バルバトス
風神の名。吟遊詩人の姿で現れる
モンドを解放した風神。今は吟遊詩人ウェンティの姿で街をうろついている。
二千六百年ほど前、モンドはデカラビアンという魔神が嵐の壁で囲った氷の国だった。そこに立ち上がった奴隷たちの側に、風の力を持つ精霊がついた。壁は破られ、王は倒れ、精霊は仲間だった少年の姿を借りて神になった。バルバトスの見た目が少年のままなのは、そのときの姿を今も使っているからである。
七神の中でいちばん統治しない神でもある。「自由」を掲げた以上、自分が上に立って命じるのは筋が通らない——という理屈で、国の運営を西風騎士団に任せて酒場にいる。怠けているように見えて、これはこれで理念に忠実な姿勢だ。
普段はふざけているが、モンドが本当に危ないときには必ず現れる。
一次資料での用例
15この言葉が出てくる場面
24風立ちの地の中心にある巨大なオークの木は、千年前にモンドを解放した英雄ヴァネッサが、高天に上った時に芽生えたものだそうだ。 ここ数ヶ月、木の下で休む人々は時折、風神バルバトスの物語を紡ぐ少年の歌声を聴くようになった。 神がまだいる他の国とは違い、モンドはバルバトスが去ってからかなりの時が経ち、残っているのは「七天神像」の姿だけだ。それでも、神の歴史は史書や聖典に書かれ、吟遊詩人たちに歌われる。 しかし、ウェンティが歌う「バルバトス」は、なぜか変わった冒険ばかりしていた。たとえば、氷の神の杖を盗み、代わりにヒルチャールの棒をその場に置くなど。 当然、風神を信奉する聖職者たちは、その詩に不満を抱くわけだが、問い詰められたウェンティの答えには、反省の色が少しも感じられない。 「どうしてそれが嘘だと分かるんだい?」 確かに、一番敬虔なシスターでも、バルバトスの千年前の出来事を全て知っているわけではない。不敵な笑みを見せたウェンティだけが、その歌の真偽を知っている—— うん、嘘だよ。酔っぱらって適当に歌っただけさ。
今から約2600年前、魔神戦争はまだ続いており、世界は七神の統治下に置かれていなかった。 当時の「モンド」と呼ばれた都市は暴風に包まれ、鳥一羽も通さなかった。狂風は鳴り止まず、城内の土地と岩を水のように粉々にした。 高塔の上に君臨する風の君王は「竜巻の魔神」デカラビアン。狂風に吹かれ跪いている臣民を睥睨し、その光景を従順と捉えた彼は、満足していた。 当時のウェンティは、北境の大地で咆哮する千風のうちの一つであった。 後世に「バルバトス」と称される彼は、その時は魔でも神でもなく、風の中に流れる微小な元素精霊で、「小さな転機と希望をもたらす風」であった。 かつてのモンドで、ウェンティはある少年と出会った。少年はライアーが得意で、一番美しい詩を書くことを目標としていた。 「僕は、鳥が自由に空を飛ぶ姿が見たいな」 風の壁の中に生まれ、青空と鷹、緑の草原を見たことのない少年は言った。狂風の音は彼の声をほとんど覆い隠した。 「友よ、一緒に見に行かない?」
風の城に生まれ、空を飛ぶ鳥を見たことがない少年のために、元素精霊ウェンティは鷹の羽根を集めた。 その後、モンドでは「自由」を追い求める戦争が勃発した。 ウェンティが持っていた羽根は、彼と共に反抗の戦いで孤高なる君王が死没するのを見届けた。 かつて、君王は臣民に苦しみのない温かい住処を提供した。死の直前までに、自分が臣民を愛するように、自分は臣民に愛されていると君王は思っていた。 勝利を手に入れたが、ウェンティがこの羽根を少年に渡せる日は来なかった。少年は抗争の中で、詩歌と青空、空を飛ぶ鳥、そして同じ風の壁の中に生まれた同士とのために、戦死してしまったから。 古い神の座が崩れ、新たな神が誕生した。風神バルバトスは、指先に流れる力を感じた。 この力の最初の使い道は、少年の身体を姿を借り、自分の形を作ることだった。 ——人の身体がないと、少年が大好きだったライアーをきちんと演奏できないからだ。 ライアーを奏で、神の風で氷雪を吹き散らし、山を一刀両断する。 新たなモンドを、自由の地にしよう、王のいない国にしよう。 そしていつか、とても素敵でロマン溢れる国になるはず… 「彼もきっとそんな場所で暮らしたいよね」 こうして、「新モンド」の幕が上がった。
モンドができてから1600年後、今から1000年前、モンドの「自由」はかつてないほどのどん底までに落ちていた。 バルバトスは己が暴君にならないよう、モンドを去った。彼は想像もしなかった。自由を授かった人の中から「人」の暴君が生まれるとは。 貴族による残虐統治がモンドに蔓延り、貴族は民の声を無視し奴隷制度を導入した。 1600年後、風神は再び「自由の都」に戻った。神は奴隷の少女ヴァネッサの願いに応えた。神と少女は共に貴族による統治を転覆させた。 ——以上のことは、現在の人なら皆知っているモンドの歴史である。 実は、この歴史の中に面白いエピソードがある。 闘争の中でモンドの民をまとめたのはヴァネッサであった。そして、貴族の兵士たちを寝返らせたのは「風上の密約」であった。 密約の内容は、売国の取引であった。上層部の貴族は風を裏切り、モンドの全てを隣国の岩神に売り込んだ。 この密約の最後の部分に、神々にのみ印す事ができる神聖なる印があり、その名は「岩王帝君」とあった。 奴隷を虐げてきた兵士たちは、自分が異国の奴隷になることを想像するだけで恐れた。 戦火が貴族を呑み込むことは、当時の誰もが想像できなかった。数年後、歴史学者はあの密約は偽物であったことを発見する。 ——実は、岩神にイタズラをしかけるために、ウェンティは密かに彼のサインを練習していたが、あの富と取引の神を欺くことはついにできなかった。使い道がなかったとっておきの技を、数百年後にやっと披露できたのだ。 めでたしめでたし。
「俗世の七執政」は「神の目」に期待していない。彼らはすでに偉力を持っている。 だが、バルバトスは人間の世界が好きで、「ウェンティ」の姿でモンドを気ままに歩くのが好きだった。彼は神に選ばれた者に倣って「神の目」に似ているガラスの珠を作った。 模造品の珠に特別な力はなく、元素力を導き出すこともできない。 だが、天空のライアーはそばになく、またウェンティはわざわざ普通のライアーを腰につけたくないから、ガラスの珠を「フリューリング」に変化する能力を追加した。
この小さなガラス玉は、バルバトス様がクレーを認めてくれたってこと…?うーん…クレーのどこを認めてくれたんだろ?自由なとこ?じゃあ、バルバトス様の期待に応えられるように、クレーはもっと自由にお魚をドカーンしたほうがいいかな…?
七神で最も古い一柱として、「岩王帝君」はすでに長すぎる時間を過ごした。 「岩王帝君」は今でも、魔神戦争が終わったばかりのことを覚えている。最後の七人の魔神は、それぞれ「神」の座に登り、「魔神戦争」の時代を終わらせた。彼らの性格はそれぞれ異なり、互いとの距離も離れているが、どれも「人類を導く」という責任を背負っている。 時代が変わり、七神の世代交代も少なくなかった。今となっては、最初の七神の中で残っているのは二名だけだ。「岩王帝君」とあの自由で快活な風神。 七神の中で二番目に古いのが自由で快活な風神、バルバトスだ。 2000年前、バルバトスが初めて璃月を訪れた時、「岩王帝君」は最初、この同僚は困っている、自分の助けが必要なのだと思った。 そのため、バルバトスが風から降りる前、岩の神はすでに出迎えの用意を済ませて、彼が口を開けば力を貸せるようにした。 しかし、風の神は彼に酒を渡した。 「これはモンドの酒だけど、君も飲んでみる?」 ——酒を渡すために己の責務を放棄することは、岩の神には理解できないことだ。 しかしその後、風神は何度も訪れ、璃月港を巡り歩きながら、様々な質問を彼にぶつけた。この風神の好奇心は彼の手にある酒と同じで、終わりがないのだ。 その時から、あの時代の七神はよく璃月で集まるようになった。 今でも「岩王帝君」は、あの時の酒の味を覚えている。 世界は変わり続け、馴染みのあるものは徐々に消えていく。七神の世代交代も続き、酒の席にいた七人は二人になった。 最初七神の「人類を導く」という責務も、新たに就任した神に重視されなくなりつつある。 3000年余りの時間は、丈夫な岩をも削る。 風も、彼のそばを訪れなくなった。 ある小雨の日、古の帝君は璃月港を歩き、商人が部下を褒める言葉をたまたま耳にした。 「君は君の責務を果たした。今はゆっくりと休むがいい」 …… 賑やかな人の群れの中で「岩王帝君」はその足を止めた。 「俺の責務は…果たされたのだろうか?」 神はそう自分自身に問いかけた。
風神ブットバースの加護か?いや待って、バルバトスか…
オレの故郷モンドでは、ほとんどの人が風神バルバトス様を敬っている。しかし稲妻人の将軍様に対する態度は違う。なんと言うか…敬愛と感謝以外に、恐れもあるように思う。
この自由な都市では、皆がそれぞれの生き方をしている。穏やかで平和的な生活を好む人もいれば、リスクと隣り合わせの冒険を好む人もいる。ダリアはどうかというと、朝の祈りを捧げる時に「自分がトラブルに巻き込まれますように」と願う人だ。 西風教会の助祭、聖歌隊のリーダー、そして神の加護を受けし者でもあるダリアは、神のお告げを聞くことができると言われている。人々が重大な問題に直面し、神の導きを必要とする時、ダリアは朝の祈りを執り行い、代弁者としてバルバトスに問いかけるのだ。そして彼の問いかけは、しばしば神からの回答を得られる。 なぜ彼が神に愛されているのか、人々の間では様々な憶測が飛び交っている——「高潔で人助けを厭わない人格者だからだ」、「蒲公英酒のように人々を魅了する歌声のおかげよ」、「実は占いの力で、未来を予測できるからとか…?」 だが、ダリア本人に尋ねたとしたら、彼は目をぱちぱちと瞬かせて、いたずらっぽい笑顔でこう答えるだろう——「私がお節介焼きで、神様の代わりにトラブルを解決できるからかもしれませんね。」
助祭になる前から、ダリアは面白さを日々求めていた。 まるで鋭い嗅覚を持つ探偵のように、彼はモンド城内外の新鮮な噂を追っていた。どこで厄介な事件が起きたのか、誰がトラブルに巻き込まれたのか、彼はいつも真っ先に情報を手に入れ、あの手この手で首を突っ込もうとする。 親切だと褒められる度に、ダリアは笑って感謝の言葉を受け入れていた。ただ実際のところ、彼はトラブルを面白がっているだけであり、問題の解決はあくまでついでに過ぎない。 だが、長きにわたって平和を享受してきたこの国で起こる些細な事件だけでは、彼の好奇心を満たすことはできなかった。人々が抱えているトラブルの多くは「誰かが街中で喧嘩をした」とか、「酒代を払わず、ブラックリストに入れられた」とか、「猫がまた家から逃げ出した」といったものに過ぎなかった。 加えて、本当のトラブルが発生したとしても、騎士団の精鋭がすぐさま駆けつけてきて、元凶を切り伏せてしまうのだ。 今年に入ってから、迷子の子猫を見つけること十九回、そして道を占拠するスライムを討伐すること三十回。ダリアはそろそろ、自身の生活には本当の刺激が必要だと感じていた。 また新たな風が吹いた時、彼は蒲公英を摘んで手のひらに乗せ、バルバトスに新しい物語をもたらしてくれるよう願った。 風に乗ってくるくると回りながら、教会前の広場まで飛ばされてきた蒲公英の種が、風神像の指に止まった。 広場では、吟遊詩人がライアーを弾き、子供たちが白鳩に餌をやり、住民たちが神像の前で祈っていた。 この平和な光景の中で、ダリアは何か不穏な気配を感じ取った。 近くにいた二人のシスターが険しい表情で、ひそひそと何か話し合っている。ダリアが彼女たちにそっと近づくと、「失踪」や「緊急」といった言葉が聞こえてきた。 彼はこれまで何度もしてきたように、礼儀正しく二人に話しかけ、助けが必要かどうか尋ねた。 彼女たちは顔を見合わせた。一般人を巻き込んでいいものか、迷っているようだった。 ダリアは胸を叩いて、自分がとても敬虔な信者であり、教会の悩みを解決することは最大の名誉だと語った。 正義感に満ちた言葉を並べ立て、ダリアはようやくシスターから状況を聞き出すことができた。どうやら、とあるシスターが数日前から消息を絶っており、彼女の担当している仕事が遅れているらしい。 こうしてダリアは、自然な流れで「モンド市民の幸福」に関わる仕事を引き受けた。
シスターが言っていた仕事とは、教会の名義で住民たちからの手紙に返信することだった。この仕事は普段、教会のメンバーが交代で担当しており、今回はロサリアの番だった。しかし、彼女は城外での調査が忙しいせいで帰ってくることができず、返すべき手紙が溜まっていたのだ。 ダリアは深呼吸をして、キャンディーの包装紙をはがすかのように封筒を開けていった。 人々の悩みや心配が、雪崩のように彼に降りかかる。人には相談しづらい悩みが、余すことなく手紙に書き綴られていた。 ダリアはそれらを丁寧に読み進めた。幸いそのほとんどが、彼でも答えられる範疇の悩みであった。 ある少女は手の届かない人に思いを寄せており、第一歩を踏み出すべきか迷っていた。ダリアは「朧げな感情こそ、最も美しい。しかし、勇気を出して一歩踏み出した方が、甘い果実を得られるのもまた事実。どちらの選択も美しい。故に、己の心に従うのが一番だ」と返事を書いた。 ある商人は売り上げが平凡なせいで、家族にあまりいい生活をさせてやれないと愚痴を綴っていた。ダリアは「少しの利益でも、赤字よりかは遥かに良い。辛抱強く商売を続けつつ、新たな商機がないか注意を払っていれば、いつか商売を軌道に乗せることができる」と返信した。 ある学者は、旧モンドの歴史に疑問を抱いていた。ダリアは権威ある書物の記述を引用し、「真の歴史はバルバトス様に聞くしかない」と返事をした。 …… 三日目の朝、ダリアは相変わらず執務室で筆を走らせていた。するとドアが静かに開き、疲れ切った様子のシスターが入ってきた。その修道服は、泥や血のようなもので汚れている。 「数日前から行方知れずになっていたシスターですね。どうやら、なかなか大変な仕事をされているようで。」 「初めましてよね?仕事を手伝ってくれてありがとう。そういえば、ヴィクトリアは君の熱意を高く評価していて、教会に残ってくれるよう説得するつもりらしいわよ。」ロサリアは帰り道で耳にしたことを彼に伝えた。 だがダリアにとって、大聖堂のために問題を解決することと、大聖堂で働くことは全く話が別だった。後者は、困っている人々を助けるだけでなく、毎日多くの時間を祈祷に費やさなければならないからだ。代わり映えのしない日常など、ダリアからすれば敵でしかない。 彼はすぐさま椅子から飛び上がり、「私が人々を助けるのは自己満足のためなので。君が帰ってきたなら、私の仕事はここで終わりです!」と言い残し、慌てて部屋から出ていった。 ロサリアはそれを止めようとはせず、彼が「風」のように去って行くのを見送った。 机に積み上げられた返事を読み終えた彼女は、ダリアの住所を聞いておかなかったことを後悔した。 また自分の手紙当番が回って来るまでに、彼の住所を突き止められるといいのだが…
ダリアにはお酒に強い友人が数多くいるが、その中でも一番の酒豪はウェンティである。 初めて会った時、ウェンティは酒場で独り存分に酒を楽しんでいた。目の前のテーブルが、空の酒瓶で溢れていたほどだ。 その吟遊詩人らしき格好を見て、ダリアは彼のことをお酒で現実逃避をしている失意の芸術家かと思い、隣で一緒に酒を何杯も飲んだ。 ダリアは詩人の悩みを聞き出そうと、遠回しに何度も質問を投げかけた。新しい詩がなかなかできない?観客の反応がいまいち?それとも収入が減ってしまった? ところが、詩人は二十八杯目のリンゴ酒を飲み干した後、興奮しながらこう嘆いた—— 今年は果物が豊作で、お酒の出来がとても良い。ただ、自分はお酒を飲みだすと止まらないため、さっき稼いだお金をあっという間に使い果たしてしまったのだと。 …どうやら単純に、酒飲みなだけのようだ。 彼の分の酒代も払うことにしたダリアは、美酒を何杯も注文して、二人で思う存分呑んだ。こうして、彼らは友達になった。 今回、ダリアはお酒を手に、ここ数日の出来事を語るためウェンティと城壁の上で落ち合った。 ウェンティは、なぜ教会から逃げ出したのかダリアに尋ねた。困難に直面した人は、まず教会に助けを求める。ダリアにとっては理想の環境なのではないか? ダリアは自分の幼い頃を思い返した。当時、彼は母親に連れられて、朝の祈りに欠かさず参加していた。しかし、彼にとっては退屈そのもので、椅子のひじ掛けに「作品」を残しつつ、毎日逃亡を図っていた。教会のメンバーになれば、こうした祈りの儀式から逃げられなくなってしまう。 それに、あのぶ厚い聖典を見るだけで彼は眩暈がした。 ウェンティは笑いながら彼に尋ねた。「もし儀式をもっと面白くする方法があるとしたらどう?例えば、風神のちょっとしたお手伝いをして、彼の内緒話を誰かに伝える、とか?」 ダリアがこんなにも理想的な依頼を逃すはずはなかった。 その夜、ダリアの心に秘密が一つ増えた。そして、バルバトスには信頼できる伝道師が一人増えた。
シスターたちがダリアとの唐突な別れを惜しむ間もなく、彼は再び教会に現れた。ダリアは自分がバルバトスの「神託」を教会に代わって住民に伝える、と語った。 皆は驚いた。神の意志を騙って詐欺を働く者は少なくないが、そういった手口の被害者はたいてい一般人だ。神に仕える者たちの前で、そのようなペテンを企てる者など、どこにいようか? ましてや、ダリアは「人助けを好む善人」として評判の人物である。シスターたちの意見は二つに割れた。 反対派は「神託を間違えれば教会の評判に傷がつく」と主張した。一方、支持派は「あくまでも神託は助言であり、外れたとしても住民に大きな影響はない。しかし有益な情報を見逃せば、大きな損失となり得る」と反論した。 利害を天秤にかけた結果、最終的に支持派が優勢となった。 そこでヴィクトリアは、ダリアの発言を記録し、朝の祈りで住民たちに神託を伝えることにした。数日後、それらの予言は次々と的中していった——種蒔きを促す神託が下されてから少しして、恵みの雨が連日降り注いだ。出航を咎める神託が下された日には、海に嵐が吹き荒れた。そして狩りを勧める神託が下された日、狩人たちはいつもの二倍収穫を得ることができた… こうして「神に愛された少年」の噂は教会内外に広がり、巷を騒がせることとなった。 ダリアも正式に教会の招待を受け、助祭の職に就いた。 ダリアが初めて朝の祈りを取り仕切った日、教会は噂を聞きつけた住民たちで溢れ返っていた。彼らは熱心に胸の内の疑問を打ち明け、神からの答えを待ち望んだ。 教会で最も古参のシスターですら、これほど教会が賑わっている様は見たことがなかった。以前であれば、こんなにも多くの人を集めようと思ったら、バーバラに教会でコンサートをしてもらうしかなかった。 「皆さん、落ち着いて。順番に質問してください。」 「朝の祈りの時間には限りがあるので、重要な質問から優先的に答えていきます。」 ダリアは順番に質問に答えていき、自分が次に朝の祈りを取り仕切る日付も一緒に発表した。 バルバトスのおかげで、朝の祈りの儀式は退屈なものでなくなり、人々が大聖堂を訪れる理由がまた一つ増えたのだった。
ダリアの楽譜集。そのほとんどは、古くから伝えられてきた風神を讃える曲であるが、最後のページには、手書きの楽譜が挟まれている。 この曲は正式な頌歌ではなく、聖歌隊の正式な活動で歌われたこともない。 この歌の起源は、たまたま行われた宴会だ。その日、ダリアは友人たちと夜が更けるまでお酒を飲んでいた。 すると友人の一人が、「助祭になったのに、こんなに遅くまで呑んでていいのか」と、ダリアに冗談で尋ねた。 ダリアは声を上げて笑うと、こう答えた。「風神様がこの土地に祝福を授けてくださったおかげて、私たちは美酒を醸造できるのです。つまり、美酒を楽しむことこそ、バルバトス様に対する賛美なのではないでしょうか?」 それを聞いた人々は次々と杯を挙げ、バルバトスに感謝を示した。演奏中のウェンティもそこからインスピレーションを受け、『美酒賛歌』を即興で歌いあげた。 演奏が終わると、彼は曲を紙に書き起こし、聖歌隊のリーダーに贈った。 ダリアは喜んでそれを受け取った。普段歌っている賛美歌は古く、似たり寄ったりな曲が多いので、新しい曲を作るべきだと彼はずっと思っていたのだ。帰宅後、彼はその曲を聖歌隊の演目に加えるために動いた。 しかし、多くのシスターに反対されたため、この案は泣く泣く見送られることとなった。ヴィクトリアは「バルバトス様が自ら頼みに来ない限り、この案は採用できない」とまで言い切った。 ダリアも意固地になったりはせず、そのまま諦めた。 しかし、ある年のブリュー祭において、ダリアは酒場でその歌を披露し、ウェンティが演奏を務めた。このパフォーマンスは、数日間続けられた。 そして、この曲は人気を博すこととなる。その数日間、道を歩いていると風に乗ってそのメロディーが聞こえてきた。
ダリア助祭の名は、まるで音符のようにモンドの街のあちこちで躍っていた。道端で日向ぼっこをしている猫でさえ、その名を聞けば「ニャー」と答えるほどだ。 彼に助けられた人たちは皆、笑顔を浮かべながら「ああ!あのダリアさんね」と答える。対して、見物の対象にされた人々は眉間にしわを寄せ、こう言う—— 「あのおせっかい小僧、そんなに偉くなったのか?よし、今度はこっちがあいつを見物してやる。」 ざわめく足音は教会の厳かな雰囲気に静められ、ステンドグラスの下では、助祭ダリアの自信に満ちた声だけが響いていた。彼の言葉は簡潔で分かりやすく、それでいて重みを帯びていた。 「それはおかしいんじゃないか?」ついに隙を見つけ出した者が野次を飛ばした。「そんなこと、聖典のどこに書かれているんだ?いくら探しても、引用元の節が見当たらないんだが?」 隣の住民が咎めるような眼差しを向け、親切な人が代わりにこう説明した。 「バルバトス様は自由な神様よ。表現を縛ることもしないはず…」 ダリアは咳払いをし、若干生き生きとした様子でこう答えた。 「風が望まぬ限り、風を握れる者はいません。今、風は人々の手を握っています。それでもなお、頑固者は風を本に閉じ込めようとしているようですね。」 これは些細なトラブルに過ぎなかった。彼に恥をかかせようとしていた者はその目的を果たせず、皆の刺すような眼差しの中、すごすごと帰っていった。 ダリアは帰宅後、本棚のてっぺんから分厚い聖典を取り出した。ふっ、と息を吹きかけると、聖典を覆っていた埃が光に照らされながら舞い上がった。ダリアは聖典を開き、一字一句、暗記できるまで何度も黙読した… 誰かが彼にそう求めたわけではない。ダリアは他人から向けられる疑いの目など、いつも通り胸を張って跳ねのけるつもりだった。 人々が信じようが信じまいが、彼はバルバトスの伝道師だ。バルバトスのことをよく知るダリアは、彼が厳しい規則や格言を残すような神ではないと分かっている。聖典の本質は、モンド人の史実の記録、バルバトスに対する賛美、豊穣に対する感謝、そして自由への渇望である。バルバトス本人について深く触れているわけではないのだ。 しかし、ダリアは今の自分がただの親切なモンド市民ではないことも理解している。彼は西風教会の助祭となることを選んだ。公の場での一言一行が、すべて西風教会とバルバトスを代弁する言葉となるのだ。今まで通り、機転の利いた返答で切り抜けることもできるが、教会と住民が真に求めているのは、そういうことではないはずだ—— 数日後、ダリアは再び朝の祈りを取り仕切っていた。人々は彼の態度が以前と違うことに気がついた。その所作には神聖さと威厳が感じられ、言葉遣いも荘厳なものになっていた。美しい詩のような言葉が彼の口から紡がれる。その明るい瞳は、大聖堂の天井から降り注ぐ柔らかな光のようであった… 朝の祈りが終わった後、ヴィクトリアは我慢できず、バルバトスから個人的な啓示を授かったのではないかと彼に尋ねた。 彼は顔を上げ、聖典の上に静かに置かれていた「神の目」を思い出した。その「神の目」は今、彼の服の裏に隠されている。 「勤勉な人にこそ、運命は味方するのかもしれませんよ?」彼は微笑みながらヴィクトリアにウィンクした。 彼にはもう一つ、口に出さなかった答えがあった——「自分が他人のために変わったから。」彼は己の力で、この世界をより明るい道へと導こうとしている。
初めまして、私はダリア——西風教会の助祭で、風神バルバトスの伝道師です。見ての通り、今は恐ろしいほど暇です。最近、何か困ってることとかありませんか?聞かせてください。思わず笑っちゃうかもですけど、ちゃんと手は貸しますから。
これって、とある神ならではの神託の伝え方だそうですね…自分たちの神様だからって肩入れするわけじゃないですけど…バルバトス様のほうが、ずっと優しいです。
モンドの人たちは、大きな困難にぶつかると、風神様に導きを求めます。そしてそんな時、シスターヴィクトリアは決まって私を朝の祈りの司祭として招いてくださるんです。なぜなら、私が質問すれば、必ずバルバトス様が答えてくれるからです。ふふっ、もしかすると、私って神様にかなり気に入られてるのかもしれませんね。
ずっと自分は風元素の神の目を授かると思っていたのに、まさかこんなに面白い結果になるとは…もしかすると、バルバトス様目線だと、私は彼の視線を必要とする迷い子には見えなかったのかもしれませんね。
ガイアは一番の飲み仲間です。たまに酒場の月間飲み放題プランでウェンティを楽しませてあげられるのも、彼がうまく取り計らってくれたおかげなんですよね。でもまあ、それを理由にガイアまで私にお酒をたかってきて…まあ、いいでしょう。なんたって私は、みんなに信頼されるバルバトスの伝道者ですからね。さぁ、風神様の名のもとに乾杯しましょう!
私がどうやって風神様に気に入られたのか、気になります?実は簡単なことなんですよ。モンド城の酒場について詳しくなって、定期的に「ある特別なお客さん」に一杯ご馳走してきただけです。あははっ、そんなに驚かないでくださいよ。実は私も、風神様の秘密を知ってるんです。でも、誰にも話したことはありません。だって、バルバトス様が言ったんですよ。秘密は守ったほうが、ずっと面白いってね。
助祭という立場はとても気に入ってます。それなりに悩みもありますけどね。たとえば…どうやって神託をそれらしく伝えるかってこととか。バルバトス様の啓示って、意外とシンプルで分かりやすいものが多いんですよ。でも、そのまま伝えちゃうと、ありがたみが少ないというか…みんながみんな、素直に納得してくれるとは限らないんですよね。だからこそ、私は神託に「神聖さ」を足して伝えてます。例えば…「めぐる風は天の露をもたらす…風神の子らよ、大地に汗を落とし、恵みを待つがよい」…これ、「急いで種まきしろ、もうすぐ雨が降るぞ」って意味なんです。でも、前者のほうがずっと神聖な啓示っぽいでしょ?だから、神託を受けた後は、それをどう伝えればいいか…いつも頭をひねってるんです。
風が通っていきましたね。きっとバルバトス様からの贈り物でしょう!
そのほかのゲーム内テキスト
40この「選択の自由」こそ、バルバトス様が望んでいるものだと思うわ…
バルバトス様はやさしい神様ですから。
君も忙しい人のようだね、いいと思うよ。努力の汗があると、よりバルバトス様の風を感じられるからね。
ありがとう…ありがとう、バルバトス様…
では。バルバトス様のやさしい風があなたと共にあらんことを。
でも多くの人々は、バルバトスのおかげで不幸や災いが自分に降りかからないのだと信じてる。
私がどうやって風神様に気に入られたのか、気になります?実は簡単なことなんですよ。モンド城の酒場について詳しくなって、定期的に「ある特別なお客さん」に一杯ご馳走してきただけです。あははっ、そんなに驚かないでくださいよ。実は私も、風神様の秘密を知ってるんです。でも、誰にも話したことはありません。だって、バルバトス様が言ったんですよ。秘密は守ったほうが、ずっと面白いってね。
「にゃ?」「モンドの多くの人は、トワリンと風神バルバトスの物語を知っている。俺たちも気になるんだ——トワリンの声って一体どんな感じなんだろうか?」 【特殊ルール】「トワリン」は凍結、スタン、石化に免疫を持つ。最初から天賦カード「破壊の風渦」を装備している。エンドフェーズ:味方の出撃キャラに「倒壊」を付与する。
…ちの地の中心にある巨大なオークの木は、千年前にモンドを解放した英雄ヴァネッサが、高天に上った時に芽生えたものだそうだ。 ここ数ヶ月、木の下で休む人々は時折、風神バルバトスの物語を紡ぐ少年の歌声を聴くようになった。 神がまだいる他の国とは違い、モンドはバルバトスが去ってからかなりの時が経ち、残っているのは「七天神像」の姿だけだ。それでも、神の歴史は史書や聖典に書かれ、吟遊詩人たちに歌われる。 しかし、ウェンテ…
ずっと自分は風元素の神の目を授かると思っていたのに、まさかこんなに面白い結果になるとは…もしかすると、バルバトス様目線だと、私は彼の視線を必要とする迷い子には見えなかったのかもしれませんね。
…バルバトス様、もしあなた様がこのことをご覧になったら…
バルバトス様とその風は、きっと毎日忙しいのよ。
モンドは風神バルバトスのご加護を受ける都市です。
と、とにかく怖かったです。バルバトス様どうかモンドを守ってください…
アルベド:「この島はモンドの山体から分離してできたものだ。ある強い力が山脈の一部を切り離し、この海域へと運んできた。このような形になったのは、その移動のさなか、山体が転倒したのが原因だ。」 アルベド:「実に面白い、これも風神バルバトスの傑作だろうね。」
「若き詩人が爪弾き歌う、声はまるで小川のせせらぎ。戦歌でも祈祷でもない歌は、星々の囁き、森を吹き抜ける風。龍のまぶたは微かに動き、その喉元で炎が唸る。」 ある日の夜、眠れなくて外を散歩していたら、バルバトス様に出会ってね。ボクにこの歌を歌ってくれて…とても気に入ったから、こっそり覚えたんだ…
…なくなかった。今となっては、最初の七神の中で未だに執政しているのは二名だけだ。「岩王帝君」とあの自由で快活な風神。 七神の中で二番目に古いのが自由で快活な風神、バルバトスだ。 2000年前、バルバトスが初めて璃月を訪れた時、「岩王帝君」は最初、この同僚は困っている、自分の助けが必要なのだと思った。 そのため、バルバトスが風から降りる前、岩の神はすでに出迎えの用意を済ませて、彼が口を開けば力を貸せるようにした…
ウェンティのバルバトスに対する理解を信じる。
バルバトス様に祈りを捧げるのなら、風が吹く時に願い事を言えばいいわ…
人々の幸せに満ちた心の声を聞ければ、バルバトス様もきっと満足してくれると思わないか?
…っとしたお手伝いをして、彼の内緒話を誰かに伝える、とか?」 ダリアがこんなにも理想的な依頼を逃すはずはなかった。 その夜、ダリアの心に秘密が一つ増えた。そして、バルバトスには信頼できる伝道師が一人増えた。
学者たちがドラゴンスパインに注目した時、彼らは過去の物語について不思議に思った——風神バルバトスとトワリンが協力してドゥリンを倒し、ここに長く眠らせたのなら…トワリンの爪は、一体どれほど鋭いのだろうか? 【特殊ルール】味方の支援エリアに「弥生七月」が最初から1枚存在するようになる。 【ヒント】「弥生七月」がフィールドにいる時、フィールドにある「聖遺物」のカードが多いほど、新たな「聖遺物」カードを使用する際のコストが低くなります。
モンドに来たばかりの頃、アルベドがボクをバルバトス様に紹介してくれたんだ。ボクみたいな存在は、気になるに決まってるからね。
バルバトス様を信仰するようになってから、たまに風の中で優しい囁き声が聞こえるんです。
今回の風花祭は、誰がバルバトス様に「風の花」を献上するのでしょう?
最近モンドでいろいろあったでしょう、だからバルバトス様に祈りを捧げてるの。
さすがバルバトスの信徒だね。
モンドの人たちは、大きな困難にぶつかると、風神様に導きを求めます。そしてそんな時、シスターヴィクトリアは決まって私を朝の祈りの司祭として招いてくださるんです。なぜなら、私が質問すれば、必ずバルバトス様が答えてくれるからです。ふふっ、もしかすると、私って神様にかなり気に入られてるのかもしれませんね。
ウェンティ先生は恐らく——そのテーマはもう語り尽くされていて目新しさがない、バルバトス様は気に入ってくれないと思っている、だろ。
「恐らくこの島全体がモンドの山脈の一部だった。リサも言ってたように、バルバトス様はモンド城をより住みやすくするため、神の力でモンド周辺の地形を変えた。余分な山体を切り落とし、この海域へと放ったと言われている。山体はその移動中に裏返り…今の姿になったというわけか。」
遠慮するなよ、さあ、バルバトスの民ならみんな家族だ…
「ハンス·アチェボルド」?目の前にいる人の元の名前を静かに口ずさみ、風神バルバトスは柔らかな風を起こした。ハンス·アチェボルドと呼ばれる冒険者が亡き友の魂を風神に捧げた時、何万回も名前を呼び合ったその旧友が、自分に手を差し出しているのが見えた…
ほら、私って超すごい吟遊詩人なんだから。たぶんモンドの歴史上…バルバトス様を除けば一番の…とにかく、すごくすごい吟遊詩人なの!
…バルバトス様の気配がする花、みんなの心を癒してくれるかもしれない…
バルバトス様ありがとう…
へへっ、それじゃ、あたしは歌詞にこう書くにゃ——酔っぱらいさんは、みんなバルバトス様に厳しく罰せられる!って。
…バルバトス様はもう私たちの近くにいるかもしれないわね。
でも、モンドの風が止まない限り、バルバトス様は私たちと一緒にいると信じているわ。
バルバトス様がみんなを守ってくれてるように、フローラもお花たちを守るよ。
…。 ——それは、「物語」ではなく「歴史」に問うべきだ。 ごく稀に、しつこい問いかけに心底うんざりして、城壁の外に広がる広い荒野を指差す者もあった… ——詩人が、バルバトスしか知らないことを知るわけがなかろう! …… 数年後、ファルカはついに新世代の「伝説の騎士」、「物語の主人公」となった。同時に、ようやく吟遊詩人たちの苦悩を理解した。 現実では細かく追及されないようなことも、物語においては追及する必要がある…