル草であろうとも、荒廃の後に訪れる世界でその身に相応しい陽光を浴びる。これは不屈、あるいは勇気への報いであり、時にそれらは大差のないものである。
だからこそナド・クライのライトキーパーはよく自分たちをヴィンテル草に例えるのだが、厳冬を乗り越え春の寒さにも耐え抜くヴィンテル草はごく少数だ。まして、草とは異なり灯台の下で育ったイルーガは、むしろ陽光になることを願っている。
ライトキーパーの間で密かに語り継がれ、外部の者にはほとんど知られていないもう一つの伝説では、燃芯を運ぶ夜鳴鶯は闇夜の果てから飛び立ち、空を横切る流星となる。そして、彼らがくわえた燃える草の茎こそが白昼を照らす光の源だという。
イルーガはこちらの物語を好んだが、養父であるニキータにはそれを打ち明けなかった。
キャラクターストーリー1
心地よい汽笛の音と共に、客船はゆっくりとナシャタウンの新港に進入した。港の管理者が入国者名簿を確認する前に、船客たちは次々と下船する。
もちろん、本来の入国手続きなど形式上のものに過ぎなかった。ナド・クライは流浪する者たちの「楽園」であり、その扉は常に貧富貴賤を問わず訪れる者すべてに開かれているのだから。だが今回は状況が少し異なっていた。昼行灯の港務管理人が到着した時、一組の夫婦がまだ船内に残っていたのだ。
「誰かをお待ちで?」
彼はその夫婦が何か困っているのではないかと思い、そう問いかけながら近寄る。
「いえいえ、入国書類の確認を待っていたんです。妻が、もし勝手に降りると港務に支障をきたすのではと心配していまして。ようやく来ていただけて、安心しました。」
そう答える夫の後ろに隠れる妻は、明らかに人前に出ることに慣れていないようだった。
船乗りの与太話を信じ込み、故郷を離れて新生活を始める決意をした若い夫婦だろうか。それとも世間の掟に背いた身分違いの恋路の果てに、夜闇に紛れ客船に乗り込んだ貧しい青年とお嬢様かもしれない。
だが、真実がどうであるかは重要ではない。ナド・クライにおいて、他人の過去を詮索する者はいないのだから。
登録作業を終えた港務管理人は、遠ざかる夫婦の背中を見送りながらなんとも言えない感慨に耽っていた。
元来、一般人がナド・クライで平穏な暮らしを営むのは贅沢な願いだったが、幸いにも今は稀に見る良い時代だ。長らくこの地を脅かしてきたワイルドハントは、この数十年間に大規模な襲撃を起こしていない。現地の人々に残された恐怖の記憶も、体験者の逝去や時間の経過と共に薄れゆき、今では田舎の物騒な民話となっていた。あの夫婦はここに家庭を築き、あるいは子供を授かり、危険を冒すことなく牧歌的な生活を送ることだろう。
しかし、こんな平穏な日々はいつまで続くのだろうか?
……
災難とは、いつだって突然やってくるものだ。ある夜、イルーガが目を覚ました時、眼前には火の海が広がっていた。
もしそれが本当に火であれば赤いはずだが、彼を取り囲んでいたのは、炎のように揺らめく漆黒の壁だった。昔聞いた話にも黒い炎が出ていたことをふと思い出す。それは、窓の外から聞こえる狼の遠吠えと共に、彼の最初の悪夢を形作った。
あれは悪夢などではなく、あるいはそもそも悪夢とは、現実が決して教えてくれない真実を露わにするものなのかもしれない。
普通の子供であれば、すでに泣き崩れていたはずだ。だがイルーガは、黒い炎の話を語り終えた母が囁いた言葉を覚えていた。泣いてはいけない。泣くと、命を奪う怪物に見つかってしまう。案の定、周囲の泣き叫ぶ声はまもなく聞こえなくなった。彼は、みんなが怪物に連れ去られたのだと悟る。
死の静寂はどれほど続いただろうか、イルーガには分からなかった。次第に暗闇の中から微かな音が聞こえてくる。まるで地獄からの呼び声のようだ。だが、やがてそれらの音も聞こえなくなり、代わりに響き渡る大きな足音に伴い一筋の光が差し込んできた。
「こんなに震えて…かわいそうに。無理もないな…辺りではワイルドハントが荒れ狂い、生きた人間の気配など微塵もないのだから。」
「子供を守るために…立派な母親だ。こんな状況で生き抜いてきたんだ、この子はきっとたくましく成長するだろう。」
イルーガにとって、体以外のすべてと両親を失ったことは、まるで前世の夢から目覚めたかのように思えた。自分は本当にあの災厄から生き残れたのか? 実のところ、両親の名前すら思い出せなくなっていた。ワイルドハントは、彼が「故郷」と呼んでいた場所だけでなく、過去の人生も消し去ってしまったのかもしれない。そこには埋めようのない空洞だけが残されていた。
しかし、時間さえ十分にあれば、どんなに深い傷にも必ずかさぶたができる。幸い、ここはナド・クライだ。他人の過去を詮索する者はいない。
キャラクターストーリー2
喧騒に満ちたナシャタウンとは対照的に、丘の上に位置するピラミダはまるで軍事要塞のようだった。高塔を中心に広がる町並みは、荒野に佇む戦士のように青空の下で孤独に警戒を続けている。
時折貴重な物資を運んでくる商人を除けば、住民の大半がライトキーパーだ。イルーガはこの町で、平穏な日々を送っていた。
イルーガを大火災の残火から救い、ここへ連れてきたのはニキータという名のライトキーパーであり、先日マスター・ライトキーパーに就任したばかりだった——とはいえ、それは部隊を一から再編するのと大差はなかった。というのも、先の大戦で生き残ったライトキーパーは、まさに数えるほどしかいなかったのだから。
だが、そのような災厄を経験したことで、レンポ三島の住民たちはようやく、先祖代々語り継がれてきた恐ろしい伝説が荒唐無稽な怪談ではないことを悟ったのだ。そして、強い意志を持った多くの若者たちが立ち上がり、夜を見守る一団に加わった。
新たに加わったライトキーパーたちは、親しみを込めてニキータを「おやじ」と呼んだ。彼は決して年老いているわけではなく、せいぜい数多の苦難を経験した中年に過ぎない。しかし、適材適所の配備をする彼の細やかな心配りにより、隊の誰もが自主的にライトキーパーに留まっていた。
安逸な生活を捨て、常に危険に身をさらされ、名誉以外にほとんど見返りのない組織にとって、これは紛れもない奇跡といえる。
だがそんなことは、まだ幼いイルーガには今のところ関係のないことだった。
最初の一、二年は、ニキータが自らイルーガの面倒を見たが、生活の知恵と呼べるものはまったく教えられなかった——何しろ、自分自身もよく知らなかったからだ。その代わり、イルーガは彼から多くの戦闘技術を学んだ。獣の痕跡の探り方や、不意を突いた致命的な一撃の与え方などである。イルーガは飲み込みが早く、目の前の戦いに集中している時は、悪夢に追われることさえなかった。
しかし、それも長くは続かなかった。自分のやり方では子供が道を踏み外してしまうと考えたか、あるいは隊の規模の拡大に伴い軍務が繁忙を極めるようになったからか、ニキータはピラミダが庇護する戦争孤児たちを別の居住地に移し、専任の世話役を付けることにしたのだ。
その子供たちの中でイルーガは最年長だったため、大人の付き添いがなくとも城内を自由に往来できた。ライトキーパーは大家族のようなもので、イルーガを実の子供のように面倒を見てくれた大人も少なくなかったが、彼はそういった好意に対して慎重に距離を置いていた。自分より幼い子供の世話を手伝っていない時は、いつもライトキーパーの資料室に一人で籠もり、他人が見れば退屈な文書に没頭した。
それには英雄たちの物語が綴られていたが、一つとして凱旋という結末を迎えたものはなかった。どの記録も最後には決まって「この偉大なるライトキーパーは故郷を守るため、その命を捧げた」という一文が記されていた。
「故郷」——イルーガは無意識にその概念を避けていた。内心ではここが自分の故郷だと思っていたが、その言葉を口にすることはなかった。まるでそれに触れさえしなければ、世界を欺けると思っているかのように。
キャラクターストーリー3
ピラミダでの生活は一年の大半が修行のようなもので、子供にとっては新鮮な楽しみが欠けていた。だが、町の最上層のグレート・ミード・ホールで宴が開かれる時だけは、遠征中のライトキーパーたちが城に戻ってきて、厳かな要塞も僅かに活気づくのだった。
その時期になれば、年長の子供たちは厨房仕事を手伝うのが慣習になっている。普段は滅多に味わえないごちそうにありつくことが彼らの一番の楽しみであり、当然イルーガもその例外ではなかった。帰還したライトキーパーが持ち帰る各地の食材を扱い、厨房の大人たちから手ほどきを受けるうちに、彼は調理の技術も身に付けていった。
マスター・ライトキーパーが定めた規則では、大人たちの宴が終わるまで子供は食卓につくことを許されなかった。ニキータが言うには、「子供は酒を飲めないから」とのことだった。子供だましの言い訳だな、とイルーガは思った。自分はもう子供ではないのだ。
そのため、大人たちの隙をついてホールに忍び込み、どんなごちそうが振る舞われているのか確かめようとしたことがあった。しかし、そこにあったのは酒宴の席にもかかわらず涙を流す大人たちの姿だけで、彼らは誰もイルーガに気づくことはなかった。
宴は楽しいものではないのか?なぜみんな、あんなに悲しんでいるんだろう?イルーガはそんな疑問を胸中にしまい込んだ。
時は流れ、宴が開かれる頻度は次第に増していったが、大人たちは喜ぶどころか、ますます悲しげな表情を浮かべるようになった。
イルーガも、何か様子がおかしいと薄々感づいていた。資料室に行くたびにホワイトベリークッコをくれたおじさんは、冬を過ぎると二度と姿を見せなくなった。パン作りを教えてくれたおばさんは、ある日突然見知らぬお兄さんに変わっていた。大人たちに尋ねても、返ってくるのはいつも曖昧な答えだけだった。
その年の四度目の宴では厨房の人手が不足し、イルーガが子供たちと一緒に前菜の準備をすることになった。今回はついに、宴の開催とともにホールへ入ることができた。
トレイを持ったイルーガは、静寂に包まれるホールで全てのライトキーパーが粛然と立ち、空に向けて献杯を捧げているのを目にする。陶器の皿が割れる音がその黙祷を破り、全てを理解したかのような彼の目からはとめどない涙が溢れ出した。
ピラミダの最上層に位置するグレート・ミード・ホール。ここでの宴は、いつも辛勝の後に開かれる。大人たちは慎重に脆い紙の殻を糊で固め、子供たちを残酷な現実から遠ざけようとしたが、実際は気づかないうちに紙の裏側まで血痕が滲んでいた。
もしかすると、イルーガはとうに悟っていたのかもしれない。もっと残酷な光景を悪夢の中で幾度となく見てきた。あの時のように暗闇に隠れてさえいれば、怪物に見つかることはないと思い込んでいた。その手でやっとの思いですくい上げた砂が、絶えずこぼれ落ちていたことに気づくまでは。
いずれ砂は全て流れ落ちるだろう、彼はそう考えた。いつかは悪夢に追いつかれてしまう。その日が来る前に、どうにかしなければならない。せめて、手中の砂の流れを少しでも遅らせなければ。
ついに、彼は決心を固めた。まるで重荷から解放されたかのように、養父ニキータが詰める指揮所へと歩き出した。
キャラクターストーリー4
マスター・ライトキーパーであるニキータの指揮所の明かりは、深夜になっても煌々と輝いていた。
ライトキーパーは夜にしか姿を見せないため睡眠を一切必要としない、というのが一般的な印象だった。
言うまでもなく、それは誤解だ。事実、ニキータは非常に綿密な夜回りのスケジュールを組んで、全隊員が十分な休息を取り、任務遂行に必要な体力を維持できるように配慮していた。
もとより彼自身もその中に含まれており、少なくとも不眠不休で働き続けることはなかったため、このような状況は珍しかった。
指揮所の机の一角には処理済みの報告書が積み上げられ、彼の前には一束の薄い便箋だけが置かれている。その中年の偉丈夫は机に手をつき、ひどく悩み込んでいる様子だ。
その時、壁際で青白い炎が一瞬揺らめいた。
ニキータがそれに気づかないはずはなかったが、どうやらもう慣れたことのようだ。
「会えて嬉しいよ、フリンズ。今度は玄関から入ってきてくれると、もっと嬉しいがね。」
「夜回り中、こちらの明かりがついているのを見かけたのでご挨拶に伺いました。」幽炎は人の姿を成したが、ニキータの言葉には応じず、テーブルのそばの椅子を引いて腰を下ろした。
「その夜回りのことだが…近頃、ずいぶんと君に負担をかけてしまってるな。今年は戦闘での被害が大きく、まったく人手が足りてないんだ…」
「でしたら、僕にできる限りの協力をするのは当然のことです。」フリンズは真剣な面持ちで言ったが、実際には夜回りの予定表など見たことがなかった。「相変わらず募集状況は芳しくないのですか?」
「あんな惨憺たる戦いの後だからね…誰だって怖気づくさ。」ニキータは苦笑しながら続ける。「私は、前途有望な若者たちを戦場に送り出さなきゃいけないんだ。」
「おそらくそれも、マスター・ライトキーパーとして背負わなければならない業なのでしょう。」その言葉が慰めなのか、単なる事実の指摘なのかは定かではない。フリンズは机の上の手紙を見つめた。「募集に応じた方ですか?」
「ほら、この子のことは知ってるだろう。」ニキータは手紙を差し出す。
「イルーガ…ああ、以前あなたが救った子供ですね。」
「あの子たちを救ったのは、少年兵を増やすためじゃない。その子にも明るい未来があり、戦場で命を落とすようなことがあってはならないんだ。」
「ですが、彼の助けが必要なのは事実でしょう?」フリンズは問い返した。「彼の実力のほどは?」
「戦闘技術は完璧と言っていいだろう。魔物と対峙した時の強靭さは、子供とは思えないほどだよ。」
「あなたが教えたのですか?」
ニキータは黙り込んだ。
しばらくして、彼は深いため息をついた。「はぁ…もっと早く良い受け入れ先を見つけて、新しい人生を始めさせるべきだった。いつまでもこの町に留まらせて、私と同じ道を歩ませてはいけなかったんだ。だが君も知っての通り、ナシャタウンの連中の本性を見抜くのは難しい。一見無害な市民に見えても、実際は巧妙に偽装した詐欺師かもしれないだろう…」
「もう夜が明けますね。そろそろ失礼します。」フリンズはマスター・ライトキーパーの心の中では既に答えが出ていることを悟った。そうして立ち上がると手紙を机に置き、指揮所を後にした。
もちろん、今回は玄関から。
外で待ち続けていたイルーガは、指揮所から見知らぬ誰かが出てくるのを見て戸惑った。一体いつ中に入ったのだろう?待っている間にまどろんでしまい、気づけなかったのか?
イルーガが口を開く前に、向こうから歩いてきたライトキーパーが先に話し出した。
「早くお入りください。ニキータ様がお待ちですよ。」そう言い残し、夜の闇へと消えていった。
東の空には明けの明星が昇り、闇に包まれた大地は夜明けの光を迎えようとしていた。
キャラクターストーリー5
イルーガの願いは叶い、ライトキーパーの一員となることができた。
ニキータには子供を戦場に送り込むほどの残酷さがなかったからか、彼は後方支援部隊に配属された。そうしてすぐに、今の仕事がライトキーパーに加わる前と大差ないことに気づく。
彼はニキータに抗議しに行こうと思った——最も危険な場所に配属されてこそ、自分の実力を認めてもらえるはずだと考えたのだ。しかし結局は踏みとどまることにした。養父の采配には、何か意味があるはずだと信じたからだ。
だが、少なくとも以前と異なることが一つある。ようやく他人に心を開くことができるようになった。より強く手を取り合いたいと願うかのように、ピラミダのほぼ全員が彼の好意を感じ取っていた。今の自分は一人のライトキーパーなのだから、仲間を家族のように思うのは当然のことではないだろうか?
後方支援の仕事は物資の調達、報告書の整理、情報の伝達など、多岐にわたった。やがて彼は大小さまざまな拠点を巡り、この熱意に満ちた若者の存在はナド・クライ中のライトキーパーに知れ渡ることとなる。
彼は一人ひとりの隊員を真剣に記憶した。厳格な隊長のマルシュキン、冷静沈着なオラヴィ先輩、いつも前向きな兄弟のイヴァルとロロン…初対面の者に対しても、家族のように接した。
繊細な心遣いはニキータから受け継いだのだろう。出動時には、みんなの好物を用意することさえあった。誰かが「あれが食べたいな」と呟けば、必ず彼からのサプライズが待っていた。
ライトキーパーに参加する者の大半は辛い過去を抱えており、ある意味では多くの仲間が彼によって心の空洞が満たされていた。そして彼自身の心の空洞も、「故郷」の存在によって少しずつ満たされつつあったのかもしれない。
イルーガの世話を受けた仲間たちは、彼によく好きな食べ物を尋ねた。他人に恩返しの負担をかけさせたくないのか、あるいは自分でも理由が分からなかったのかもしれない。そんな時はいつも曖昧に答えて巧みに話題を変えてしまう。
それでも仲間は、イルーガがライトキーパーに入隊して一周年の日にサプライズを用意した。それぞれが心を込めて持ち寄った食材すべてを一つの鍋に入れ、焚き火を囲んで賑やかな夜を共に過ごしたのだ。
翌日、イルーガは調査分隊への配属命令を受け取った。それはごく自然なことで、仲間たちはこの若者が自分たちを明るい未来へと導いてくれると信じていた。まさに、イルーガが仲間を信じるのと同じように。
きっと、これも養父の考えがあってのことなのだろう。
「アドン」
ナド・クライでは、クーヴァキの影響により特殊な進化を遂げた生物が数多く存在し、この地を訪れる旅人たちを驚かせていた。
角を持ち、激雷を踏みつけるが如く浮遊する獣。植物の根茎から生え出て、四方八方へ逃げ惑う果実。さらには太古の時代でしか見られないような巨大な昆虫…
それらに比べれば、絶え間なく金色に輝く夜鳴鶯など、さして珍しくはないかもしれない。
イルーガがアドンと初めて出会ったのは、ある危険な任務の最中だった。その時、イルーガは仲間とはぐれ、果てしなく広がる暗い森をさまよっていた——後になって思い返せば、あれはワイルドハントが作り出した霧と幻影だったのだろう。ナド・クライにあれほど深い森など存在しないのだから。
暗闇の中を走る彼はかすかな光を追いかけ、その導きによってどうにか森から抜け出す。月光が霧を貫いて降り注ぐまで、その光の正体が水晶のように透き通った小鳥だとは気づかなかった。
その後、この夜鳴鶯は彼のそばに寄り添うようになり、幾多の困難を乗り越える手助けをしてくれた。イルーガもまた、どこに駐留しようと必ず玄関先にこの小鳥のための場所を確保した。
彼にとって、アドンは頼もしい相棒だった。後にアリエーから、アドンがかつてはソロヴィというライトブリンガーの夜鳴鶯だったと知らされても、特に実感は得られなかった。
月下の生物たちはこの地を守護し続けてきた。彼らはライトキーパーよりも古い歴史を持ち、人類がここに足を踏み入れる前から、永遠の闇との長き戦いを繰り広げていたのである。
枝をくわえた夜鳴鶯の物語において、この世を照らす太陽は、燃芯を運ぶ無数の鳥たちが集まってできたものとされている。
イルーガは、アドンこそがこの物語の夜鳴鶯に違いないと感じた。そして、いつかは自分もアドンのように、その一羽になるのだと。
神の目
イルーガは墓碑の前で長時間佇んでいた。
先月、彼らは苛烈を極める戦いを経験したばかりだった。定例の調査任務のはずだったが、古代遺跡の異変が、ナド・クライの北部一帯を巻き込むワイルドハントの大群を引き起こした。
複数の小隊を投入し、大きな代償を払った末に、ライトキーパーはようやく魔物の殲滅に成功する。しかし、多くの罪のない民間人もこの災禍の犠牲となった。
イルーガが所属する小隊は異変を最初に発見したため、最も甚大な被害を受けた。殿を務めた隊長のオルソンは壮絶な死を遂げ、隊の中で生き残ったのはイルーガと、彼が命がけで救出したイヴァルだけだった。
結局、また自分だけが生き残った。
もちろん、単に生き延びるためではなく、本部に戻り救援を求めるため、そして負傷者を救うために、仲間を置き去りにせざるを得なかったのだ。
だが、それは自己欺瞞に過ぎないのではないだろうか?あの夜、暗闇の中からかすかに聞こえた馴染み深い声は、自分の臆病さを嘲笑っているかのようだった。もし自分が殿を努めていれば、もっと多くの仲間が生き延びられたかもしれない。少なくとも、オルソンは…
しかし、大戦の後、マスター・ライトキーパーのニキータはワイルドハントの発生源であるキプマキの崖を封鎖し、何人たりとも近づくことを許さなかった。心の中の苦悩を吐き出す場所がないイルーガは、犠牲になった仲間たちの墓碑の前をさまよいながら、存在しない答えを探し続けるしかなかった。
だがこの日、墓碑の前で佇んでいたのは彼だけではなかった。
「フリンズさん?君も仲間のお墓参りですか?」
この孤島に駐留するライトキーパーは、今はどの小隊にも属していない。しかし、ライトキーパーとしての経歴は養父ニキータと同等に古いようで、イルーガは彼にも言葉で言い表せない辛い過去があるのではないかと推測していた。そしてその過去もまた、彼自身と同様に神秘的な影に包まれていた。
「彼らは別の場所に眠っています。こちらの墓地は、ここ十年で犠牲になった戦士たちのために建てられたものです。ニキータ様に、修繕が必要な箇所がないか確認するよう頼まれました。いつも墓地にいる僕は、経験が豊富ですからね。」
実際には、あの憂鬱そうな若者の様子も見てきてくれと頼まれていたが、そのことには触れなかった。
イルーガは、目の前の先輩に悩みを打ち明けようかと考えた。これまでに多くの過酷な戦いを経験し、今なお生き延びているのだから、自分の疑問に答えをくれるかもしれない。しかし、彼自身も何に悩んでいるのかを明確な言葉にできなかった。彼が必要としていたのは、心の中で既に出ている答えを確かめるためのきっかけだったのかもしれない。
「フリンズさん…ライトキーパーとして許されないのは、無謀と臆病のどちらでしょうか?」
「おそらくそのような二択は存在しませんよ、坊ちゃま。ライトキーパーになること自体が勇気の証明なのですから。真摯で誠実なライトキーパーに、自身の判断は正義に基づくものだと信じない理由がありますか?」
墓地から戻ったイルーガは、調査分隊の隊長引継ぎ申請を提出した——負傷で障害を負ったイヴァルは二度と戦闘に参加することはできず、この隊に所属するのは実質的に彼一人だけとなっていた。
入隊を志願した時とは異なり、今回はすぐに返事が届いた。予想とは少し違い、やけに重い任命書が入った封書を開封してみると、キラキラと輝く宝石が転がり落ちる。フリンズのところで似たようなものを見たことがあったが、この時初めて、あの信じがたい話が嘘ではなかったことを確信した。
確かに、これは世界からの贈り物だ。宝石は手の中でずっしりと重みを感じさせ、今まさに自分が背負おうとしている責任そのもののように思えた。