キャラクター詳細
遠征軍が帰途についたのとほぼ同時に、吟遊詩人たちも英雄の物語を酒場へと持ち帰った。
見慣れたファルカたちの名前のほか、「前線制圧官」という肩書きも、際立った戦果と極めて高い出撃率によって人々の視界に入るようになった。
なぜ攻撃範囲が最も広い遠距離小隊が、常に最前線で活躍し、率先して白兵戦を仕掛けるのか?
なぜ弓やクロスボウ、銃を扱う小隊が、長槍を手にした若き騎士を筆頭としているのか?
常識に反する事態は当然疑問を呼び、疑問にはしばしば議論の声が伴うものだ。
ある者は怒鳴って主張した。「至近距離での射撃は意味がないって言いたいのか?遠距離武器はそんな不便なもんじゃないだろう!」
またある者は、こう考えていた。遠距離小隊とは最も筋力に優れた最精鋭の集団であり、その中でも特に優秀な戦士を一番危険な最前線に投入することこそが、最適な選択であると。
それらの論争に終止符を打ったのは、吟遊詩人たちが遠距離小隊の騎士から直接聞き出した次のような評価であった。
「あの人は第5小隊の最も鋭い矢であり、敵がどんな陣形を組んでようと切り裂くんだ。」
「彼は小隊の最も堅固な防壁となって、あらゆる攻勢を阻止してくれる…」
しかし、吟遊詩人たちはしばしば騎士たちの言葉の後半を意図的に省略する。それは伝説として詩歌で語るには、現実的すぎるからだ。
「まあ、ローエン副隊長は単にそのほうが効率的だと思ってるだけじゃないかな…」
そう、彼の物語は騎士小説のような栄光や華やかさに富んだものではない。ましてや、英雄の偉業にあるような伝説や波乱に満ちてもいない。
長槍、射撃、伏兵、毒薬、奇襲、潜入…
彼が武器や戦術の優劣を論じることは決してなく、戦闘や行動が名誉や損得に関わるかどうかも気にしない。
あらゆる手段に手応えの差はあれど、それがもたらす愉悦は「勝利」そのものには到底及ばない。そして「生存」の実感には、比べるべくもない。
最後に立っている者だけが勝利の意味を考える資格を持ち、最後まで痛みを感じられる者だけが生を語る資格を持つ。
戦闘、勝利、生還、その繰り返し…
これこそがローエンの物語であり、生き方なのだ。
キャラクターストーリー1
ローエンの記憶の中で、彼が初めて手にしたおもちゃは、小さく柔らかい弓だった。
寡黙な父は上質な杉材を選んで弓を作り、几帳面な母は革を裁断し、何度も揉みほぐしてより合わせたものを弦とした。
たとえおもちゃであっても、父と母は普段の弓作りの工程と同じように、一切手を抜くことなくそれを完成させた。
しかし、幼いローエンの期待に反して、父が弓の引き方や矢のつがえ方を教えることはなかった。
当時のローエンに許されたのは、両親の動作を真似ることだけだった。弓の点検や油を使った手入れ、弦にロウを塗る方法を見て学ぶ。毎日のように何度も何度も、ひたすら繰り返した。
「ローエン、私たちの先祖はこう言っていた。『弓とは一貫性を重んじるもの。我が家系は代々弓造りを生業としているのだから、弓の如く生き、すべての行いに絶対的な一貫性を保たなければならない。』」
毎朝の日課である祈りの時間になると、ローエンの両親は決まってこの話をした。
規則正しい生活、実直な労働、そして平穏な暮らし。
ローエンが生まれる前、両親はすでに二十余年をそのように過ごしてきた。そして彼が生まれてからの十数年間も、そのすべてが少しも変わることはなかった。
言葉を覚え始めた頃から弓矢の手入れに熟達するまでの間に、ローエンは気づいてしまった。どうやら自分は、すでに生涯の軌道が見えてしまったようだ——おそらく、老いて木目の裂け目すら見えなくなるその日まで、自分の命は波ひとつ立たない日々の中ですり減っていくのだろう。
確かに、矢は倉庫に収めておくことはできる。だが、そこに在り続ける運命にはない。そしてローエンの自由奔放な天性もまた、平穏な生活に縛られる運命にない。
幼いローエンは再び矢じりを磨き、影に映る深紅を秘めた瞳と見つめ合った。
それはただ、弦を離れる瞬間を待っている…
そしてそれは、間もなく訪れた。
ある何気ない日のこと、ローエンはいつものように荷車に座り、父親と共にモンドへ注文の品を届けに向かった。
だが、その旅は穏やかなものではなかった——よく訓練された覆面の盗賊たちが、彼らの荷を狙っていたのだ。
父は慌ててローエンを幌を張った荷台の中に押し込み、じっとして声を出さないよう言い聞かせた。そして大声を張り上げ、盗賊たちを引き離すか、あるいは近くにいるかも分からない騎士団の救援を呼ぼうとした。
荷車には、巨石をも穿つほどの弓と鋭い矢が積み込まれていたというのに…
父は長年弓矢を試射した経験から、すでに一流の射手としての実力を備えていたというのに…
盗賊たちは意図的に、あるいは偶然か、父を荷車から遠ざけようとしていたというのに…
しかし、平穏な生活に慣れきっていた父は混乱に陥り、疑うことも、武力による抵抗もできずにいた。
荷車の外は次第に静かになり、やがて幌が開かれた——しかし、ローエンの目に映ったのは盗賊を追い払った父でも、救援に駆けつけた騎士でもなく、覆面をかぶった黒衣の集団だった。
彼らは強引にローエンを連れ去った。逃げようとしても、万力のように大きく力強い手に捕まってしまえば、どうあがこうと徒労にすぎない。
この時のローエンには、自分が誰の陰謀に巻き込まれたのかも、どこへ連れ去られたのかも知る由もなかった。
幼いローエンは閉ざされた牢屋の中で黙って座り込み、ただ考えていた。
もし父が弓を構えてあの盗賊たちと対峙していれば、奴らにつけ入る隙など与えなかっただろう。もし自分がもっと機敏だったら、奴らが手を下す前にどこかへ隠れられたはずだ。
隣の牢屋では、ほかにさらわれてきた子供たちの泣き声が激しさを増す。一方、ローエンは誰にも見られないように、荷車から密かに持ち出した小さな矢じりを袖に隠した…
風神が子供たちの助けを求める声を聞き届けたのか、あるいは何らかの存在がローエンの力への渇望に応えたのだろうか。
悪党たちが慌ただしく拠点を移す準備をするさなか、ついに正義の代行者たちが現れた。
その先頭に立つ鎧をまとった男は、短弓を手にいとも容易くすべての悪党を打ち倒した。
生け捕りにして尋問するためか、もしくは子供たちへの誤射を避けるためか、彼は刃がついていない矢だけを使って戦っていた。
だが、強大な腕力にかかれば、たとえ鈍い矢であっても十分な威力を発揮する。彼の弓の弦が震えるたびに、「ドスン」と人が倒れる音が伴う。
空を切り裂きながら放物線を描く矢はあまりにも鋭く眩しい。思わず手を動かすことさえ忘れてしまうほどに、幼いローエンの視線は釘付けにされた。
檻を開けたアドルノと目が合い、ローエンはようやく我に返った。
「もし俺があの矢のように力に満ちてたら、こんな縄とっくに切れてたはずだ。それにあのバカ、テオドールの泣き声もこんなに長く聞かずに済んだかもな…」
そんな思いが、幼いローエンの心の底に静かに根付いた。
一方、アドルノが目にしたのは、また別の光景だった。
本来恐怖に震えているはずの少年は冷たい表情を浮かべ、泣き叫ぶ子供たちの中で異様に目立っていた。
そして、彼の手首に固く結ばれていたはずの縄紐には、矢じりによる細かな切れ込みがあった。
——この子はただ者ではない。どうやら、しっかり目をかけてやる必要がありそうだ…
キャラクターストーリー2
ローエンが救出されて以来、再び我が子を失うことを恐れた両親はこれまで以上に過保護になった。しかし、矢はすでに弦につがえられたのだ。もはや埃にまみれる日々に戻ることはできない。
月が明るく輝く深夜、彼は両親が熟睡している隙にこっそりと窓から抜け出した。彼と共に夜の闇へと消えたのは、自作の短弓、彫刻用の短剣、そして出荷基準に満たない不良品の数本の矢。
幸運に恵まれたのか、あるいは生まれついての戦士だったのか。彼が帰宅した時、バッグの中には戦利品としてヒルチャールが使う矢じりが二つ入っていた。
それ以来、彼が夜間に家を抜け出す頻度は増した。週に一度から三日に一度となり、ついには毎晩のこととなった。彼のターゲットは次第に強大になり、割れた仮面から不吉な絵巻、そして暴徒の角笛というように、戦利品も豊富になっていった。
やがて冒険者たちの間では、真夜中のドーンマンポート周辺に小柄な弓使いが現れる、という不思議な噂が流れ始めた。彼は風のように魔物の群れへと飛び込み、それぞれの胸へ正確に矢を射るのだと。
数えきれぬ勝利は、数えきれぬ危険を冒したことを意味する。それらの経験は、心臓が狂ったように激しく高鳴る瞬間を幾度となくもたらした。
それと同時に、ある疑問が彼の心に密かに芽生え始めていた——もし今の自分が再び悪党に遭遇したら、あの頃とは違う結果になるのか?自分はいまだに、誰かに救われるのを待つしかない子供なのか?
どれほど多くの危険を乗り越え、どれほど多くのターゲットを射抜いても、この疑問は心の中に積み重なり続ける一方で、答えが出ることはなかった。
彼が自らの手で、あの最初のターゲットを射抜かない限りは。
……
ローエンが両親の前で冒険者の制服を着て見せると、二人はまず驚愕し、その後激しく叱った。
最終的にサイリュス支部長が胸を叩き、ローエンが魔物を倒すことはあっても、魔物がローエンを倒すことはないと保証した。これにより、ようやく両親は為すすべがない状況をしぶしぶ受け入れた。
…おそらく当時の彼らが悟ったのは、ローエンがすでに一流冒険者の実力を備えているということではなく、「この子はもはや聞く耳を持たない」という事実だったのだろう。
しかし、それでも両親の心配は尽きず、その後の数年間もローエンに冒険をやめるよう説得することを諦めなかった。ついには、かつてローエンを窮地から救い出したアドルノを探し出し、この老騎士に自分たちの代わりに息子を説得してほしいと頼み込んだ。
「弦につがえた矢は二度と矢筒に戻れない。お前たちが弓職人であるなら、その道理も理解できるだろう。」アドルノはローエンの選択を予期していたようだった。「…だが、弦を離れようとしている矢を、正しい方向に向けてやる時間はまだ残されている——これは、一人の弓兵としての助言だ。」
アドルノも頼みを断ることはなく、一度はローエンを説得しようと試みたが、両親は二人が何を話し合ったのかを知らない。確かにその後の数カ月間、ローエンはとても大人しくしていたが…どうやら、「試験の準備」をしていたらしい。
数ヶ月後、ローエンは突如として騎士試験の会場に現れ、圧倒的な実力でその年のトップの座を勝ち取った。そのやり方については多少物議を醸したものの、結果的には騎士団への加入に成功した。
騎士になるのも悪くないかもしれない。少なくとも騎士団所属ともなれば、公的な身分に加えて仲間の助力も得られる。冒険者として一人で戦うよりはずっといい。
ただでさえ何ヶ月か前のローエンは、冒険者協会から寄せられる依頼のあまりの退屈さに嫌気が差し、モンドを飛び出してでも、より危険なターゲットを探しに行こうとしていたほどなのだから。
ローエンの両親は、互いにそう言い聞かせるように慰め合った。ただ気になるのは、あの日アドルノはローエンに何を告げ、騎士になることを決意させたのか——二人はますます疑問をつのらせた。
……
「…あの一連の誘拐事件の首謀者を突き止めた。」
新しく現れた説得役に興味がなかったローエンの目つきが急に鋭くなった。「——誰だ?」
「もうじき西風騎士団が公告を発表する。復讐を考える必要はないぞ。」アドルノは静かに続ける。「もう死んだからな。」
長い沈黙の後、ローエンは再び口を開いた。「誰がやった?」
「自殺だ。」「そんなわけねぇ。俺が何を聞きたいか分かってるだろ?誰がそこまで追い込んだ?」
「我らが大団長、北風騎士、モンドの生ける伝説…」アドルノはかすかに微笑んだ。「…お前の新しいターゲットとしては十分か?」
キャラクターストーリー3
ファルカにとって、自身の「模倣者」はもはや珍しいものではなかった。
大英雄の背中を追いかけたがる血気盛んな若者は数知れない。時折、並外れた行動力と過剰かつ盲目的な自信を持つ問題児が現れるのも、よくあることだ。
だが、ローエンのような「模倣者」を見るのは、初めての経験だった。
これまでの「模倣者」といえば、過激な行動といっても奇襲を仕掛ける程度で、その目的の多くが己の実力を証明することだった。だが、ローエンの初登場は、まさに「手段を選ばない」ものだった。
不意打ちの矢、煙幕、罠、さらには魔物を一瞬で昏倒させる催眠薬…これらの手口の数々は極めて老練で、百戦錬磨の精兵の手によるもののようであり、イロックの残党の影さえもかすかに感じさせた。
「やるじゃないか。少しは腕が立つみたいだな!だが——俺にこんな小細工は通用しないぞ!」
ほんの一瞬のうちに、ファルカは目の前の「青二才」を完全に制圧した。
「誘拐されても取り乱さず、自力で逃げ出せる可能性すら秘めた子供。」
「冒険者の間で噂になっている、ドーンマンポート周辺で正確かつ無慈悲に狩りをする、小柄な弓使い。」
「入隊してすぐに、あちこちでイロックの残党を掃討し始めた無鉄砲な若造。」
彼は以前からアドルノより、ローエンに関する多くの逸話を聞いていた。そのため、この若者の実力を探るべく、この茶番をもうしばらく続けさせることにした。
魔物たちすら息を呑むほどの二振りの大剣の重圧を前に、この駆け出しの少年はどのような眼差しを見せるのだろうか?
憧れか?動揺か?あるいは…?
ファルカはローエンの目をじっと見つめる——冷酷さを感じる双眸はより鋭さを増していた。ファルカはその瞳の中に歓喜の感情、そして、強者に挑み栄光を勝ち取ることに夢中になっていた、かつての自分を見たような気がした。
見込みはあるが、まだまだ鍛錬が必要だ。ここは少し痛い目に遭わせてやらなければ。そう考えたファルカは、この大胆不敵な新米騎士を捕らえ、まずは数日間の謹慎を科すことに決めた。「もし不服なら、またいつでもかかってこい。期待してるぞ。」
「なら、せいぜい楽しみにしてな。」反省室に入れられる直前、ローエンは肩をすくめて笑った。
謹慎が明けた翌日、ローエンはファルカのお気に入りの酒を持って現れた。どうやら謝罪のつもりらしい。
「ほう?なかなか気が利くじゃないか。俺が一番好きな蒲公英酒を選ぶなんてな。それじゃ、遠慮なくもらっておこう。」
その辛く苦い酒が喉を通った瞬間、大団長はわずかなめまいと異変を察知した。その後、ローエンを反省室に入れた後にアドルノが放った言葉が脳裏に浮かんだ。
「言っておくが、ローエンをかつてのお前自身や、お前に憧れるモンドの子供たちと同列に考えないようにな。確かに、あいつもお前の力には大いに敬意を持っているが…腹の底では、どうやってお前に挑むかばかり考えている。」
「俺の推測が間違っていなければ、あいつはこう考えているはずだ…『強大なファルカ』に挑むこと自体が面白いに違いない。たとえ負けようが、ベッドで二日ほど寝込むだけだ…とな。あいつは、栄誉なんて気にも留めていないだろう。」
唖然とするローエンに見つめられながら、ファルカは強靭な肉体と精神力だけでふらつく身体を立て直した。
「…嘘だろ…計算が間違ってなけりゃ、この量なら軽くイノシシ十頭はぶっ倒せるはずだぞ…」
「言っただろ?俺にこんな小細工は通用しないってな!」
その瞬間から、ローエンは「力」という言葉に対して新たな認識を持つようになった。
——それは、いかなる罠や猛毒にも揺るがない強靭さであり、無数の死線を越えて培われた絶対的な強さ。
この日、ローエンのターゲットリストに二つの項目が書き加えられた。
一、あらゆる手段を尽くしてファルカを倒す。
二、その手段を自分に使っても、絶対に倒れない。
キャラクターストーリー4
西風騎士団は長い歴史を持つ組織であり、これまでに多くの英雄を輩出した一方で、多くの悲劇や苦痛も経験してきた。
無数の伝説と教訓が、騎士たちに一つの真理を教えている——
騎士道に背く行いをした時、それに伴い悲劇が降りかかる。
そのため、騎士団内部ではローエンが第5小隊の副隊長を務めることを疑問視する声が上がった。
言うまでもないが——頻繁にトラブルを起こし、大団長に奇襲ばかりして、戦闘では毒薬や罠の使用を好む「狂人」は、人々が想定する「騎士道」の概念とは一切結びつかなかった。
もちろん、ローエン自身はそういった世間の風評を意に介していなかった。
「お前が他人の考えなんて気にしないということは、百も承知だ。だが、遠征は一人で遂行できる任務じゃないことはお前も分かっているはずだ。もし支えてくれる味方がいないとなれば、遠征への参加応募にも支障が出るだろう。」
ここまで言うと、アドルノは言葉を区切った。ローエンがこの問題を解決できないことを心配しているようでもあり、彼が事態を悪化させることを懸念しているようでもあった。
ファルカが史上前例のない大遠征を開始すると宣言して以来、ローエンの期待は高まる一方だった。
遥か遠くの戦場、未知の危険——それは、彼にとってこの世のどんな玩具よりも興味をそそられるものだった。しかし、彼の参加応募の道のりは順調とは言えなかった。試験名簿が何度か発表されても、そこに彼の名前は一度も見当たらなかった。
アドルノは、戦場における試験でローエンが手こずるはずはないと心得ていた。となると、戦場外の難題に遭遇したのだろう。
だが、意外にもこの時のローエンは大して執着していなかった。「いいぜ、異端の騎士は試験に参加できないってんなら——試験官になればいいだけだろ?」
……
「実戦の観点からすれば、いい発想だ。ついでに、団員たちに自分の欠点を自覚させられる。騎士団改革の必要性を疑う暇もなくせるだろう…なにせ、すべての敵が律儀に騎士道を遵守してくれるとは限らないからな。」
ローエンが提出してきた特殊な「申請」に目を通しながら、ファルカは考え込んでいた。
この報告書には大量の「試験問題」が羅列されており、夜襲や罠、毒といったファルカには見慣れた手段のほかにも、変装による奇襲や、演習前にあらかじめ補給物資を破壊するといった、斬新かつ創造力に満ちた「試験方法」が取り入れられていた。
報告書の最後の一枚には「ある偉人の名言」まで引用されており、ファルカは危うく口元まで運んだ酒を吹き出しそうになった。
「自分の身すら守れない西風騎士が、どうやってモンドを守るっていうんだ?」——先代大団長襲撃の夜より。
…若き日に犯した過ちは、いつも不意に自分に襲い来るものだ。少し気持ちを整理した後、ファルカは決断を下し、この申請を承認した。
普通ではない騎士は、普通ではない「試験」で審査すればいい。
それは遠征の騎士だけでなく、ローエン自身にも等しく当てはまる。
キャラクターストーリー5
「仁愛騎士」の後継者として最有力候補と目されるローエンは、おそらく西風騎士団の中で最もその称号にふさわしくない人物でもあるだろう。
世間一般の印象では、「仁愛騎士」とは人々を危機から助け、苦境から救い出す存在である。しかし、ローエンは自ら進んで危機を探し求め、ついでに他者を苦境に陥れることに没頭している——もちろん、災難に見舞われるのは大抵彼の敵であり、必ずしも人間とは限らないが。
とはいえ、ローエンのこうした「趣味」も、全く無益というわけではない。少なくとも、特殊介入や危険度の高い任務においては、多くの人の予想を遥かに上回る成果を上げている。
このような理由から、遠征軍における数々の秘密任務の実行は、当然のようにローエンに委ねられた。
その一つが、「北の大陸情報網」の現当主からの秘密依頼である。
情報分析によると、とある地下オークション組織が世間の混乱に乗じてナド・クライで暗躍しており、密輸だけでなく、危険な品も売り捌いているという。組織の行動は極めて慎重で、背後には何らかの後ろ盾がついている可能性が高い。これを排除できれば、「北の大陸情報網」の信用を得られるだろう。
「おたくらの戦力は少しも疑っちゃいないさ。けど、騎士道が通じない土地じゃ、戦力がそのまま実力に繋がるわけじゃないだろう?」
「北の大陸情報網」の疑念を払拭するため、遠征軍は極めて堅実な計画を立てた。
ローエンが単独行中の人員を秘密裏に捕らえ、オークションの時間と場所を聞き出す。その後、尾行や盗聴、段階的な調査を通じて関係者を特定し、リスクを最小限に抑える。
どう考えても、ローエンにうってつけの内容だった。単独潜入、確実な捕縛、核心への直撃——難易度は十分に高く、そして十分に静かな任務だ。
ただ残念なことに、ナニアは一つ見落としていた。ローエンにとって静かすぎる計画は、しばしば不徹底を引き起こす原因になるということを。
出発前、彼女はサイモン枢機卿からのメッセージをローエンに伝えた。「任務に集中し、余計な問題を起こさないようにしてください。」
これに対し、ローエンはきっぱりと答えた。「心配はいらない、分かってる。」
実際のところ、彼は確かに分かっていた。
少なくとも彼自身の理解では、この任務の目的は終始一貫していた。それは——「北の大陸情報網」に西風騎士団の実力を示すこと。
……
数日後、モンドの騎士団団長執務室にて。
代理団長ジンは遠征軍から送られてきた行動報告書を読み終えると、筆を執り、ファルカへの返信をしたためた。
「今回の『地下オークション』関連作戦について、全容を把握いたしました。
ローエンの現場での判断は相変わらず効率的かつ果敢です。彼はすべての参加者を現場で拘束することに成功し、戦闘がナシャタウンに波及することを防ぎ、民間人の死傷者も出しませんでした。結果だけを見れば、確かに民衆を保護し、仁愛を実践した行動と言えるでしょう。
功績という観点から申し上げるなら、あなたのご判断に同意いたします。彼はすでにアドルノさんの後を継ぐ資格を備えているはずです。任務中の行動も実に緩急自在と言えるでしょう…敵の拠点に潜入するまでは。
率直に申し上げますが——敵拠点の中心に現れ、自ら戦闘を仕掛け、単騎で突破を敢行。さらには戦利品を吊るして実力を誇示するのは、決して西風騎士団の作法ではありません。
もしお時間がありましたら、ぜひ北の大陸情報網の関係者にこの点をご説明くださいますようお願いいたします。」
「偽・整合型交流記録装置」
ミカが持ち歩く「統合型前進測量装置」は、常にきっちりと整理されている。
その中には詳細な地形、重要な地点や通常の行軍ルートが記されているだけでなく、時には魔物の活動の痕跡や危険エリアの推測が補足されることもある。
情報は行軍の基礎である。だが情報だけでなく、この装置自体にも興味を持つ騎士もいる。
例えばローエンだ。
「随分と複雑な装置だ。よくそんなに使いこなせるな。」敵の配置について定例の確認を終えた後、突然ローエンは褒め言葉を口にした。「大したもんだ。」
年齢は近いが、あらゆる意味で自分とは全く異なる名声を得る先輩から急に褒められ、ミカは取り乱しながらも少しの嬉しさを感じた。
ローエンは興味深そうに多くの質問を投げかけ、ミカも技術者以外の騎士と自身の測図装置について話す機会は滅多になかったため、いつの間にか二人は打ち解けて話し込んでいた。
「ああ、こんなに効率のいい装置があるなら、敵が集まってるエリアもたくさん知ってるんだろ?」「そういや、普段どうやって手入れしてんだ?交換用のパーツはあるのか?」
…もしかすると、この「名を馳せている」先輩は、噂で聞くほど恐ろしい人ではないのでは?
ミカは熱心かつ詳細にすべての質問に答えた。ローエンも目を細めて頷き、知りたいことは黙々と記憶に留め、興味のない内容は忘却の彼方に追いやった。
そんなやり取りを何度か繰り返すうち、ミカは次第に察知するようになった。ローエンが念入りに質問してきたエリアはどこも、数日後には決まって沈静化するということに。
ローエンの体にたびたび増える傷と、彼の頻繁な短時間の失踪を結びつけると、もはやこれらを「偶然」の一言で説明するのは困難だった。ミカはほどなく不安な結論に至った——自分の測図の成果が、ローエンによって何らかの極めて危険な形で「効率的」に利用されている。
ミカは慎重を期すため、ローエンに渡す図面から、作戦とは無関係な魔物の拠点の一部を省略し、質問に対しても段々口ごもるようになった。
「えっと…詳細はすべて報告しました!」「や、やっぱり大団長の指揮に従いましょう!」
ミカがはぐらかすと、ローエンもそれ以上追及することはなかった。ただ意味深な笑みを浮かべながら、時折視線をミカが胸に抱えた測図装置に落とした。
それ以降、ミカは測図装置の管理に細心の注意を払うようになった。席を離れる前にはしっかり冊子をしまったか、資料を引き渡す際はページが揃っているかを繰り返し確認した。まるで誰かが背後から冊子を狙っていないか心配するかのように、少し歩くたびに振り返ることすらあった。
だがそれでも、ローエンの行動はさほど制限されることはなかった。ミカが隠そうとしている情報をとっくに熟知しているかのように…まさにマジックのようだった。
遠征軍の騎士たちと焚き火を囲んだある夜まで、ミカはどれほど考えても理解できずにいた。
エックベルトが覚えたてのフォンテーヌのマジックを披露して場を盛り上げようと騒いでいたが、ひどく酔っていたせいで、不運にもタネを明かしてしまった。
「大胆なすり替え」の大マジックをするつもりが、誤ってほぼ同じ二枚のカードを、早々に観客の前に晒したのだ。
マジックの原理自体は簡単なものだ。偽装した偽のカードと観客が選んだ本物のカードを密かにすり替え、偽のカードで観客の視線を引きつけ、そのごくわずかな時間差で本物のカードに細工を施すだけのこと。残念ながら、始まる前に終わってしまったが。
会場が笑い声に包まれる中、ミカはわけもなく、以前ローエンが自分に尋ねたある質問を思い出していた。
——そういや、普段どうやって手入れしてんだ?交換用のパーツはあるのか?
その瞬間、過去の些細な出来事が突然鮮明になった。なぜか減っていた予備のパーツ、たまに故障して開けなくなるページ…
まさか、知り合って間もない同僚をどうからかうか画策する人なんて、いないでしょう?
まさか、表面上は熱心に質問するようで、裏では妙な悪巧みをする人なんて、いないでしょう?
まさか、自分が瞬きをした隙に「偽・測図装置」と本物をすり替え、情報を写し終えたら大胆にもまたすり替えて元に戻す人なんて、いないでしょう?
そう考えた瞬間、ミカは突然鋭い視線を感じた。まるで狩人に狙われた小鳥だ——うつむくミカがとっさに前を見ると、人混みの中で笑うローエンが立っていた。誰かに視線を向けている様子はない。
その笑い声は、ある意味では誠実とさえ言えるほど爽やかだった…そこには、初めて自分に親しげに話しかけてきた時と同じように、偽りを感じなかった。
神の目
いかにして「隊長クラスの力」を手に入れるか、ローエンは以前から深く思考を巡らせていた。
言うまでもなく、隊長は強力な魔物を正面から迎え撃つ実力を備えているべきであり、怒涛のごとく押し寄せる敵の大軍も一人で片付けられるべきだ。
破壊力と持久力を兼ね備える——ファルカがそうであるように、西風騎士団史上最年少の隊長もそうだった。
だが、遠距離武器を使用する第5小隊にとって、破壊力と持久力の追求は矛盾に満ちているように思える。
強大な破壊力を得ようとすれば、より高い張力を持つ強弓と、より重く貫通力に優れた大型の矢が必要になる。
だが彼であっても、重い矢を大量に持ち歩くことはできない。矢が尽きれば早急に陣形の後方へ下がり、態勢の立て直しと補給をしなければならないのだ。このような戦法が、継戦能力に与える影響は言うまでもない。
ましてや、そもそもローエンは前線から後退することを好まない。なにしろ、最前線に身を置いて敵と対峙することこそが、彼の渇望する戦いなのだから。
では、その二つを両立させる方法は存在するのか?若き騎士は深く考え込んだ。
「もしかして…方法はなくはない…のか?」
ふと、ローエンは演習の観兵式の準備に追われる騎士たちに目をやった。彼らの傍らには、束ねられた儀仗用の長槍が輝いている。それはまるで、運ばれるのを待つ巨大な矢のようにも見えた。
「もしかして、放った後でも何度も回収できる矢を探せばいいんじゃないか?」
「もしかして、射る必要すらないんじゃないか?」
「接近戦なら、もっと破壊力が増すか?敵の『痛覚』をより強烈に刺激してやれるかもな。」
……
十数日後、騎士団の定例演習が予定通り行われた。だが今回は、わずかに普段とは異なる点があった——遠距離小隊の陣形の中に、一本の長槍が紛れ込んでいたのだ。
この長槍の突撃はあまりにも速すぎたため、その持ち主は敵役の騎士に何重にも囲まれてしまった。
「大団長、本当に彼を第5小隊の副隊長に任命するつもりですか?」遠くで演習を見守るサイモン枢機卿が疑問を口にした。
「ああ、そうだ。見てみろ、ローエンと遠距離小隊の他のやつら、うまく連携できてるだろ?」
「あれのどこが連携だというのですか。見えるのは、やたらと目立つ生きた的だけです。すべての敵と味方の遠距離火力が、その的に集中しています。」
「ははっ!心配ないさ。ほら、どう見ても遠距離小隊の攻撃がより効率的になったじゃないか!それに、ローエンだってまだ倒れてない。つまり、この戦法は採用の価値ありってことだ!」
どこがですか!?——サイモンは本来そう声を荒げて反論したかった。だが否定するには、彼らの戦績はあまりにも輝かしいものだった。
……
あの日、誰もが願いを叶えた——あるいは、何かを得たと言うべきか。
第5小隊は副隊長を迎え、遠征軍は『前線制圧官』を得た。多忙なサイモンは一日だけ「特別頭痛休暇」を取得し、ファルカは酒の肴になる「サイモンの笑い話」を仕入れた。
そしてローエンは新たな戦闘と生活のスタイル、さらに任務の遂行に多少は役立つ…「ガラス玉」を手に入れたのだ。