一次資料 / 書籍
ホラガイの残響
この本、全部そのまま載せてあるぞ。写し間違いなんて無いからな!
巻
ホラガイの残響・1
この地に伝わる、ホラガイを手に話す子供たちが誰もいない荒れ地で起きた物語。今となっては、最初の作者が誰なのか誰もわからない…
「その手にあるホラガイをくれ。そうすれば、これ以上お前を困らせはしない」 焚き火のそばに現れたのは、端正な顔立ちの少年と、その取り巻きたちだった。彼は手の中の刃を弄びながらそう告げる。 人影の絶えた追放の地——少年少女たちが小声で「果ての地」と呼び合うこの場所で、彼らが夜を迎えるのはこれで三十回目だった。 木を伐り、草を刈り、果実を割り、そして邪魔者を排するために使われた刃は、もはや最初の鋭さを失っている。かつて彼らを力で支配しようとした大人たちは、その剣を鞘から抜く間もなく息絶えた。 今では、その鞘がどこへ投げ捨てられたのかさえ、知る者はいない。 「本当に、このホラガイが欲しい?」 ホラガイを胸に抱くのは、彼らの中でいちばん背の低い少年、皆が「チビ」と呼ぶ子供だった。 「ああ、そうだ」 「どうして?」 「そんなの聞くまでもないだろう?」と美しい少年は笑みを浮かべ、続けた。「これは『俺たち』が決めた掟じゃないか、チビ。そのホラガイを手にした者が、みんなに命令する権利を持つんだ」 そう、これは自分たちを奴隷のように扱う大人たちに抗うために、焚き火の前で交わされた子供たちの秘密の約束。 この荒れ果てた悲しみに満ちた土地で、追放者という身分を捨て去り生き延びるために。 子供たちは決めたのだ、仲間の中から一人を選ぶことを。自分たちと同じ子供でありながら、苦境を打ち破る力を持つ者を。力を恐れず、彼らの味方であり、知恵に富む者を。そして、ホラガイを手に入れ、みんなのリーダーに成り得る者を。 そのホラガイは、昼間の浜辺での労働の合間、大人たちの目を盗んで取ったもの。それはつまり、大人たちにも隙があるということ。 まるで「両親といえど全知全能ではない」と、子供がある日ふと気づくその瞬間のように。多くの子供にとってそれは幻滅の始まりかもしれないが、この地の少年少女にとっては、むしろ何よりの朗報だった。 しかし… 思い描いていた秩序は訪れなかった。むしろ、子供たちの中に残る「獣」としての残酷さが、抑えつける者のいない中でいっそう膨れ上がっていった。暴力ですべてを覆せるのなら、その力を持つ者が、すべてを奪わないはずがないのだ。 ホラガイも…そして約束によってホラガイが象徴したすべてのものが、強奪の対象となる。 「キミは、このホラガイにふさわしいの?」 「俺は一番の働き者で、一番成果を上げた。しかもこの剣は今、俺の手にある」 「それで、キミは僕たちの主人になるんだね?」 「もちろんそうさ。俺がお前たちの主人に一番ふさわしい」 「昔の大人たちみたいに?」 「別に…それの何が悪い?」 「そう…」チビはつぶやきながら、焚き火の炎を背にして立ち上がった。逆光で誰もチビの表情をよく見ることはできなかったが—— 美しい少年はなぜか、相手が笑っているような錯覚を覚えた。胸の奥に、妙な不安が広がる…この夜までは、何もかもがこの手にある剣のように、確実に自分の掌に収まっていると思っていたのに。 チビはホラガイを彼に差し出し、みんなに背を向けて密林の奥へと去っていった。 その夜を境に、ホラガイを持っていた少年の姿は忽然と消えた。それから彼を見た者は、誰一人としていなかった。 ゲーム内テキスト(1341文字)
ホラガイの残響・2
この地に伝わる、ホラガイを手に話す子供たちが誰もいない荒れ地で起きた物語。今となっては、最初の作者が誰なのか誰もわからない…
「君は、こうなることを最初から分かっていたんだね」 眼鏡をかけた少女が、その小柄な少年を見つけ出して連れ戻す。それを見た子供たちが、心配した面持ちで道を開けた。 その先には、端正な顔立ちの少年が重い荷を積み重ねて作った椅子に、力なく腰かけていた。青みを帯びた肌がその整った容貌をより引き立てている。唇は深い紫に染まっており、揺らめく炎の光は風に翻る妖しいヴェールのように彼を包んでいた。 外傷は見当たらない。にもかかわらず、その両手は垂れ下がっている。もう長いことそのままなのだろう。まるで石膏像のように硬直していた。 かつて彼が誇りとしていた剣が、そのそばに落ちている。 誰ひとりとして、それを拾おうとはしない。 「こうなることは分かっていたけど、こんなにも早いとは思わなかったよ」 小柄な少年は、その剣を拾い上げた。まだ硬さを保っているが、刃こぼれや歪みが幾つもあり、輝きを失っている。 少年は、この力をどう手入れすべきかを知らない。それでも、この力こそが彼の唯一の拠り所だった。だからこそ、剣が手入れを必要としていることを、他人に知られるのを恐れた。 やがて彼は猜疑心に囚われ、眠りは短く浅くなり、怒りやすくなった。大人たちが弱みを見せて倒れていったことを知っていたからこそ、自分も同じ過ちを繰り返すことを恐れたのだ。だが、その恐れがかえって自らを破滅の道へと導いてしまった。 多くの物語で必要とされるのは、結局ただ一つの我慢強さだった。 「いつから、この結末を予想していたの?」 「彼が僕にホラガイをくれと言ってきたときからかな」 「ホラガイを?」 「ホラガイなんて、僕たちが浜辺で拾ったただの玩具なのに。彼はどっちかを手放すべきだったよ。ホラガイか、それともこの刃こぼれした剣か。どっちも捨てずに両手が塞がってしまえば、剣を振るう動きも鈍くなっちゃうのに」 そのとき、一人の女の子がホラガイを大事に両手で持ち、みんなの間から前へ出て、男の子に差し出した。 ホラガイを持つ手には、縄で縛られてついた赤い痕が刻まれていた。 「君ならどうする?」と、メガネをかけた少女が彼に問う。 少年はそれを受け取り、まるで絵本の物語をなぞらうように吹き鳴らそうとした。だが加工もされていないそのホラガイから漏れたのは、くぐもった間の抜けた音だけだった。 そして、それに耳を当てる。ホラガイの奥からは波の音が聞こえた。 「僕たちはここに僕たちの町を作る。子供たちだけの楽園をね。このホラガイは、もう誰か一人のものではない。みんなが順番に掲げ、言いたいことを言い、望むことを口にできるようにしよう」 「でも、いつかは私たちも歳を取って、なりたくもない大人になっちゃうよ」 「それでも大丈夫。『明日』は必ずやってくるし、新しい子供もまた必ず生まれてくる。もし彼らが『僕たち』という大人を気に入らなければ、そのときは彼らがこの世界を壊せばいい」 見た目は平凡な少年。背は低く、小柄で、そして聡明な少年。 彼は、刃こぼれした剣を海へ投げ捨てた。 そして、ホラガイを子供たちの真ん中へと置くのであった。 ゲーム内テキスト(1293文字)