錬金術師
「アルベドは、師匠の推薦状によりモンドに腰を落ち着けることができた」 これは一応事実である。ただ、モンド城はいついかなる時もあらゆる者を歓迎しているため、推薦状は大して重要ではなかっただろう。 むしろ、アルベドにしてみれば推薦状がなかった方が、モンド城の生活はもっと居心地の良いものになっていたかもしれない。 ——なぜなら、推薦状の受取人はかの有名な観光ガイドの作者アリス、アルベドの師匠レインドットの旧友だ。 アリスは推薦状を読み終えた後、しばし考えにふけった。 「レインが、君に実験室を用意してくれだってさ…でも、この規模になると一般市民じゃ手が届かないよね。うーん…あ、そうだ!」 こうして、アルベドはアリスによって西風騎士団へと放り込まれたのであった。 騎士団の仕事はアルベドにとって、実に楽なものであった。実力の5%ほどの力を出せば、騎士団の仕事は万事処理できてしまう。 つまり、それ以外の力は全て実験に費やせる上、騎士団の実験室や機材を好きに扱えるということだ。 ところが—— アリスには娘がいたのだ、名前はクレー。 …そう、あの「クレー」だ。 「今日から私たちは家族よ。この子のことは実の妹だと思ってあげて!」 それからアルベドは、クレーの後始末によって日々労力を費やしていくことになる。
ウェンティから授かった風に乗って、ドゥリンはトワリンに追いつき、一緒に風立ちの地の空へと飛んでいった。そして魔女が紡いできた物語は、ついに彼女が望んでいた章へと辿り着いた。 アリスは、魔女たちの集会に使われる大きなテーブルのそばに立ち、ドゥリンの遠ざかる姿を見つめていた。彼女はふいに、何年も前の魔女たちのお茶会に思いを巡らせた。当時は珍しく七人の魔女が全員揃っていたので、アリスは大いに喜んで、みんなでリレー方式で物語を描こうと思い立った。どんなテーマにするか決めかねて、作家のアンヤに相談すると、彼女はこう答えた。 「もし機会があれば、『消えない炎』の物語を残したい…あたしの思いつく中で、作家として最も崇高な目標だよ。」 「『消えない炎』?それって具体的にどういうこと?」 「その答えは、一人ずつ違うはず——お題にぴったりでしょう?かく言うあたしも、自分なりの答えを探してるところなんだ。」 アンヤは正面から答えることはしなかった。しかし、彼女が自分の作品でよく見せるような勿体ぶった態度は、かえってアリスの好奇心を掻き立てた。 「よし、そのお題にしましょ!これからみんなで集まるたびに、順番が回ってきた人が自分の担当する章を発表するの。うーん…最後の部分はアンヤね。この物語が終わるとき、きっとあなたも自分の答えを見つけられるはずよ。」 そうして、リレーは始まった。アリスは率先して物語の序章を担当し、小さな魔女が老魔女の試練を完遂するために、「消えない炎」を求めて旅立つ物語を書きおろした。 しかし、アリスにとって予想外の事が起きた——次に魔女たちが全員揃った時には、アンヤは棺の中で永遠の眠りについてしまっていたのだ…アリスは魔女集会が開催される間隔が、只人であるアンヤにとってどれだけ長いか、見誤っていた。彼女が次の物語に胸を躍らせていた間に、アンヤはどんどん年老いてしまっていたのである。物語が五巻目に達した頃、アンヤはこの世を去った。 アリスが始めたこの物語は、バーベロスが担当した第二巻とレインドットが担当した第三巻で完全に脱線したが、イヴァノヴナが担当した第四巻でなんとか軌道修正され、体裁を整えた。しかし、結局ニコが担当した第五巻では、一言で慌ただしく締めくくられることとなった。もうアンヤが用意していた答えを知ることは永遠にかなわない——そう思ったアリスは、ひどく残念がった。 転機をもたらしたのはオクタヴィアだった。アンヤとの別れは魔女会設立以来初のメンバー脱退となったため、普段は欠席が多い彼女も、書き上げた第六巻と共にこの集まりに参加した。第六巻は、物語の中の小さな魔女が、再び老魔女のもとへ戻る機会を手に入れる…という内容だった。 「『消えない炎』は、まだあるかもしれないよ。」 オクタヴィアの助言で、アリスはアンヤが残した最後の作品——二人で共に作り上げた「シムランカ」という世界に目を向けた。この世界では、ドゥリンという名の龍が、不安と迷いの中で来たる奇跡を待ち続けていた。アンヤは彼女の他の作品に謎を残したように、彼にも静かに燃え盛る炎のような可能性を残したのだ。物語の世界を照らすその炎は、アリスの好奇心を掻き立てた。その炎を見つめながら、アリスはかつてアンヤと交わした約束を思い出していた。 「彼女が担当するはずだった結末は、私が書かなくちゃいけないみたいね。」 そして時は流れ、アリスはあの龍を見守るようになった。そして、悪龍の名を背負ったあの子供が、皆からの祝福を受けて物語の世界から歩み出し、物語の外の世界で友と共に運命を乗り越えていく姿を——そして、ついに悪龍ドゥリンの物語を書き替え、トワリンと共に空へと飛び立つ姿を見届けた。 アリスはここまでの道のりに思いを巡らせ、いつの間にかアンヤの答えを得ていたことに気が付いた。 「アンヤ、担当した章の結末にも書いたけど、私はずっとあなたこそ私たちの中で一番すごい魔女だって思ってたのよ。」 「あなたはいつも自分は何も残せないって言ってた…でも、私は見届けた——あなたが残した、『消えない炎』を。」
ええ、モナとバービーは未だにあんな理由で会わずに、手紙だけでやり取りしてるの?まあ…理解はできるわ。あたしもレインドットが二十歳になるまでは、本人に会ったことがなかったもの。いつもアリスが、カーンルイア人は表に出るのが不都合だからって言って、手紙を届けてくれたわ。
「『アリスなしで、どうやってレインドットに太刀打ちできるって言うんだ…!?』みんなはニコの言葉を聞き入れようとしなかった。すると、ニコは前へと歩み出した…」
ええ、モナとバービーは未だにあんな理由で会わずに、手紙だけでやり取りしてるの?まあ…理解はできるわ。あたしもレインドットが二十歳になるまでは、本人に会ったことがなかったもの。いつもアリスが、カーンルイア人は表に出るのが不都合だからって言って、手紙を届けてくれたわ。
ええ、モナとバービーは未だにあんな理由で会わずに、手紙だけでやり取りしてるの?まあ…理解はできるわ。あたしもレインドットが二十歳になるまでは、本人に会ったことがなかったもの。いつもアリスが、カーンルイア人は表に出るのが不都合だからって言って、手紙を届けてくれたわ。
…容疑。友を救うため、パイモンと調査に乗り出すことにした。 紆余曲折の末に、黒幕の陰謀を暴き出した二人。なんと事件を仕組んだのは、雪山に墜ちた巨龍だった。同じく「レインドットの創造物」であるアルベドの存在を知り、嫉妬に駆られた巨龍が、彼を排除するために全てを画策したのだ。 仲間たちと力を合わせて、なんとか捜査は収束したものの、モンドには更なる脅威が迫っていた。雪山の「ドゥリン」が、復活の兆しを見せ始めたのである…
いや、レインドットが教えてくれたよ。「生死」は、たぶんこの世で最も強固な法則だって…
余計な話はここまでだ。アルベド、レインドット様の命令を受けて、君に伝言を届けに来た。
くそっ、この魔物たち、いったいどっから湧いてきたんだ?レインドットの仕業か?それとも深秘院か?
…がなかった方が、モンド城の生活はもっと居心地の良いものになっていたかもしれない。 ——なぜなら、推薦状の受取人はかの有名な観光ガイドの作者アリス、アルベドの師匠レインドットの旧友だ。 アリスは推薦状を読み終えた後、しばし考えにふけった。 「レインが、君に実験室を用意してくれだってさ…でも、この規模になると一般市民じゃ手が届かないよね。うーん…あ、そうだ!」 こうして、アルベドはアリスによって西風騎士団へと放り…
けど、実際はそれだけじゃない。白亜の申し子——五大罪人のうちの一人「黄金」レインドットが創り出した生命の奇跡、ホムンクルスでもある。
「『アリスなしで、どうやってレインドットに太刀打ちできるって言うんだ…!?』みんなはニコの言葉を聞き入れようとしなかった。すると、ニコは前へと歩み出した…」
ゴホッ、ゴホッゴホッ…レインドット様からは以上だ…疲れたな…ゴホッゴホッ…ゴホッ…
ゴホンッ…レインドット様からは以上だ。コホッコホッ。
レインドット様の命令で、伝言を届けに来た。
いや、ちょっと驚いただけ…レインドットおばさんはお母さんの友達で、かつてこの世界に存在していた「魔龍」の母でもあるんだ。
彼の主人はレインドット…
まあでも、レインドット様が残した「課題」をやり遂げたんだ。少しくらいは肩の力を抜いてもいいだろう。
よく分からないけど、気持ちは嬉しい。レインドットおばさんには感謝だね。
まさか…レインドットおばさんから…
レインドットの「プレゼント」
君とレインドット様が使った瓶や缶は、一匹の猫が片付けてるんだぞ。
レインドット様が誰かを気にかけるなんて、そうあることではない。君には期待してるぞ。
アリスは、レインドットの登場シーンのための魔法もデザインしているの。いろんなテンプレートを組み合わせたものらしいけど…美的センスの欠片もなかったわ。
「黄金」レインドットがアルベドに贈ったプレゼント。 新たな贈り物には、新たな問題が伴う。
実は、レインドットから伝言を預かってきたんだ。
ああ、そうだ。レインドット様が不要と言ったんだ。この術式は破棄しておこう。
レインドット様からの贈り物を机に置いたから、忘れずに受け取ってくれ。
オクタヴィアは帰ってこないし、ましてやレインドットなんて言うまでもないわ…魔女のみんなもそれぞれ事情があるから、しばらくはあたしが「課題」を監督するしかないの…
ああ。セバスも、ボクの師匠レインドットが造ったんだ。強いて言えば、ボクの「家族の一員」みたいなものかな。
彼はまだ「生まれたばかり」だが、既にレインドット様は彼が解決すべき「課題」を予見してる。
モンド城にレインドットの関係者がいるのか…あっ!まさか…
…いた間に、アンヤはどんどん年老いてしまっていたのである。物語が五巻目に達した頃、アンヤはこの世を去った。 アリスが始めたこの物語は、バーベロスが担当した第二巻とレインドットが担当した第三巻で完全に脱線したが、イヴァノヴナが担当した第四巻でなんとか軌道修正され、体裁を整えた。しかし、結局ニコが担当した第五巻では、一言で慌ただしく締めくくられることとなった。もうアンヤが用意していた答えを知ることは永遠にかなわない…
自由な足を得た駒は解放を得る。レインドットにならい、ちょっとしたサプライズをやろう。
まさか、レインドットの代わりにその子供が「錬金術」の部分を完遂してくれるなんてね…アルベドちゃんが頼ってきてくれた時は驚いちゃった。