キャラクター詳細
フォンテーヌ廷では、日々刻々と様々な「物語」が誕生している。
例えば、ロマリタイムハーバーが急に猫の手を借りたいほど忙しくなって、明らかにフォンテーヌ人ではない船員が大勢働いていたこと。ポワソン町の某魚屋が、唐突に一ヶ月間でいつもの三ヶ月分に当たる魚を買い占めたこと。某所の魚が格別美味しいというビラがフォンテーヌ廷に大量に出回ったこと…
凡庸な記者や一般市民は、それらを単独で発生した「物語」としか見ない。海面で絶えずうねる波のようにありふれた、些細な出来事ととらえるのだ。
三流記者たちも波を追いかけながら、その形、方向、流速といった退屈で「表層的な物語」を淡々となぞらえるだけ。
だがシャルロットにとって、これらの波は表層的なものでしかない。彼女が知りたいのは、波がなぜ激しく逆巻くのかといった物語なのだ。
海面を吹き荒れる狂風のせいなのか、タラッタ海底谷の底部の環境が複雑すぎるせいなのか、それともエルトン海溝の深部で微振動が起きているからなのか…
シャルロットはそうした「ディープなニュース」を追い求めていた。
記者は頑固で愚鈍な「記録者」ではなく、機敏で柔軟な「探求者」であるべき。
それがシャルロットの「仕事のモットー」だ。
どうすれば自分自身が「ディープなニュース」に押し流されずに済むか、その点についてはユーフラシア女史や明達な市民の皆さんのお力を拝借するしかなさそうだ。
キャラクターストーリー1
シャルロットは幼い頃からこの世界に強い関心を抱いていた。
春の庭で最初に咲くレインボーローズのひと際美しい花びら。嵐のあと枝葉に覆われた大通りで楽しげに水たまりを踏む子どもたちと、その隣で困ったように笑う家族。砂浜にひっそりたたずむ美しい貝とその下からおずおずと世界をのぞき見る小さなカニ。誕生日に家族と一緒に食べたプクプクシュークリーム。それと…シューの中の色がちょっと濃すぎるクリーム…
他の人の目には、花はただの花であり、貝殻はただの貝殻、甘すぎるシュークリームもただのシュークリームにしか見えないし、世界とはそんなものだ。
でもシャルロットにとっては、視界の端に人知れず潜む「ディテール」こそが世界の全貌を描き出す鍵であった。
野生動物の生態が専門のベテラン記者であるシャルロットの父は、「観察」に興味を持つ娘の才能に気づいた。彼は娘の十歳の誕生日に、特注の「写真機」を贈った。サイズやボタンの位置にまでこだわった写真機は、シャルロットの手にぴったりなじんだ。
「誰もが物事の些細で特別なところに目を向けて観察するわけではない。シャルロット、それはお前の唯一無二の才能だよ。」
——シャルロットの父である「草原の記者」ガラノポロス氏はそう言った。
それからというもの、大きな記者の隣にはいつも小さな記者の姿があった。父娘のコンビはフォンテーヌ廷の街や森、河畔のあちこちに出没しては、大小一台ずつの写真機を手に、数々の美しい光景をフレームに収めた。
優しく厳しいガニュ·プチ夫人は二人の「取材」にしょっちゅう苦言を呈した。でもシャルロットの笑顔を見ると、あきらめた顔で素早く愚痴をひっこめるのが常だった。汚れた服や帽子に関しては、何でも器用にこなすガラノポロス氏に任せきりだった。
シャルロットには世界が巨大な宝の隠し場所に見えた。
そして写真は、彼女だけの宝の地図なのだ。
キャラクターストーリー2
ガラノポロス氏がシャルロットに絶えず言い聞かせている言葉がある。
「写真に力強い美が宿っていれば、誰もそれを無視できない。」
ガラノポロス氏はシャルロットに断りを入れて、自分と彼女が撮影した写真を『スチームバード新聞』に送った。編集者たちは一瞬でその写真——主にシャルロットの撮った写真——に魅了された。彼らはガラノポロス氏の熟練の撮影技術を褒めたたえ、これまでと同様に紙面の目立つ場所にその素晴らしい写真を載せた。
写真が掲載されると、フォンテーヌ写真界に激震が走った。評論家たちは我先に称賛の声を上げ、新聞の切り抜き愛好家は自身のスクラップブックを華やかに彩りたい一心で、せっせと新聞を買い集めた。
評論家と記者仲間がガラノポロス氏の自宅を訪れ、美的センスの磨き方を尋ねようとしたとき…
ベテラン記者はシャルロットをそっと自分の前に押し出し、玄関先できょとんとする人々に静々と告げた。「私にはそんな写真はとても撮れません。それは全部うちの娘の手柄です!」
経験と幅広い見識を備えた紳士淑女たちはまず絶句し、それから驚愕の表情を浮かべた。そして誰からともなくヒソヒソ話を始め、最後には質問を始めた。
シャルロットは目をぱちくりさせて、仰天する大人たちを眺めた。それはまるで突然の嵐に見舞われ、慌てて隠れ場所を探す小さな虫のようだった。彼らは互いに触角を触れ合わせながら、「葉っぱはどこ!ねえ、葉っぱは!」と叫んでいるように見えた。
「はい!皆さん、こちらにご注目!」
幼い声に呼ばれてビクッと反射的に顔を上げた人々の目線の先で、特製の写真機がパシャリと音を立てた。
その刹那、玄関先で眉根を寄せ、口角を上げ、顔を真っ赤にして、髪を振り乱し、腕をぶんぶん振る人々の姿が写真に収められた。その細部が、嵐に遭遇して慌てふためく小さな虫たちの様子を存分に伝えていた。
小さな記者は写真機をぽんと叩き、にっこり笑った。
「この写真のタイトルは…『そんなんじゃダメ!』で決まりね。」
キャラクターストーリー3
シャルロットの卓越した写真技術が評判を呼ぶと、原稿の依頼人、雑誌の編集者、新聞切り抜きの愛好家や父親の記者仲間がひっきりなしに訪ねてきた。その中に『スチームバード新聞』の編集長、ユーフラシア女史がいた。
女史は単刀直入に来意を告げた。シャルロットを「専属記者」として招き、撮影や取材、執筆を任せたいというのだ。
…だが普段は人の好い父親が、「専属記者」の件に関しては断固反対した。彼は娘に心根の腐った、腹に一物ある人々と付き合ってほしくなかったのだ。
「大自然は厳しいが、誠実だ。暴雨は理由もなしに降らないし、猛獣も訳もなく襲ってはこない。」
「だが人間は息をするように嘘をつく。人の顔は写真機で映せても、人の心にピントは合わせられない。」
父は娘の選択を応援したいと思っていた。でもそれ以上に、平凡で幸せな暮らしを送ってほしい、どろどろした人間関係に足を踏み入れてほしくないという思いのほうが強かった。
この世界はシャルロットにとっては宝の隠し場所。お宝の手がかりを記した写真は、彼女の宝の地図だ。
だが彼女は初めて気づいた。その宝の隠し場所の裏には、まだ発見されていない無数の「真実」が渦巻いているのだと。
そうした「真実」は「お宝」ではなく、ほの暗い未練の数々だ。人々はそれらを故意に隠蔽、破棄、偽装して、そこに投げ捨てることで永遠に葬り、それらにまつわる物事に決着をつけようとした。
シャルロットは自分ならそれを発掘して、すべての真実を明らかにできると気づいていた。花園でチューリップの球根を掘り出したり、貝殻からヤドカニを引っ張り出したり、リスの隠した木の実を見つけ出したりするように。
…鳥が山津波を見下ろし、穴ネズミが地震を察知し、魚が津波の到来を感知するように。
彼女は才能という責任を帯びていた。
「真実」を発掘する能力のある者には、その「真実」を世に知らしめる義務がある。
唯一の問題は、彼女に「勇気」があるか否かだ。
両親は沈黙で応えた。彼らはもう娘の決心に気づいていたのだ。立派に成長したシャルロットは鳥のように巣から飛び立つ日を迎えていた。
翌朝ユーフラシア女史が時間通り出社すると、『スチームバード新聞』社の入口に写真機とノートを抱えた準備万端のシャルロットがいた。
「ようこそわが社へ、シャルロットさん。」
ユーフラシア女史は手を差し出してこう言った——
「次のラヴェール賞は、あなただと信じてるわ。」
キャラクターストーリー4
『スチームバード新聞』が出資して創設した「ラヴェール賞」は、フォンテーヌ廷の記者たちが最も価値を置く賞だ。
過去の受賞者には、傑出した記者がずらりと並んでいる。執律庭の苦難の道のりを取材し、未解決事件の真実を暴く過程を詳細に記したイライア女史。海洋生物の生態を撮影するために海辺で数十年暮らし、苦労の末に成功を収めたオブロー氏。また率直な物言いで知られるデューレブクス氏ももちろん受賞者だ。彼は数十年に及ぶ記者人生において、どんな脅しや個人攻撃にも屈することなく記事を書き続けた。
当然フォンテーヌ廷のメディア界に名をはせる天才記者シャルロットも、早々にその仲間入りを果たした。報道の分野で類いまれなる才能を発揮したシャルロットは、数度に渡る連続受賞を成し遂げたのだ。
評論家たちは彼女の記事を手放しで褒めたたえた。曰く、彼女の記事は「他の追随を許さない筆致」、「新鮮この上なき視点」、「疑問の余地なし」、「唯一無二」…
だがシャルロットに幾度も賞が与えられたのは、『スチームバード新聞』と「ラヴェール賞」選考委員会が結託していたからだと非難する者もいた。シャルロットは世間知らずのただの若手記者であり、彼らが名誉や利益のために推挙した操り人形に過ぎない…でなければ、なぜシャルロットが選考委員とあれほど親しいのだと。
だが部外者がどれだけ中傷しようと、シャルロットの才能は疑うべくもなかった。次期「ラヴェール賞」の選考が近づく頃には、彼女は同僚たちから次の受賞を確実視されていた。
彼女は犯罪集団のアジトに単身潜入し、悪徳業者の工場の極秘取材までこなした…幾多の障害や困難を乗り越え、片時も休まず無数の記事を書き上げた。真実を読者に届けたいというその一念で…記者としての素養、筆力、報道姿勢という点から見ても、シャルロットが選考委員の本命視する記者であることに疑いの余地はなかった。
人々は——特に投機家たち——シャルロットがどの記事を選考委員会に提出するか推理した。
その記事が「ラヴェール賞」獲得の足がかりになるはずだ、その記事の掲載紙はきっとプレミア感が増して…金銭的な価値が上がるはずだ、と。
だが誰も予想しなかったことが起きた。シャルロットは、提出するのはすでに掲載済みのどの記事でもなく、完成したばかりの最新記事だと宣言した。そこで史上まれに見る「真実」を明らかにするというのだ。
親愛なる読者の皆さん、どうか明日の『スチームバード新聞』の一面をお楽しみに!
キャラクターストーリー5
「威信はどこに?『ラヴェール賞』選考に不正の疑い」
——それが授賞式当日の『スチームバード新聞』の一面だった。
その中でシャルロットは過去十年間に選考委員会常任委員と組織や個人との間で発生した金銭の授受、不公平な選考基準について詳細に指摘し、被害に遭った記者や報道の内容を具体的に列挙した。
報道が出ると、フォンテーヌ廷は騒然となった。記者が大挙して「ラヴェール賞」選考委員会の所在地に押しかけた。もちろんシャルロットもその中にいた。
写真機のシャッターが山海の鳴動のごとく鳴り響く中、彼女は事前に用意しておいた分厚い質問リストを広げ、呆然とする選考委員たちにそれを掲げて一つひとつ質問した。顔を真っ赤にした選考委員たちはしどろもどろに釈明したが、その説明は穴だらけだった。うろたえた彼らは質問の仕方がルール違反だと言い捨てると、記者たちの前からそそくさと姿を消した。
だがシャルロットの「報道」はまだ始まったばかりだった。
彼女は『スチームバード新聞』に「ラヴェール賞」関連の記事を続けざまに発表した。その矛先は選考委員会と結託する社内の人々にも向けられ、彼らがいかなる手段で利害関係にある記者を推薦したか、その記者からどんな見返りを受け取ったかを詳細に記した…
その記事はフォンテーヌ報道界に大騒動を巻き起こした。激しい糾弾の声を受け、執律庭は「ラヴェール賞」の徹底調査に乗り出した。選考作業を止め、疑惑の受賞者に対する本格的な聞き取り調査を始めたのだ。
シャルロットはその頃、新聞社に仮住まいしていた。彼女との「対話」を望む人々は、ユーフラシア女史によって固く断られた。終いには執律庭が社の入口に警備要員を派遣するほどだった。
シャルロットは誰も触れたがらない巨石を動かし、そこを隠れ蓑にする虫けらどもに強烈な「真相」を突きつけた。
執律庭の調査は三ヶ月で終わった。不正を働いた選考委員、不当な手段で賞を得ようとした記者、私腹を肥やした編集者…卑劣な者たちみな、当然の報いを受けた。
選考委員会も各方面の監督の下、組織を一新した。再編が終わった後、彼らが真っ先に手掛けたのは、威信の失墜した「ラヴェール賞」のトロフィーをシャルロットに贈ることだった。
だが、それはもはやただの鉄屑同然だった。
彼女にとっての真の栄誉は、あの一本の記事——とその後の多数の記事——が「真相」を白日の下にさらしたことである。
「ヴェリテくん」
父親から贈られた写真機は、今も彼女と共にある。
彼女が『スチームバード新聞』の専属記者に本採用された後も、父はその厄介な仕事を嫌ってはいたが、結局は娘の意思を尊重した。
彼は装置と写真機の改造に詳しい友人に、小さな写真機の大幅な改良を依頼した。
たとえばもっと素早くカバーを取り外せたら、シャルロットは片手で簡単にフィルムを取り換えられる。また写真機の筐体が防水防火、耐爆耐衝撃なら、激しい衝撃を受けて外部構造が全壊しても筐体内部の写真には傷一つつかない…
最初は「その必要はないだろう…」と苦笑していた友人も、父親の粘りに負けて写真機に高性能の拡声器を取り付けた。起動するだけで、大きな警告音が鳴る仕組みだ。さらに側面には鋭利なナイフを隠した収納部があり、ボタンを押すだけで強力なバネがナイフを超高速で弾き出す構造になっていた…
そのうえ「スローシャッター機能」、「オートフォーカス装置」も追加された…
父は思いやりと無数の装置を搭載して、写真機を娘同様に全幅の信頼に値するこの世でたった一つの…スーパー写真機に仕立てあげた。
改造が終わったその日、シャルロットは写真機に「ヴェリテ」という新たな名を授けた。
その意味は——「真実」である。
神の目
「神の目」については、シャルロット自身もいつそれを手に入れたのかはっきりと言えない。
先日、水中作業員の待遇に関する新たな記事を書くために、潜水士を大勢雇用しているドーランダー社長を取材した。そのでっぷりと太った社長は真実を話すつもりなどハナからないのか、あらゆる質問を適当に受け流し、その場しのぎの回答に終始した。彼の雇用する潜水士たちも何も語ろうとはしなかった。
長期間の潜水による肺や鼓膜の深刻な損傷、過重労働による疲労の蓄積、ズタボロの潜水服や喉を通らない食事…だがドーランダーの前では、誰もが口を閉ざした。ドーランダーは収穫ゼロのシャルロットを見て、勝ったとばかりにほくそ笑んだ。
翌日、シャルロットはコネを使って潜水服を手に入れ、密かに業務中の潜水士に近づき、労働者酷使の実態を写真に収めた。そこは巨大な海底地溝で、フォンテーヌ廷の潜水規則では作業が厳禁とされる場所だ。
それから彼女はぷつりと消息を絶った。『スチームバード新聞』の記者に分かるのは、執律庭の警察隊員たちが社に出入りしているということだけだった。ユーフラシア女史は珍しく不安な顔を見せ、毎晩遅くまで社内に待機していた。
ある記者は、古びた格好をした人が全身ずぶ濡れで社の入口にうずくまって震えているのを見たと証言した。
またある記者は先日のタラッタ海底谷大地震の際、ドーランダーという人物の雇った潜水士がそこで引き揚げ作業をしていて、危うく誰かをケガさせるところだったと語った。
さらにある記者は、ドーランダーという人物が写真機の捜索に密かに懸賞金をかけていると話した。そこに彼にとって極めて重要な写真が収められているというのだ。
だがいずれにせよ、シャルロットはまだ姿を見せなかった。
しかし、記者がやられっぱなしでいるはずがない。『スチームバード新聞』の記者たちは秘密裏に行動を開始した。ある者は人脈を駆使してドーランダーの商売を探り、またある者は人知れず潜水士たちを尾行し、さらにある者は自らのペンで遠回しにドーランダーを非難した…
『スチームバード新聞』の目覚ましい働きにより、ドーランダーの労働者酷使の実態を報じる記事が完成した。
だが、その記事には証拠写真がなかった。記者たちが頭を悩ませていたその時…
新聞社のドアが突然バタンと開き、ぼろきれを身にまとい、モノクルや靴を失くしたシャルロットが大股で入ってきた。彼女は胸元に抱えた「ヴェリテくん」を机に置くと、笑って言った。
「写真ならここにあります!」
彼女に何があったか尋ねる者はいなかった。全員が申し合わせたように仕事を再開し、写真を一枚一枚記事に配置した。
翌日の『スチームバード新聞』にて、「ドーランダー、水中の守銭奴」と一面で報じられる予定だ。確かな証拠を元に不適正な雇用、給与のピンハネ、従業員の健康被害といった劣悪な雇用実態を指摘している。その記事には「スチームバード新聞記者」という署名が入っていた。
新聞発行の前夜、シャルロットはいつも通り、印刷所で最終校正をしていた。
最後の文字を確認し終え、原稿を閉じた時、彼女の手元にはアイスブルーの「神の目」が端座していた。
シャルロットはそれをまじまじと眺め、諦めたようにつぶやいた。
「…まあ、このことは記事にしないでおこう。」