キャラクター詳細
酒場でファルカの武勇伝が語られる時、話は決まって彼の伝説的誕生から始まる。
ゆりかごに寝ていた生後一ヶ月にも満たない赤ん坊は、かつて二匹の毒蛇に襲われた。だが、未来の英雄は、蛇を両手に一匹ずつ掴むと、まるでおもちゃのように、揺りかごの外へ放り投げた——彼はその瞬間、二本の剣を同時に振るう秘訣を悟ったのだ!
さらにさかのぼって彼が産声を上げた日には…普段は穏やかな気候であるモンドの街に、百年に一度の北風が吹き荒れ、奔狼領中に狼の遠吠えが響き渡った――「北風」が四風守護最強の座に返り咲くことを告げていたのであった。
他にも、「天性の騎士だ」「運命の寵児だ」「生まれた瞬間から偉大な存在になる定めだった」…様々な説が存在するが、もちろんすべて作り話だ。
モンドには赤ん坊だけを狙う毒蛇などいないし、用もなく遠吠えを続ける狼の群れもいない。
どの話も、酒場の吟遊詩人が壮大さと宿命っぽさを演出するために、それらしくでっち上げたデタラメに過ぎないのだ。
伝説には必ずしも伝説的な始まりが必要というわけではなく、すべての神話の裏で神が糸を引いているわけでもない。
風も雨もないごく普通の日、裕福でも貧しくもないごく普通の家にファルカは生まれた。
そして、危険な目に遭うことも、超常現象に遭遇することもなく、モンドで育つ他のすべての子供たちと同じように、ごく普通に成長していった。
詩人たちの語る騎士や神の伝説を聞いて、いつの日か自分も物語の主人公のように戦場を駆け巡りたいと夢見た。
ただ、物語を聴き終えた子供たちが散っていったあと、彼はいつもその場に残り、しつこく質問した。
——なんで物語の主人公は、「古い血族」や「古の神の加護を得ている人」ばっかりなんだ?
吟遊詩人たちは苦笑いで、詩ではそう歌われてきたからだと答えることしかできなかった。
——その古い血族の始まりは誰なんだ?神が神になる前には、誰の寵愛を受けてたんだ?
こう詰められると、大抵の吟遊詩人はいよいよ言葉に詰まってしまったが、中には騎士団の図書館を指し示す者もいた。
——それは、「物語」ではなく「歴史」に問うべきだ。
ごく稀に、しつこい問いかけに心底うんざりして、城壁の外に広がる広い荒野を指差す者もあった…
——詩人が、バルバトスしか知らないことを知るわけがなかろう!
……
数年後、ファルカはついに新世代の「伝説の騎士」、「物語の主人公」となった。同時に、ようやく吟遊詩人たちの苦悩を理解した。
現実では細かく追及されないようなことも、物語においては追及する必要がある——信じてもらう必要があるからだ。
大多数の聴き手にとっては、特別な血筋も神の加護も持たない凡人が、ただ気が遠くなるような鍛錬と不屈の意志のみで伝説を築き上げるというのは、想像しづらいのだろう。
キャラクターストーリー1
ファルカは少年時代の終わり、初めて騎士試験に参加した時、すべての試験官を「圧倒」した。文字通り、試験官たちを全員なぎ倒してしまったのである。
しかし、意気揚々と騎士に任命されるその時を待っていたファルカのあらゆる幻想を、一通の不合格通知が打ち砕いた。
「ファルカ殿——まずは、今回の試験に参加してくれたことに感謝する。貴殿の実力と、騎士を目指す志は、我々に深い印象を与えた。
「しかし慎重な検討と協議を重ねた結果、残念ながら…
ファルカはそれ以上は読まなかった。手紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ捨てると、別の紙を引っ張り出して、次の行動を計画した。
その夜、「獅牙騎士」でもあった先代の大団長ヴァレンタインは、酒を飲んだあとの帰り道で、暴漢の奇襲を受けた。
従者たちはすぐさまコテンパンにされ、感心しつつも言葉を失って、不審者を見つめることしかできないヴァレンタインだけが残された。
感心したのは、少年の想像以上のポテンシャルに対してだった。半日足らずで奇襲を画策し、実行に移した行動力もまた、大したものだ。
言葉を失ったのは、その荒唐無稽な動機に対してだった。「大団長一人守れない西風騎士が、どうやってモンドを守るっていうんだ?——俺に任せろ!」
「君は…通知を最後まで読まなかったのか?」「不合格通知なんてもの、最後まで読む必要がどこにある?」「私はいつも、大事なことを追伸に書くんだよ。」
幸い、ヴァレンタインは元々ファルカと会って直接話すつもりで、そのことを手紙の追伸に書いていた。ただ、ファルカの並外れた行動力によって、二人の対面は大幅に早まったのであった。
従者たちを揺り起こして、一人一人にきちんと謝罪した後、ファルカはヴァレンタインの二軒目に連れていかれた。ファルカもそこで、不採用の理由を聞かせてもらうことにした。
二人は酒を飲みながら多くのことを語ったが、それはまとめれば実にシンプルで、生まれながらに自由な風は、城壁の中に閉じ込められるべきではない、という判断なのであった。
ヴァレンタインは、ファルカはモンドに収まるよりも、様々な場所を巡り、外の世界へ、諸国へ、山海へと歩みを進めるべきだと考えた。
それは、古いことわざにもある通りであった。千の曲を奏でてこそ、詩人は非凡なメロディーを弾くことができる。千の剣に出会ってこそ、鍛冶職人は世を驚かす逸品を作りだせる。
「君を執務室に閉じ込めたりしたら、三年…いや、三ヶ月で、耐えきれず辞表を叩きつけて出て行くだろう!」
ヴァレンタインに図星をつかれたファルカは、からからと笑いながら、「たぶん三日で出て行くな」という言葉を、酒と一緒に飲み込んだ。
「だからこそ私は、君に騎士になる理由を見つけてほしいと願っている。」ヴァレンタインは笑みを引っ込めて、真面目な顔で言った。「憧れだからとか、詩人の物語に惹かれたからとかじゃない。別の理由を見つけるんだ。見つけたら——またモンドに帰ってきてくれ。」
翌日、ファルカは旅に出た。自由な風が、甘んじて一所に留まり…一人の「騎士」となる理由を探すために。
「…たとえいつの日か、騎士の名のために、大嫌いな仕事を毎日繰り返すことになっても。」
ドーンマンポートの、微かに塩気を帯びた海風が吹き寄せる。両目を細めて、ゆっくりと昇る朝日を眺めながら、少年は熟練の騎士の教えを思い出していた。
「…たとえいつの日か、騎士の名のために、己の最も誇りとする栄誉とプライドを捨てることになっても。」
キャラクターストーリー2
故郷とは、この世に元々あるわけではない。異郷があって初めて、故郷が生まれるのだ。
恋しさとは、この世に元々あるわけではない。別れがあって初めて、恋しさが生まれるのだ。
……
サイモン・ペッチがノートにその一行の詩を書いた時、ファルカはたき火の側にかがんで酒を温めていた。
「なあ、お前は本当にモンドに来てみるべきだ。詩が歌えて口も回る——間違いなく人気者になれるぞ!」
「いつか行きますよ。」サイモンはファルカから差し出された酒杯を受け取り、肩をすくめた。「…少なくともあなたの言っていた蒲公英酒は、試してみる価値がありそうですしね。」
世に名を馳せようとしていた二人の冒険者が、それぞれの故郷を遠く離れて偶然巡り会ったのは、ある冬の夜のことだった。
ファルカは、すでに多くの国々を渡り歩いていた。
山間に巣食い咆哮する魔物たちや、海に巨大な波を巻き起こす凶悪な魔物たち、そして平凡な長槍で装甲も纏わずに大軍と対峙し、故郷を守ろうとする世にも勇敢な人間たち。千岩軍、警察隊…異なる人々が、異なる国で、異なる名で、同じ精神を貫いているのを見た。
しかし、未だ求める答えには、薄いベールがかかっているようだった。故郷を離れて幾数年、故郷を恋しく想う気持ちだけが、いっそう強く胸にまとわりついて離れなかった。
あのボンボンのクリプスは、実家に戻ってワイナリーを継いだだろうか?それとも夢を叶えて騎士になったのだろうか。
誰のこともお気に召さなかったフレデリカは、どこかのツイている男と結ばれただろうか?
いちいち騎士の規則に反してると突っかかってきたイロックも、少しは融通が利くようになっただろうか?
故郷の酒は、今も記憶の中にある味のままなのだろうか?家族も、自分と同じように時々は俺に会いたがってくれているだろうか?
「そんなに気になるのなら、さっさと帰ればいいじゃないですか。」サイモンは容赦なくファルカの独り言を遮った。「ナド・クライに会いたいと思えるような相手がいない私とは違うのですから。」
「帰る?いや、俺はまだ答えを探さないと…」
「——今あなたが口に出した人々こそが、答えでしょう。」
ファルカは口元まで運んだ酒を飲むことさえ忘れて、呆けてしまった。心にあった薄いベールが、乱暴に引き裂かれたような気がした。
故郷は実体のない概念などではない。騎士になる理由を崇高な理想に託す必要など、最初からどこにもなかったのだ。
——こんな簡単な道理を悟るのに、何年もかかるとは…戻ったら、散々笑われそうだ。
英雄の悟りというのは、何か大きなきっかけがあるんじゃないのか?故郷への帰還というのは、物語のクライマックスに華々しく行うものじゃないのか?物語ではいつもそうだったのに、話が違う…
しかし、実際の物語がみんなが思うほど単純じゃなかった…ということは、よくある。それに、確かに人は故郷を離れて初めて、故郷を想うようになるのだ…
ファルカの混乱を見抜いたかのように、サイモンは咳払いをして、手にしていたノートを閉じた。
「コホン…どうしても理由が必要なら、私をモンドへ送るためということにしてはいかがです。ちょうど気になっていたのですよ、あなたの言うフ…蒲公英酒がどれほどのものなのか!」
キャラクターストーリー3
ファルカが正式に「北風騎士」の名を継いでからというもの、彼が直接指揮を執った戦いに限れば、モンドは一度も敗北を喫したことがない。
獅牙が大地に広く施される恵みであるとするならば、北風は気骨ある偉大なる力である。悪逆非道な盗賊も、辺り一帯を脅かす魔物も、密かに蠢くアビスも、北風の如く凄まじい剣術の前にはひとたまりもない。
幾度かの遠征によって、脅威となり得るものが一掃されたモンドは、空前の平和な時代を迎えた。
しかし、平和の到来があまりにもあっさりとしていたせいか、やがて、それが続くことを当然だと思う者が出始めた。平和な時代なのだから、騎士は軍備を緩め、迷子の猫探しや犬の世話でもしているべきだ…などという声も上がり始めた。
一方、「大団長」に就任したファルカはこれらの雑音を無視して、さらなる遠征を推し進め続けた。
若き日に積んだ冒険の経験が、常に警告していた——この平和は単なる偶然の産物であり、危機が見えないことは危機が存在しないことと同義ではないのだと。
北にはまだ駆除しきれていないアビスが存在しており、海には魔物が潜んでいる。雪山の「ドゥリン」、眠れる「ウルサ」…いずれも、せっかく手に入れた平和を壊しかねない。
かつて導いてくれた先人たちは、次々と老いていった。獅牙騎士ヴァレンタイン、騎兵隊長フェル、遠距離隊長アドルノ…そして次世代の騎士たちには、まだまだ成長する時間が必要だ。
また、ファルカは己の全盛期もまた、いつかは歳月と共に去りゆくとよく解っていた。
だからこそ、後世のために少しでも多くの時間を残したいと願うと同時に、最強の時期が過ぎないうちに、より強大な敵に挑みたいと願ったのだ。
そこでファルカはモンドの事務を騎士団の古参やヴァレンタインが任命した督察長イロックに任せ、再び遠征へと旅立った。
…しかし、その先で彼は無惨な失敗を迎えることとなる。
眩しすぎる光を放つ騎士は、自らが落とす影の中に嫉妬や執念が生まれることなど…考えもしなかったのだ。
ファルカは、モンドに戻って騎士団に加入したあの日から、イロックの心の中に歪んだ種が芽生えていたことに気づけなかった。
「博士」の断片がイロックの耳元で囁き、すべてを超越する力と権力を約束した時、どす黒い感情は洪水のように溢れ出した。
——日がな一日外で遊び歩くだけの流浪者が、歴代最強の「北風」だと?
——騎士の規則を一度だって守ったことのない放蕩者が、全ての騎士を律する騎士になるだと?
歪んだ執念と時の移ろいによって、かつての友は…風が吹く向きを変えるように、いとも簡単に敵に変わった。
ファルカに代わって秩序を守るべき督察長は、あらゆる正義と理を己の求めるままに踏みにじったのだ。
封印の確保を任されていたイロックは、眠れる太古の魔物を呼び醒まし、「博士」と共に天の力を分け合うことを企てた。
ファルカがまたしても強敵を討ち、脅威がモンドに迫らぬよう片付けてまもなく、後方から旧友クリプスの戦死と督察長イロックの裏切りの悲報が届いた。
ファルカは即座に兵を率いて帰還し、休む間もなくイロックの手下たちの掃討に当たった…しかし、イロックが数年間にわたってモンドに残した傷跡は、あまりにも大きすぎるものだった。
ファルカによって窮地に追い込まれたイロックは、高笑いの中で自ら命を絶った。
言葉こそなかったが——その笑い声ははっきりと「常勝不敗の北風騎士」「神に匹敵する大団長」を嘲笑っていた。
——見たか!君も失敗するし、過ちを犯すのだ。
——ただの…凡人にすぎない!
キャラクターストーリー4
どれほど強い力を持っていようとも、一人ですべてを守ることはできない…たとえその力が、神に匹敵するものであっても。
世界はあまりに広く、どうしても目の届かない隅が生まれてしまう。世界はあまりに予測し難く、どうしても想定外の陰謀が生まれてしまう。
モンドの自由と安寧は、容易に手に入るものではない。それを守ることもまた、一介の人間や神が単独で成し遂げられることではなく、どれほどの準備を重ねてもやりすぎということはないのだ。
ゆえに、騎士団には時代に則った革新が必要だ。
遠距離小隊には火力不足を補うための新たな火器を配備し、支援小隊には戦場の変化に適応するための新たな防衛設備を開発してもらう必要がある…
一人や二人の傑出した英雄に希望を託す必要はない。戦術と装備の更新こそが、一人一人の戦いと生存に確かな恩恵をもたらすのだ。
ゆえに、騎士団には絶えることなく受け継がれていくものが必要だ。
ファルカに見守られながら成長した次世代の騎士たちは一人前の活躍を見せるようになり、多くの者が新たな柱になりつつある。
しかし、騎士の意義をいまだ真に理解できていない者や、騎士という名の重さを引き継ぐ準備ができていない者もいる――その姿はまるで、かつてのファルカだった。
ゆえに、モンドには堅実で信頼できる盟友が必要だ。
風神の紹介により、ファルカは三者会談の席につき、隙のない態度と言葉で、世の理を超越する魔女を説得しようと試みた。
後に、アリスはファルカの振る舞いをこう評した。「こんなに口がうまい『騎士』がいるなんてね。バルバトスの入れ知恵かと思っちゃった。」
最終的に魔女たちは盟約に署名した。言葉に動かされたわけではなく、何か別に考えがあってのことかもしれない…ファルカはそう密かに思った。
何にせよ、この盟約は、モンドの未来を保障してくれるものの一つになるはずだ。
……
やがて、盟約通り、魔女たちの力を結集させた試練が完成した。久しく息抜きをしていなかったファルカは、ようやく一切の雑務を忘れて、心ゆくまで戦いを楽しむことができた。
試練の最後、魔女は騎士に願いを一つ問うたが、彼にはもはや求めるものなどなかった。守りたい場所はすでに守られているし、欲しい力は自らの手で掴み取ればいい。
そこで騎士は、バーベロスの水占の盤をひと目見れないかと尋ねた。ふと湧いた好奇心を満たしてみたくなっただけだった。
戦いの余韻に浸る間もなく、ファルカは水占の盤に映る影の中に、運命を垣間見た。
水鏡に映し出されたのは、終わりなき栄光と、終わりなき苦難であった。
彼は、幼い頃から憧れていた伝説を見た。本物の巨龍と殺し合い、血戦の中で自らの限界を超え、歓声の中で夢の英雄となる光景を見た。
さらに、ナド・クライとスネージナヤの地に蔓延する黒き災厄を見た。雪原の向こうから聞こえる、まだ見ぬ人々の悲痛な叫びを耳にした。
何のために騎士になるのか。若き日のファルカは、これに一つの答えを出した。愛する人々を守るため、そして自分を愛してくれる人々を守るため、と。
しかし、そんな彼に運命は無情な問いを突きつけた——騎士とは、名前すら知らない人々のためには戦うことができないものなのか?
運命がそう云うのなら、従ってみればいい。たとえ未来がモンドに影響するとしても、なぜ今すぐ夢の光景を捨てて北へと急ぐ必要がある?
迷うことはない。何者にも縛られない北風は、いつも己の心にのみ従う。生まれながらにして自由なモンド人であれば、皆同じ答えを出すはずだ。
——「俺たちはどんな暴君にも屈しない!たとえその暴君の名が…運命だとしてもな!」
キャラクターストーリー5
各国で流行している「テーブルトークシアター」には、実は多くのプレイスタイルがある。騎士たちの戦術的思考を広げるため、暇なときには遠征軍も楽しむことがある。
原理主義者は、ロールプレイと叙述こそがテトシアの中核だと考えるが、ゲームである以上、そこにはルールがある。そしてルールがある限り、それを最大限に利用しようとするプレイヤーが現れる。
「俺のキャラクターは正直で善良な騎士だが、魔剣と遭遇したことがあってな!その邪気を鎮めるために、肌身離さず持ち歩かなければならないんだ…」
「僕はただのどこにでもいるような吟遊詩人だけど、田舎の酒場の噂話で、秘密の魔法の奥義をたくさん聞いてるよ…」
そこからさらに一歩進むと、それぞれの「キャラクター」同士を比較する者が出てくる。
「上級練気士は一ターンで五回も攻撃できるうえに、ジャンプで屋根に登れるのかよ?強すぎだろ!」
「でも、魔法には成す術もないんだろう?天地をひっくり返せる魔法使いの方がすごいさ!」
「ふっふっふ、ここを見るんだな——勇敢な詩人は攻撃と同時に魔法を放つことができる。さらにこのジョブを組み合わせれば…魔法を使えるだけでなく、一ターンに二十回以上も攻撃できる!」
「それはルールブックの穴を突いてるだけだろ!」「実際そう書かれてるんだから、しかたないだろ!」
遠征軍の立体模型の上で巻き起こるこういった論争は、最終的にいつもこの一言に繋がる——
「大団長——どうですか?」
「大団長」兼「ゲームマスター」であるファルカの返答は、いつも実に単純明快なものだ。
「エックベルト、お前の練気士は六重の見えない壁に閉じ込められた。」「うっ!」
「ヴィンフリート、お前はアビサルヴィシャップに水底へと引きずり込まれた。呪文は唱えられんな。」「ぐっ!」
「ライフヘルム…ルール通り、お前は攻撃しながら魔法を唱えることができる。」「はっはっは!やっぱり僕が最強だった!」
「だが、お前は今それらの魔法をすべて反射する巨獣に遭遇した。ゆっくり戦え。」
何度かの悲鳴が上がった後、三人の騎士のキャラクターはあっけなく「除名」された。
「…一人の力には限りがあるが、俺たちが直面する脅威は無限だ。この戦闘がアビスの目の前で起きたものじゃなくてよかったな。」
ファルカは容赦なく、最後のキャラクターを表す駒を弾き倒した。
「次は敵状をしっかり掴んで、役割を分担してから戦場に突っ込め!ローエンですら『テーブルトークシアター』は一人でするゲームじゃないって分かってるぞ!」
……
人ひとりの有限な時間、有限な知識のうえで何かを成し遂げるのは不可能に等しい。絶えず変わり続ける敵の前では、なおさらだ。
しかし、散らばった炎を集め、それぞれの炎が目の前を照らせば、やがてそれは星や月光に匹敵する光になる。
「汝にしてみれば、魔神の魂とは恵みではなく猛毒だ…せっかく人としての力を得られたというのに…本当にそれでよいのか?」
遠征軍の出発前夜、奔狼の領主は訪ねてきた騎士にこう問いかけた。
「北風の魔神を殺せるやつは、俺だけじゃない。」
ファルカはいつも通り笑みを浮かべていた。まるで、これから直面する出来事が、日常の一ページに過ぎないかのように。
「だが、北風の魔神に『応え』られるのは、古今東西、北風の騎士だけ…そうだろ?」
「…変わったな。」
北風の王狼は目を閉じた。己の限界を超えるため、幾度となく自分に挑んできた、あの血気盛んな若き騎士の姿が瞼の裏に重なる。
「以前の汝でなら、自らの力を損なうようなことはしなかっただろう。」
「今は、力よりも守るべきものができたからな。」
夜明けの光が奔狼領の枝葉と朝霧を照らし、騎士の鎧を輝かせた。どこからか、野原の風に乗って遠く離れた街の喧騒が聞こえたような気がした。
子供たちの騒ぎ声、老人たちの笑い混じりの小言、金床で金属を打つ音、交わす杯の響き。旗は風になびき、騎士たちは長い隊列を組む…
「それに、今の俺の『力』は…」
ファルカは多くの風雨を耐え抜いてきた大剣を撫でると、再びそれを肩に担いだ。
「——俺の後ろにいるみんなだ。」
「狼の帰郷曲」
最初に「北風」と呼ばれた騎士は、魔物狩りから戻るたびに、酒場でいつも同じ歌を口ずさんでいたと言われている。
歌の由来は、騎士の名と同じく定かではない。騎士が異国から持ち帰った調べなのか、風の中で偶然耳にした弾き語りなのか…はたまた、落ちぶれた楽師が騎士に救われた際、お礼代わりに作ったフレーズだったのか。
いずれにせよ、騎士はその曲がお気に入りだったようで、何千回歌っても飽きることはなかった。狩りから戻る時にはいつもその歌を口ずさんでいたので、その旋律を耳にするたびに、酒場の客たちは騎士の凱旋を悟り、街の人々は外の魔物どもが討ち取られたことを知るようになった。
ところが、騎士の旅の仲間が風の国に留まった一方で、騎士はのちに新たな旅路へと踏み出した。あの旋律を思い出す機会はもう二度と訪れないものと思われた。
しかしその後、レイヴンウッドという名の鍛冶職人の息子が、再び「北風」の名を冠して重い大剣を振るうと、歓喜に包まれた群衆は再び騎士の帰郷を祝う賛歌をともに歌った。
こうしてこの曲は「北風」の名と共に永遠にモンドに留まることとなった。その旋律は吟遊詩人の口から後世に伝えられ…無数のバージョン、無数の伝説が生まれていった。
例えば、「光の獅子」エレンドリンの部隊がかつて高らかに勝利の歌を歌いながら、北の災厄を鎮めた伝説や、
「幼い狼」ルースタンが、かつて星明かりの下で柔らかな夜曲と共に、安らかに夢の中にある故郷へと戻った伝説…
次第に曲の歌詞も長くなっていき、それはいつしか永遠に語り尽くせない英雄叙事詩のようになったのだった。
……
ファルカが大団長に就任してから、初めての遠征に出発しようとしていた時のことであった。騎士たちは訓練場に円を作るように座り、いつも通り古い詩を歌って、来たる日の勝利と無事の帰還を祈った。
短いスピーチで士気を上げた後、ファルカは執務室の扉を開けた。すると、机の上に横長のプレゼントボックスが置かれていた。
「これまで使っていた予備の剣は、もう手入れをしても厳しいほどボロボロでしょう。これを機に、新しいものに変えてみるのはどうですか。」
「そんな使い方じゃ、どんな名剣も消耗品になってしまいますよ…この剣があなたの手の中で、少しでも長持ちしてくれますように。」
「それから、誕生日おめでとうございます。あなたは忘れているでしょうが、みんな覚えていたんですよ。」
手紙の裏には、署名と追伸が書かれていた。
「サイモン、フレデリカ、ヴァレンタイン、そして騎士団一同。」
「追伸——この剣にどんな名前をつけるか、ずいぶんと議論しましたが、結局決まりませんでした。『主』が決めてあげてください。」
訓練場の騎士たちの歌声は未だ止まず、数多の高い壁を隔ててもなお、はっきりと聞こえてくる。
鋼鉄で出来た剣の柄を握り締め、剣先で窓の外を照らす遥かなる月光を指してみる。止まない詩と歌が、ファルカの心の中で高らかに響き渡った。
凱旋せよ!正義のため、永遠なる騎士道のために!
神の目
「神の目」に選ばれずとも、人類は不朽の偉業を成し遂げることができる。
ナタの王は英傑を率いて神座へと向かい、フォンテーヌの天才は数秘で世界を推演し、璃月の大家は槍と剣で天下を駆け巡った。
悠久の時の中で、いつの時代にも、数多の人々の中から常理を超えた「変数」が生まれる。
モンドにもかつて、神の目を持たない騎士がいた。純粋な力と素早さのみで頂点に立ち、片手に大剣、片手に長剣を携えて、神業と呼ぶにふさわしい剣舞を創り上げた。
だが、これほど天賦の才は、あくまで偶然の産物だ。「光の獅子」が去って以来、モンドにこれほどの資質を持つ者は二度と現れなかった。同時代、「幼い狼」と「光の獅子」の双方から期待を寄せられていた「完璧な騎士」も、この剣舞を習得する前に、血塗られた道へと旅立ってしまった。
後世の騎士の中にも、彼らのように大剣と長剣の両方を振るった強者はたびたび現れたが、二本を手足のごとく自在に振るえる者は、現れないままだった。
……
この問題に直面した時は、ファルカですら途方に暮れた。
「光の獅子」に匹敵する筋力こそあった。しかし、双剣を同時に操るには極めて高い力だけでなく、高いテクニックも必要だと気づいたのだ。技術もなしに無理やり振るったところで、あちこちに綻びが出る——つまり、剣を振るった勢いについていけなくなってしまう。
騎士団の剣舞に関する研究と記録には、テクニックに関する記述が残されていなかった。先人たちが着目したのは明らかにこの剣舞の勢いにのみであり、その奥深さについては過小評価していたのだった。
しかし、ファルカは気にしなかった。人の中に剣舞の全貌を知る者はいなくなってしまったかもしれないが、奔狼領には全盛期の「光の獅子」の姿を目にしたであろう存在がいるではないか。
まだ若く血気盛んだった騎士は、思い立ったが吉日、酒を引っ提げて、二本の剣を背に森の中へと入っていった。
……
一日、二日。北風の王狼の遠吠えに混じって、ファルカの野太い悲鳴が響き渡った。
三日、四日。遠吠えと悲鳴は次第に消えていき、剣と牙の交わる音だけが鮮明に響いた。
王狼の数千年の記憶の中でも、このような挑戦者はほとんどいなかったと言えるだろう。
何故、試練を乗り越えてなお、幾度となく突撃を繰り返す。何故、魔神に認められてもなお、自身の剣技を認めない。
さらにもう一つの疑問が、王狼の心の中に渦巻いていた。
互角の激戦の後、王狼は傍らで酒をぐびぐびと飲み干す騎士に目を向けた。
「人間よ…汝はすでに十分な力を持っており、願いもまた熱く燃えている…この時代の『北風』の名は汝にこそふさわしい。」王狼は少し沈黙した後、こう続けた。「何故未だに天空に見つめられていないのだ?」
「天空に見つめられる?…ああ、神の目のことか?ほら、ここにあるぞ。」
ファルカは肩をすくめ、腰の辺りからひときわ異彩を放つ宝珠を取り出して見せた。
「たしかある日、酒を飲んでいたら突然杯の底に現れて…いや、冒険から帰って戦利品を整理していた時だったか?」
「…とっくに見つめられていたか。ならば、何故その力を使わない?」
「エレンドリンが神の目を使わずに剣舞を編み出したのなら、俺も当然同じ条件で再現しないとだろ?」
ファルカは悠然と立ち上がり、腕を軽く回すと、再び二本の剣を握った。
「だが、これからは——休憩は済んだか、王狼?」
二本の剣が交差する。腰に下げられた「神の目」が、久方ぶりに眩い光を放った。
「——次は、俺がやつの剣舞を越えてみせる。」
学び、継承し、超越する。
古来より、それは人類が最も得意としてきたことだ。