キャラクター詳細
辺境に位置するナド・クライは、決して豊かな土地ではなく、喜びに満ちた楽しい場所とは言えない。北からは一年中吹きつける冷たく鋭い風は、まるでこの地からあらゆる温もりを奪い去ろうとしているかのようだ。
そんな世界に忘れ去られたかのような地の市場には、不思議な機械が数多く並んでいる。花を発射する銃、子犬のように甘える掃除機…動かしてみるまで何が起こるかわからない代物ばかりだ。これらの発明品は、この荒涼とした土地に笑いと温もりをもたらしている。そして、それらを生み出したのがカチャカチャ・クルムカケ工房の主、アイノだ。
アイノはこの風変わりな工房に一年中こもって暮らしている。ここには、子供たちが大好きなぬいぐるみなどない。あるのは、冷たい鉄板と積み上げられた部品だけだ。しかし、アイノはここを世界で一番素敵な暖かい家だと思っている。アイノはここで数多くの機械の家族を組み立て、家族の温もりを感じてきた。
自称「大黒柱」のアイノは、毎日小さなロボットたちの面倒を見るという責任を果たしている。朝はスイッチを入れて「起床」。昼はご飯を食べさせて「エネルギーを補給」。そして夜は、決まった時間に電源を切って「睡眠」。残りの時間は、ちゃんと仕事をして「任務を遂行」。
この天才機械技師は、自ら面白い機械作品を創作するだけでなく、機械制作の依頼も請け負っている。ワイルドハントの侵入を防ぐためのドッカン・クーヴァキレーザー砲といった大規模なものから、ベテラン冒険者の機械アームに取り付ける精密部品といった小規模なものまで、依頼内容は様々だ。この天才機械技師の奇妙な発想に対して真摯に賞賛を送り、美味しいデザートを捧げれば、彼女は想像を超える傑作を作り出してくれる。
ただ時折、要望にない妙な機能が発明品に追加されることがある。それは、未知のギフトボックスを開けるようなものだ——人形が飛び出してきて、驚かせてこないことを祈るしかない。
キャラクターストーリー1
ドッカン・クーヴァキレーザー砲が放たれると、カーチャはいつもあの小柄で華奢な桃色の姿を思い出す。当時のアイノは、蚊の羽音のようにか細い声で話し、誰の目にも留まらない存在で、今の天才機械技師としての彼女からは想像もできない人物だった。
アイノがどういった経緯で「スペランザ」に来たのか、カーチャは詳しい話をアイノ本人に聞いたかどうかすら、はっきりとは覚えていない。この極寒の辺境で、子供がたった一人でいる理由など、せいぜい二つしかない——やむを得ぬ事情で親と離別したか、親の意思で棄てられたかだ。どちらにしても、そう珍しい話ではない。
骨身にこたえるナド・クライの凍てつくような雨は、いつも唐突に降りだし、一切情けをかけない。あの頃、背伸びしても机の縁に届かなかった小さなアイノは、ただ黙って、苦難の運命を受け入れるしかなかった。
カーチャは覚えている——玄関の外から恐る恐る中を覗いていた少女を部屋へ招き入れ、温かな甘いスープを差し出した時のことを。だが、少女はお椀の縁に指先が触れた途端、びくりとして手を引っ込めた。その両手は凍えて青く腫れ上がり、ぱっくり割れた傷口は鮮やかな赤色のスープより鮮烈で、目に突き刺さるようだった。きっと、触れた瞬間に鋭い痛みが走ったのだろう。
カーチャが綺麗な布切れで、その傷だらけの小さな手をそっと包んであげると、少女はようやくお椀を両手で持ち上げることができた。ふうふうと息を吹きかけ、勢いよくスープをすすりはじめたと思ったら、あっという間に全部飲み干してしまった。
それ以来、アイノは「スペランザ」に留まり、ホラガイ団の一員となった。
キャラクターストーリー2
ホラガイ団のメンバーは、年端もいかぬ子供ばかりだった。心優しいカーチャは、彼らに雨風をしのげる居場所と、小さな店員としての仕事を与え、休憩時間には十分な自由を許していた。
ちょうど元気盛りの子供たちは、生まれたばかりの小さなモサモサアナグマの群れのように、苔むした野原や森林を駆け回ったが、アイノだけは、いつもひとり静かに過ごしていた。
それは決して、彼女に子供らしい好奇心が欠けていたからではない。むしろ彼女の旺盛な好奇心は、一つの世界だけでは収まりきらないほどだ。その世界は精緻かつ理路整然とした線、加工技術、装置、そして精巧な品々で形作られていた。どんな金属パーツにもアイノは興味を抱き、「ロッサム工房」から響くカチャカチャという金属音は、彼女の幼少期における最も馴染み深い子守歌だった。
そんな彼女が出会ったのが、生涯の親友——工房主の娘、リュカだ。ほとんど毎日のように現れるこの少女の瞳に、自分と同じ輝きが宿っていることに気付いたリュカは、つい彼女の手を取り、機械装置のあれこれや、未完成品の改良方法について語るようになった。
ある日、すっかり打ち解けたアイノが、店内にある機械を指さしてこう言った——「ここを調整すれば、クーヴァキの利用効率が2.8%上がるはずだよ。頭の中で何度もシミュレーションしてみたけど、かなり高い確率で成功すると思う…やってみない?」
リュカは思わず固まった。指摘された箇所はまさに、彼女を何日も悩ませていた技術的難関だった。それをなんの知識もない子供があっさり言い当てたのだ。悔しさを覚えながらも、リュカはアイノの方法を試すことにした。
そして調整が完了した機械を測定すると、利用効率は彼女が言った通り2.8%向上していた。その数値をジッと見つめながら、リュカは自分の中にある不服が賞賛へと変わっていくのを感じた。
「これまで一度も機械理論を学んだことがないのに、問題の核心を一発で見抜くなんて…もしアイノが体系的に学べば、奇跡だって生み出せるかもしれない…」
キャラクターストーリー3
学びの機会はほどなくして訪れた。「スパナおやじ」と呼ばれるスネージナヤ出身の機械技師は、ナシャタウンを訪れ「スペランザ」で食事をした際、店で働く子供たちの姿に心を引かれた。情に厚い彼は、子供たちにスネージナヤに伝わるフェイの物語を聞かせてあげようと考え、しばらくこの地に滞在することにした。
それから間もなくして、とりわけ小さな子供の姿が彼の目に留まった——他の子供たちが物語に聞き入っている中、アイノの視線は、彼が普段から腰に下げている工具に釘付けとなっていた。
そのことに気付いた「スパナおやじ」はとても喜び、カーチャの了承を得て、店の休憩時間に教室を開くことにした。ここで興味のある子供たちに機械に関する授業をするのだ。
この話を聞いたリュカは歓喜し、すぐに聴講を始めた。しかし数日も経たないうちに、彼女はあることに気付いた——アイノと先生とのやり取りは、すでに専門家でないと理解しがたい領域に踏み込んでいたのだ。
これまでアイノは、静かに流れる小川のように、黙って淡々と前へ進む子だった。そんな彼女が今、自分にとっての大海原と出会ったのだ。
その変化はまるで、伝承に語られるフェイが、人知れずこの少女に大いなる祝福を授けたかのようだった——彼女の指先は様々なパーツを軽やかに行き来し、たちまち精巧な機械を組み上げていった。もはやその手に、かつて凍傷に苦しんだ痕跡など、ほとんど見られない。
頭の中に次々と湧き上がる新しい発想を伝えたくて仕方ないのか、言葉数も自然と増えていった。ほとんどの大人はそれを聞いても、「変わった子だ」とただ笑って受け流すだろう。だが「スパナおやじ」は信じていた——この子なら、いつかそのアイデアを全て現実のものにできるかもしれないと。
やがて、「スパナおやじ」の知識とアイノの奇抜なアイデアが見事に組み合わさり、周囲の人々の暮らしを明るく照らし始めた…
壊れていたホラガイ団の目覚まし時計は見事に修理された——なぜか羽が生えており、朝になると鳴きながら部屋中を飛び回ったが、捕まえるまで止まらないため、寝坊する子は一人もいなくなった。
キッチンの壊れたゴミ箱は鉄板で補修され、ゴミを入れられると満足げに咀嚼音を立て、最後にはいたずらっぽくゲップまで響かせるようになった。最初は誰かの悪ふざけかと思われたが、それが本当にゴミ箱から出ている音だと分かると、ゴミ捨ては子供たちの間で一番人気の仕事になった。
キャラクターストーリー4
しかし、楽しく賑やかな日々はそう長くは続かず、別れは思っていたよりも早く訪れた。
任務を抱えていた「スパナおやじ」に、キャラバン出発の命令が届いたのだ。彼は名残惜しそうに、一本のボルトをアイノの掌にそっと置き、「自分の才能を信じて、機械の世話をし続けるんだよ」と言い聞かせた。アイノにとって、別れはこれが初めてではない。だがそれでも彼女は、冷たい風の中で喉が枯れたかのように言葉が出ず、「ありがとう」「バイバイ」「元気でね」しか言えなかった。この混沌とした地では、一度の別れが生涯の別れになる…誰もが知っていることだった。
先生と別れた後、アイノは部屋に閉じこもり、指先で何度もネジの溝をなぞった。涙の跡が乾くと、そのネジを自分の前髪の根元に結びつけた。それはやがて、鉄の髪飾りであると同時に、道を照らす灯となった——視界を遮っていた前髪を押さえ、進むべき道を煌々と照らす灯火に。
この別れを境に、またも見えぬところで運命の歯車が回り始めた。
ホラガイ団は参加するのも抜けるのも自由な集まりだ。絶えず吹き荒れる冷たい風の中、数人の顔なじみとの別れを経験した後、アイノもまた、この馴染み深い場所を離れる決意を固めた。リュカは手を差し伸べ、「うちに来ない?二人で工房を構えるのもいいかも」と誘ったが、熟考の末、アイノは首を横に振った——友人と一緒に安定した研究をするのは魅力的だが、彼女はもっと遠くへ行き、もっと多くのものを見て、まだ誰も作ったことのない面白い発明品を生み出したかった。
冒険好きの子供たちから、かつてアイノはこんな噂を聞いたことがあった——ナシャタウンを抜けて西へと進んだ先に、廃棄されたブリキが山のように積まれた場所があり、探検したり秘密基地を作ったりするのにぴったりだと。一方で、酔いどれの老冒険者たちはそれとは別の話をしていた——そこはナド・クライの黄金時代に崩落した機械の墓場で、その名はすでに時の流れの中に消え去ったのだと。
「廃棄されたブリキでも、機械の墓場でも…アイノがもう一度、息を吹き込めばいいんだよね」
まだ見ぬその場所に、アイノの胸は高鳴った。冷たい鉄のゴミ山の向こう側に、彼女が探し求める答えが刻まれているかもしれない。
キャラクターストーリー5
夜明け頃、アイノは小さなロボットを抱きかかえ、後ろに全自動ローラー式工具箱を引き連れながら、ホラガイ団の仲間の案内で郊外にある巨大な建物の前にやって来た。長年、雨風にさらされてきたその機械の巨獣は、静かな山あいに身を伏せ、まるで主の呼び声をじっと待ち続けているかのようだった。
「ここだね!名前は…カチャカチャ・クルムカケ工房にしよう!アイノはここで、世界一おいしいクルムカケを作れる機械を発明するんだ!」片手を腰に当てながら、彼女は高らかに宣言した。その声に呼応し、彼女に手を振るかのように、錆びついたロボットアームが風に揺れた。
「スペランザ」の暮らしが徐々に遠くへかすみ、ホラガイ団の賑わいも次第に静まり返っていく。そして、長らく眠っていたこの巨大な工房に、小さな主人が誕生した。
カチャカチャと響く金属音の中で、時間はひっそりと過ぎていった。
カーチャが再びアイノの顔を見た時、彼女は「イネファ」と名付けられた機械の少女の手を引き、店にお菓子を買いに来ていた。アイノはまるで親であるかのように、その「子供」に買い物の仕方を丁寧に教えていた。もっとも、その子供の背丈は「親」よりもかなり高かったが…
「いい、イネファ?絶対に手を離しちゃダメだよ。迷子になったら困るからね。」
「これからお買い物の練習をするよ。まずここに来て、カーチャおばさんに挨拶して。そしたらソマルケーキを二つ頼んで、お金を払う。そうそう、今朝渡したモラのことだよ。最後にカーチャおばさんに『さようなら』って言ってね。」
「ソマルケーキ購入コマンドを実行…カーチャおばさん、こんにちは。ソマルケーキを二つください。こちらがモラです。ありがとうございます、カーチャおばさん。それでは、さようなら。」
機械の少女が、アイノの言葉を淀みなく繰り返すのを聞きながら、カーチャはふとあることに気づく——今のアイノは、かつての彼女とは別人のようだ。
ふっくらとした頬を見ると、かつて痩せこけていたことが嘘のようであり、ぴょんぴょん歩くその姿には、年相応の子供らしい軽やかさがあった。また、伏せがちだったまぶたは上がり、キラキラと輝きに満ちたその瞳は、烈火で鍛造された金塊のように、彼女だけの光を放っていた。
「えへへ、イネファはいい子だね!あっ、忘れるところだった。カーチャおばさん、お釣りは砂糖にして!イネファには、早く世界一おいしいクルムカケを作れるようになってほしいんだ…」
どうやら、甘いものが大好きというところは、今も変わっていないらしい。カーチャは思わず笑顔になり、大量の砂糖を機械少女に渡した。その量はお釣り分よりずっと多く、先に払ったソマルケーキの金額を超えていた。
「価格差を計算中…先ほど支払ったモラでは足りません。追加で支払うべき額は——」機械少女の言葉は、すぐにアイノに遮られた。
「それはね、カーチャおばさんからの愛情だよ。お金を払ったら、カーチャおばさんが悲しんじゃう。だから、ありがたく受け取ろうね。ありがとう、カーチャおばさん!」
「愛情?」
「うん!モラじゃ測れないもの。イネファとアイノみたいに、お互いを思う気持ち!」
……
もしかしたらこの小さな桃色髪の少女が、ナド・クライの運命を変える日が本当に来るかもしれない…いや、もう変わり始めているのかもしれない。あの日、アイノが初めてスパナを握った瞬間から。
「最初の家族」
イネファが初めてアイノの工房の掃除を手伝った際、作業台の上に他とは様子が異なる小さなロボットを見つけた。その金属ボディは既に光沢を失い、くすみと錆があちこちに広がっている。手足は力なく垂れ下がり、周囲への反応はまったくない。アイノが最近手掛けた作品でないことは明白だった。
それからしばらく、アイノと共に暮らしていく中で、イネファはあることに気が付く——あの小さなロボットは、時間による侵食がとてもひどく、関節という関節が錆で覆い尽くされ、最後のネジも緩くなって外れていた。分析の結果、どれほど丁寧に磨き、入念に整備したとしても、あの朽ちたボディに再び命を宿すことはできないと分かった。
ある時、アイノはその小さなロボットをそっと抱き上げ、イネファに自分の体を支えてもらいながら、寝室の戸棚へと丁寧に移した。その時、初めてイネファはこの小さなロボットの物語を知る。
それは、アイノが初めて自力で組み上げたロボットだった。
知能モジュールは一切なく、ただ揺らすと「チリンチリン」と音を鳴らすだけ。唯一の機能は「そばにいること」——何度も別れを経験した少女のそばに…ふとした瞬間に寂しさを感じる少女のそばに、ただ寄り添い続けることだった。
今のアイノの工房には、目を見張るような精巧な作品が数多く並んでいる。それらに比べると、この小さなロボットは見劣りするかもしれない。だが、たとえ全身が錆に覆われようと、この子は今もなおアイノのそばで自分の役目を果たしている。
——この子は今も彼女の家族であり、この家の一員なのだ。
神の目
月が高く昇り、嗅覚の鋭いクンクンモグラでさえ深い眠りにつく深夜、工房だけはまだカチャカチャと稼働を続けていた。
機械を触り始めてから、アイノは常に「天才」と称えられてきた。たいていの簡単な機械は、目をつぶってでも作れてしまう。そんな彼女にしては珍しく、今夜は深く集中していた。
辺りは漆黒に包まれ、彼女の作業台だけが煌々としている。長い袖は乱雑にまくり上げられ、額には汗や油、どこで付いたのか分からない埃が混じっている。難題を前にして、その眉間には深い皺が刻まれていた。足元には開けっぱなしの菓子袋が散らばり、甘ったるい香りを放っている。だが、その香りでさえ、今の彼女の集中を乱すことはできなかった。
作業台に横たわっている、一人の機械少女——その周囲には大小様々なパーツが積み上げられ、アイノが幾度となく試行錯誤を重ねたことを物語っていた。
「やっぱり、学習モジュールも付けようかな。家族は一緒に学んで成長していくからこそ、ずっとそばにいられるんだろうし…」
ふと思い浮かんだこのアイデアを機械に応用することは、彼女にとって初めての試みだった。それでもアイノは一切迷うことなく、すぐに手を動かし始めた。ある重要な部品に手を伸ばした時、指先に伝わってきたのは、求めていたものとは違う異質な感触だった。彼女は視線を上げることもなく、それを作業台の下へ放り捨て、再び組み立てに没頭した。
やがて「カチリ」と小さくも確かな音が鳴り、最後の部品があるべき場所にぴたりと収まった。次の瞬間、アイノの手から工具がガランと落ち、続けざまにドサッと鈍い音が響く。長時間の集中の末、彼女の体力は限界を迎えていた。夜の闇のように、疲労が静かに彼女を包み込む。アイノは機械少女の腕を枕にして、エネルギーを使い果たした小さなロボットのように、深い眠りへと落ちていった。
……
「おはようございます、アイノ。」
「起きる時間ですよ。今日の朝ごはんは、アイノの大好きなクルムカケです。」
耳元でそんな声がしたので、ズキズキする頭を撫でながら、アイノはようやく目を開けた。しかし、機械の少女は今も目を閉じたままだった——今のは、夢だったのかもしれない。
「もうすぐ、現実になるはず。そうだよね、イネファ…」
返事の代わりに、何かが小さく輝いた——それは神の目…先ほどアイノが不要なパーツだと思って放り捨てた、一筋の輝きだった。