キャラクター詳細
璃月の伝説では、かつて謎めいた白馬の仙人が存在したとされている。
その痕跡は様々な書籍や民話に残されているが、彼女がどのような人物であったかは、言い伝えごとにまったく異なっている。
彼女が白馬の姿を取って、魔神戦争で岩王がこの世の大権を握る手助けをしたという説…
琥珀色の瞳を持ち、果てしない時の流れを見通す力があったという説…
また、実は月に住んでおり、人々の願いに耳を傾けながら、世の繁栄を見守っているという説など。
この仙人については多くのことが語られているが、彼女の姿を明確に描写できる者は誰一人としていない。
お茶の間の世間話も、長々と書き記された考証も、全貌を把握する手がかりには成り得なかった。
しかし、「神獣の残せし一本の羽、鳥の残せし雪上の足跡の如く」という言葉があるように、
彼女の過去は、この世に確かな足跡を残した。そして彼女の物語もいつか、誰かによって掘り起こされる日が来るだろう。
キャラクターストーリー1
ほとんど知られていないことだが、璃月に伝わる白馬の仙人の逸話は、この仙人の終焉から始まっている。
元々、彼女は高天の使者であり、数千年前に人々を導くため現世に降り立った。
彼女は水晶と宝玉の産地として栄えた古国「琅玕」を守護し、人々に農耕と機織りを教えた。その導きにより、国民は五穀豊穣に恵まれ、倉には余るほどの蓄えができた。
そのため、彼女は古国の人々から、社稷神として崇められていた。
彼女の導きのもと、琅玕は統一文明の中でも一際輝く宝玉となった。
しかし、世は移ろうもの——世界の外から予想だにしなかった大災厄が襲来し、空の上では凄惨な大戦が勃発したのだ。
その余波は漆黒の悪意を纏って琅玕へと墜ちた。それを受け、高天はこの国の一掃を決意したのである。
神聖なる意志が天罰のごとく輝かしい古国を襲い、汚染された大地を滅ぼさんとした。
自身が庇護する人々を救うため、兹白は一縷の望みをかけて、高天の意志に背いた。
その結果、彼女は神魂が三つに砕け散るという重傷を負い、それが人の世の願いに応える最後の機会となった。
しかし、それは慈悲なのか、背信者への厳罰なのか——高天から兹白を見つめる影が、彼女に手を差し伸べたのである。
それ以降、兹白の砕け散った三魂は、消散する寸前、千万分の一秒という刹那に留め置かれることとなった。
そして彼女の本質は、真の死にも生にも辿り着けない夢の中を、永遠に彷徨い続けることとなった。
キャラクターストーリー2
かつて月の使いとして人間界に降り立った時、兹白はある神秘的な人物と出会った。
その者は人の姿こそしていたが、風貌からして只者ではなく、雲に乗って空を駆け、山を動かして海を埋め、岩を震わせ不壊の宝玉すら砕くことができた。
それほどの神通力を持ちながら、天の使いの一族ではないことに、兹白はひどく驚いた。
ある日、二人は山で仙法を磨き合う約束をしたが、時間になってもかの人物は現れず、ただ天の果てから轟音が響いていた。
兹白が音を頼りに進んでいくと、雲の間に似た姿をした三つの人影が見えた。その者たちは、どうやら戦いの最中らしい。
刃と刃がぶつかり合う中、彼女は雲の間から「岩主天星」という声が聞こえた気がした。
しばらくして戦いは終わりを迎え、三つに分かれていた姿が一つに戻り、兹白の前に降り立った。それは紛れもなくあの友人だった。
兹白が今目にした光景に強い興味を抱いていることを知ると、その人物は惜しげもなく教えを授けてくれた。それは「三尸斬り」と呼ばれる古の技なのだという。
「三尸」とは、修行者の心に潜む邪念や悪しき欲望のことであり、三尸を断ち切ることで、澄み切った自我を見出すことができるとされている。
しかし、高天と三つの月の使者である兹白は、心に妄念を抱いたことなど一度もなく、どうやっても三尸神を切り離すことができなかった。
友人はただ平然とその様子を見つめ、「天心は定まらず、白雲は移ろう」とだけ言い残して静かに去っていった。
その時の彼女はまだ知らなかった——人類を導く長い旅路の中で、自分がどれほど人間の感情に染まっていくことになるのかを。
そしてさらに遠い未来、自分の大切な国に天罰が下る様を目の当たりにし、憤懣、恐怖、憂鬱が、骨にまとわりつく蛆虫のように、彼女の神魂を蝕んでいくことを。
そうなった時、彼女は自らの三尸神を断ち切るだろう——自我を捨てて人世に潜み、高天に復讐を果たす切り札とするために。
しかし、「天心は定まらず、白雲は移ろう」という言葉の通り、その時こそ、兹白をずっと見守ってきた影が、慈しみと断罪を兼ねた檻に彼女を捕らえる瞬間なのだ。
キャラクターストーリー3
…3…5…7…
時が固まった虚無の月の中で、万物は流れを失ったかのようだった。
…53…59…
けれど、時が本当に止まっているわけではない。あまりにも流れが緩やかで、ただ知覚できないだけ。ここでは俗世の一日が、百年に相当するらしい。
…151…157…167…
そう、ゆっくりとだが時間は流れている。そうでなければ、脳裏に刻まれた思い出が、何によって摩耗したのか説明がつかない。
557…
兹踞。
563…
琅玕。
569…
人々の面影。
これはどういう意味?どうしても、忘れたくない気がする。
けれど、どういう意味なの?どういう意味があったというの?
…1553…
あそこの光は灯火?何度も見たことがある気がする。
誰かが何度も言っていた。あれが家への道だと。
いつか必ず故郷に帰れる…それだけは絶対に忘れてはいけない。
…1567…
家とは何?
…3557…
この数字たちは、なんて孤独なのかしら。一を除けば、そこにあるのは自分だけ。
…3559…
ああ、私は自分を数えていたのね。
名前を忘れようと、自分が存在していることは忘れないでいられる。
忘れないわ。
16127…
私は何を数えているの?
…3…5…7…
キャラクターストーリー4
璃月の仙話に登場する白馬の仙人は、実はほとんどが兹白の切り離した下尸神「兹蹻」である。
軽策荘の老人たちが語る「岩王帝君と共に戦った白馬」とは彼女のことだ。
沈玉の谷の民が語る「時の娘」も…
「八奇煉桃都」にある「金目乗黄月駒」も…
盧氏の族譜に記された「五百年もの時の隙間を飛び越えた」白馬の仙人も、彼女のことである。
魔神戦争の時代、彼女はすでに岩神によって「詹諸呑月」の絹絵の真跡から解放され、共に戦うという契約を交わしていた。
ただ、彼女の身に刻まれた時間の痕跡は、古き岩神に不思議な影響を及ぼし続けた。
そのため魔神戦争の後、自身が脅威となることを知った兹蹻は山林に身を隠し、それ以来、人前に姿を現すことはなかった。
だが、彼女は自由気ままな性格で、人前で神通力を披露するのが好きだった。人の寿命は百年にも満たないため、時間の痕跡による摩耗を受けることはほとんどない。
そのため彼女は時折、助けを必要とする人の前に姿を現した。彼らを救いながら、天地が崩れ去る前の物語をそっと伝えていきたいという密かな思いを抱いて。
だが、たとえ後世の人々が書き記した物語が彼女の意に沿うものでなかったとしても、彼女はちらりと目を通すだけで気に留めはしないだろう。
彼女はいわば人気のない荒野を自由奔放に駆ける野馬のような存在。誰も彼女の自由な足取りを縛ることなどできないのだ。
彼女は兹白の消滅から生まれたが、兹白や誰かの手綱に繋がれるべきだとは一度も思わなかった。
いつでも時の果てへと颯爽と飛び込み、「ポン」と音を立てて金色に輝く塵となって消える覚悟はできていた。
キャラクターストーリー5
最初の予期せぬ大災禍と同じように、兹白の運命が再び変わるきっかけもまた、天より降りてきた。
金髪の旅人とその仲間たちの協力により、真実の月がテイワットに再び降り立ち、兹白の本質を閉じ込めていた偽りの月も崩壊を始めたのだ。
そして旧友の助けを借り、兹白の摩耗し、眠り、そして自由気ままに過ごした三つの魂の根源は、再びこの世に姿を現す時を迎えた。
これらはすべて、兹白を見守る影によって予見されていたのだろうか?そしてこれらはすべて、最初の天の使いが見届けた現実となったのだろうか?
いずれにせよ、古国の導き手は無数の願いの呼び声の中、ついに故郷へと帰ってきたのだ。
たとえ、その土地がかつての面影を失っていたとしても…人々が新たな神を祀り、灯火の儀式は様変わりし、彼女にまつわる物語さえ別物になっていたとしても。
だが、彼女は知っていた——かつて彼女が庇護した人々は、輝かしい文明と共に途絶えたわけではない。むしろ、故郷の地で根を下ろし、枝葉を広げ、日々姿を変えながら今日まで受け継がれてきたのだ。
かの旧友も言っていた。かつて存在した琅玕の宝玉の一つが、今日ある璃月港の礎でないというのなら、どうしてこの地は「岩間の琉璃」や「雲間の月」と呼ばれているのか。
今、彼女に不満なことなど何もない。かつての抑えきれぬ怒りさえも、姿を潜めている。
彼女の努力はすべて報われ、故郷にも帰ってこられた。それだけで十分だ。
それだけで、彼女の経験してきた苦難がすべて報われるように思えた。
千里山河図
今の兹白には、璃月のすべてが懐かしくも新鮮に思えた。
そこで、神魂が安定しているうちに、彼女は璃月の美しい山河を隅々まで巡った。
軽策山では、山間の滝が飛沫を上げながら流れ落ち、再び清らかな泉となって流れる様を…
孤雲閣では、高い空、吹きすさぶ風、そびえ立つ岩の槍が描く雄大で揺るぎない景色を目にした。
宝玦の口では、今なお残る玉玦の下に点々と浮かぶ漁船と、山間で歌う人々を…
絶雲の間では、神秘的な霧が立ち込めた、まるで雲上の水郷のような、まるで天に広がる海のような景色を目にした。
……
古国琅玕に絹絵の技を伝えた天の使いとして、彼女は数千年も使っていなかった技を再び振るうことにした。
壮麗な景色に出会うたび、彼女は目の前に広がる山河の美景を仙力で絹布に縫い付けていく。
時が経ち、その絹絵に描かれた山河は千里にも及ぶ、壮大で絢爛なものとなった…
暇な時、兹白は絹絵を取り出して眺めることを楽しみとしており、見れば見るほど顔をほころばせ、得意げな笑みを浮かべている。
その様子を見た岩王帝君はその絵に興味を持ち、何度も見せてほしいと頼んだようだが、未完成だという理由で断られ続けたらしい。
彼女が絹絵を完成させた時、この山河が縫い込まれた図巻はどれほど壮大で趣深いものになるのだろうか。
月の輪
同族の者たちと同じように、兹白もまた本来は神聖なる計画のもとに生まれた存在である。
そうして彼女は天命を帯びた姿で、テイワットの空の下に現れたのだ。
空に輝く星はこの世界を愛し、幸福な花園に作り変えようとした。そして使命を悟った使者は土を耕し始めた。
土が肥沃なら、草花は生い茂る。土が腐れば、花園は悪臭を放つ。
幸せな花は、力強く差し込む朝日の中で咲き誇るもの。
偉大なる愛を冒涜せぬよう、悪臭を帯びた花は土と共に取り除かねばならない。
兹白の運命は、そうした神聖な計画の中で巡り続けていた。あの日までは…
理由は不明だが、王の影、時の者は月の印が刻まれた徽章を兹白の前に置いた。
これは、彼女がもはや暁の星の代行者だけでなく、月の使者にもなったことを意味していた。
これも神聖なる計画の一部なのだろうか…そうだ、きっとこれも世界を形作る一部のはずだ——彼女はそう考えた。
こうして彼女は暁の星、月、そして花園の間を往復するようになったが、徽章を受け取ることはなかった。
計画をより完璧なものにするうえで、新たな徽章をどう扱ったらよいか分からないし、それがなくとも自分の使命は果たせると考えたからだ。
しかし時が経つにつれ、暁の星と月が抱く花園への意志と愛は、必ずしも同じではないことに気付いていった。
暁の星の光は燦燦と花園全体に降り注ぐが、一輪の小さな花に長く留まることはない。
それに、神聖さに欠いた草花と土ならば、焼き尽くして純粋な虚無へと追いやることさえ厭わない。
だが、月の銀光は違う。土よりも、焼かれ傷ついた草花の一本一本の根茎に染み渡り、酷暑の後に慰めを与えることを望んでいるのだ。
一体どちらの意志と愛がより神聖なのか?兹白の心には時折、そのような疑問が浮かんでいた。
だが、答えはいつも明確だった。謎の答えはその命題の中にしかなく、神聖なる計画を揺るがすことなどないのだ。
だが、なぜだろう…兹白の視線は月光に誘われるように、自らが手入れしている小さな草花の茂みに留まるようになっていった。
花が咲くのは笑顔のよう、花が散るのは涙を流すよう。だが土は笑わない。土から生まれたものが、どうして悲しむというのか?
兹白はそう思いを巡らせながら、見つめ続けた…
花が咲き、散り、実を結び、落ち、新芽が吹き、また花が咲き、散り…
それから時が経ち、彼女はあることを耳にした。同僚が管理していた花畑が神聖さを冒涜したとして、すべて除去されたのだ。彼女は悲しみを覚えたが、すぐに不安が押し寄せた。
そう、天命には悲しみなど含まれていない。天命によって生まれた自分が、どうして悲しむことがあるのか?
まさか自分は、人に導かれるべき草花に成り下がったのか?自分が授かった意志と愛は、もはや神聖なものではなくなってしまったのか?
まるで、運命からの逸脱が始まったかのようだった。そして、それはあの瞬間が訪れたことで——空が崩れ去り、偽りが降り注いだことで、終わりを迎えた。
花園は焦土と化し、草花は今にも崩れ落ちそうだった。酷暑が彼女の意志を焼き、思考を整える力さえ奪っていった。
その時、月の徽章が涙のように彼女の背中へと滴り落ちる。
それは、彼女が目にしながらも拒んできた冷たい輝きであった。その輝きは花園の花々に注いできた静寂と慰めを彼女にも与えた。
一瞬の冷涼さの中で、彼女は思った——暁の星の灼熱に焼き尽くされるまで、愛する花々を億万年にわたって愛し続けることができるのだと。