往生堂
璃月の葬儀屋
璃月の葬儀屋。胡桃が堂主を務め、鍾離が客卿として礼儀を取り仕切る。
璃月では死者の送り方に厳密な作法がある。往生堂はそれを守る側の家で、「生と死の境目を正しく保つ」ことを仕事にしている。
胡桃が明るく振る舞っているのは職業上の必要でもある。葬儀屋が沈んでいたら、送られる側も送る側も救われない。そして客卿として傍らに立っているのがかつての岩神だというのが、この店の一番の妙味である。
一次資料での用例
2この言葉が出てくる場面
24「往生堂」のあの先生か?たまにみんなから彼の噂を聞くけど、面白い人のようだな。うん、機会があったらあんたも彼と交流してみるといい。
あの小娘は今の往生堂の堂主だよ。ん?彼女をどう思ってるかって?…やり方に関しては噂話を聞いてもしょうがないよ。人を理解するには、相手の本当にほしいものを理解しなければいけないからね。
鍾離…「往生堂」に尊敬されているあの先生は他人の知らないことをよく知っている…彼の弱点を把握するまで、いくら優秀な駒とはいえ、まだ使えそうにないわ。
璃月の伝統において、「仙人を送る」ことは「仙人を迎える」ことと同じくらい重要な意味合いを持つ。 その璃月で、最も「送別」が得意なのは七十七代続く胡家の「往生堂」である。しかし「往生堂」の堂主、胡桃は、主に凡人を送ることを得意としていた。 仙人を送る儀式は、鍾離に託すことが多い。 仙人は璃月と共に長い年月を過ごしていたため、3000年にも及ぶ歳月の中、天に召した仙人は極めて少ない。そのため、伝統に関するしきたりは、紙に書くことでしか伝えることができない。あまりに間隔が空き過ぎているのだ。幼い頃に1回見て、死ぬ前にもう一度見れるようなものではない。 だが、最もしきたりに厳しく、古い伝統に夢中な学者たちでも、「往生堂」の送仙の儀式の失敗を見つけることはできない。 儀式の服装、儀式を行う時間、場所、道具、その日の天気、儀式の長さ、参加者の人数、職業、年齢などなど、全てが規則に則っているからだ。 人々が「博学多識」などと鍾離を褒めると、いつも彼は苦笑を浮かべこう返す、「ただ…記憶力がいいだけだ」と。
通常、キョンシーの体は冷たく硬いため、飛び跳ねるようにして動く。 普通の人に近い状態を保つため、七七はいつも柔軟体操をしている。 「往生堂」の七十七代目堂主である胡桃は、これをよく思っていなかった。彼女は七七と会う度に、熱心に提案する。「私に葬られた方が楽だよ」 もちろん、七七は葬られたくはない。そのため、彼女はいつも人気のない夜に、体を鍛えているのだ。 不死身の七七は、記憶力が一般の人よりも悪い。 記憶力の強化練習を常にしていなければ、3日も経たないうちにすっかり忘れてしまう。 だが、これはいいことなのかも知れない。苦痛な思い出を持つ人にとって、忘却は解放でもある。 七七にとって、現在最も記憶する必要がある人は…殴りたくなるような顔で、毎日彼女の目の前に現れる。 そのため、七七は特に「記憶力が悪い」ことを気にしていないのだ。
数百年後、琥珀に封印されていた七七は、やっと人々に発見され、埋葬するため「往生堂」へ送られた。 険しい山道を行く途中、琥珀はあっちこっちにぶつけられた。加え、長い年月の中で、七七の封印は今にでも解かれそうな状態であった。 ある夜、七七は完全に覚醒し、こっそり琥珀を打ち破り逃げ出した。 生前の習慣の影響により、七七は山森に向かった。 途中で偶然出会った薬舗「不卜廬」の店主白朮が彼女を引き取った。 白朮は医術に優れているが、誰でも救う聖人ではない。 しかし、たとえ七七の記憶力が悪く、薬材の分別に間違いがあっても、彼は七七を引き取ると決めた。 七七に対する寛容は、彼が個人的に追い求めているものと何らかの関係性があるらしい。 七七の動きは遅いが、頭の回転は遅くない。七七はとっくに白朮の狙いに気づいていたが、あまり心に留めてはいなかった。 経験し過ぎたのか、それとも孤独な時間が長過ぎたのか…たとえ、この「善意」の裏に何らかの企みがあったとしても、七七は彼を感謝している。
往生堂の鍾離殿か、すごい人物だってことはなんとなく分かる。悪党は人を殺し、ぼくら方士は妖魔を退治するが、彼は仙人を葬り去ることができるからな。
往生堂の手腕は信頼できる。でもあの「方士に心配される必要などない」と言わんばかりの人を食ったような笑顔を見ると少し腹が立つ…ふう、落ち着け落ち着け。
あの「往生堂」の先生、確かに博学多才で、尊敬に値するわ。それに彼の考え方は帝君に似ている気がするの…もし彼がもっと自分なりの見解を持ってくれたら、きっと私の力になるはず。そうなったら、彼をそばに置くのも悪くないわね。
昔、誰もアタイのロックを聞いてくれなかった。でもある日、「うちでやってみないか?合格すれば常駐の歌手として雇う」って急に彼に誘われてさ。やっとアタイの音楽を理解してくれるヤツが現れたって嬉しくてその話に乗ったんだけど。結局現地に行ってみたら、彼が葬儀業者の「往生堂」の客卿だったことを知った…どう考えてもアタイの音楽に合うわけないだろ、変なヤツだよ。
彼女、往生堂の堂主なのに、いっつも楽しそうな顔をしてんだよな、ちょっと何考えてんのか分かんねぇ。街中で会っても堂々とアタイに声を掛けてくるんだけど、「火遊びが好きな人は、商売繁盛のための保障ですね。」とか変なこと言っててよ…ちょ、ちょっと不気味だよな。
往生堂七十七代目堂主、堂中の全業務を仕切る少女。堂主という立場に居ながらも、少しも偉ぶることはない。 彼女のアイデアは、瑶光の浜の砂粒よりも多いと言われている。頭の中には様々な考えが飛び交っており、そのアイデアは他人を毎度驚かせる。 普段はじゃじゃ馬のごとく、あちこち遊びまわっている少女だが、葬儀を執り行い、無数の灯りに照らされた通りを歩く時だけ、彼女は厳かで重々しい一面を表に出す。
葬儀は、人生最後の舞台。 そして璃月の「往生堂」は、その終の演出を仕切る存在だ。 伝統的な葬儀には多種多様な仕来りがある——霊の守護、埋葬の方法、位牌に使う素材…すべての事柄に対して、厳しい掟が存在する。 亡くなった者の身分と貧富にかかわらず、彼らに見合った葬儀を行う必要がある。それが往生堂の信条だ。 これほど重要な組織の上に立つ者は、さぞ博識で頼れる人物なのだろう。 しかし、七十七代目堂主という重責を負う者は、胡桃というまだ幼さの残る少女だ。 常に奇想天外なアイデアを持つ胡桃は、璃月ではちょっとした有名人である。 3歳の時、逆立ちで有名著書を読んだり、6歳で学校をサボって棺桶で居眠りしたり、8歳で堂に篭り葬儀についての研究を行ったり… どう見ても、胡桃は「厳粛」とは程遠い性格だった。 そんな胡桃が初めて葬儀の指揮を執ったのは、十代の頃だった。 それは葬儀屋と客卿達の心を、絶雲の間の険しい崖の上まで鷲掴みするほど立派な葬儀だったという。
胡桃は商売を非常に重視しており、儲けを蔑ろにするようなことはしない。 「我々往生堂は、生きる者からお金を受け取り、死者を旅へと導く。二重の責任を負い、陰と陽の2つの世界の者を満足させる必要がある。」 往生堂の掟について、胡桃より詳しい者はいない。 日中、店を閉めている間は、葬儀屋の若い従業員に知識を蓄えさせるため、見識の深い客卿を講師として招いている。 「葬儀の伝統は複雑な学問であり、印象や習慣を基に理解すべきではない。」 大勢いる講師の中で、鍾離先生は一番敬われている存在だ。 胡桃は、たまに鍾離の古臭さをいじったりするが、実は最も信頼を寄せている相手である。 また胡桃は特定の葬儀形態にとらわれることなく、変化する顧客の需要に注意を払う必要があると思っている。 「客は様々な需要を持つ。例えば、死者を清く送りたい、賑やかに送りたい、裕福な客は見栄え良く送りたい等々。私たちが何をすべきか、どうすべきか、全て客の需要に依存する。」 胡桃が指揮を執るようになってから、往生堂の経営は安定し業績も順調だ。葬儀に対して良く思っていなかった住民も、段々と受け入れるようになり始めていた。 しかし、葬儀屋の若い従業員たちが講義を受けている間、胡桃はいつもどこかへ行く。 ただ彼女の行動には変わった点がまま見られるため、それがサボりなのかは判断しにくい。 月下の埠頭、山間の崖、一番高い所で後ろ手に詩をそらんずる者がいたら、それは胡桃のほかいないだろう。 胡桃は夜中にぶらぶらと出歩きながら、詩を口ずさむことを好む。思い立てば、どこにいようが即興で詩を詠むのだ。 華光の林で休憩する商人がいたら、椅子に座って楽しんでいる謎の少女と出会うかもしれない。 四人じゃないと遊べない駒を使う遊戯も、胡桃は自分自身と楽しく対戦出来る。 その楽しさは…彼女しか分からないだろう。
胡桃の名を知らしめているのは、堂主としての身分ではなく、もう一つの才能——詩の創作によるものの方が大きい。 彼女は「路地裏の漆黒詩人」と自称し、歩けばすぐに詩を思いつく才能を持つ。 『ヒルチャー夢』は胡桃の最も有名な作品だ。港の住民に愛されるだけでなく、軽策荘の子供も歌っている。 愛好家や評論家は、このシンプルで奥深い作品に感銘を受け、この詩人の作品を探すため万文集舎に足を運んだ。しかし、残念ながら胡桃の詩集『璃月雑談』と『薪米油塩』はまだ発刊されていない。 いつも本屋に入り浸っている行秋も、どのような人物か興味を持ち、わざわざ手土産を持って彼女を訪ねたことがある。 二人は往生堂の中庭で即興で詩をそらんじ、切磋琢磨した。行秋の伝統に則った整然とした句に対し、胡桃は常に奇抜な発想と奇妙な言葉で返す。 乱雑に見えるが実は奥が深く、心地の良い音律を持ち、理解しやすく口にもしやすい、平凡な詩よりも実に巧みであった。 胡桃の詩は驚きの連続であり、行秋は笑いながら負けを認めた。 対決は仲睦まじく終了し、二人は詩を通じた友達となった。 詩を矜じ合う内に、重雲までもが審査員として引っ張られてきた。3人の笑い声は秋の日の紅葉のように、町中に広がったという。 対決中に創られた詩は、傍聴者によって記録されている。 もし町で上の句が真面目で、下の句が洒落の効いた詩が聞こえてきたら、きっとそれは行秋と胡桃が創り出したものに違いない。
帽子の材質は硬く、正面には往生堂の紋章があしらわれている。 これは第七十五代目堂主から胡桃へと受け継がれた帽子だ。しかし、その堂主はガタイが良く、頭は胡桃より二回り以上大きかった。 そのため、胡桃は一日がかりで手直しし、自分に合ったサイズに調整している。「この帽子は法力を持っていて、邪気を払い、平和を守護するものなの!」と、胡桃はよく口にする。 葬儀屋の従業員たちはそれを聞く度に一笑に付すのだが、彼女が帽子に対して抱く愛情は誰もが知っていた。 雨と風が激しい夜、体が汚れようとも帽子だけは守るのだ。 なお、帽子に付いている梅の花は、胡桃が自ら植えた梅の木から摘んだものである。 作り方は——花を乾燥させた後、色料と油を筆で丁寧に塗り、3日間日光に当てて干す。精巧な装飾品となった梅の木は、手触りが良く、ほのかな香りがある。
胡桃の神の目について知るには、彼女の祖父の葬儀が行われた時の話をしなければならない。 胡桃の祖父が病により他界したのは、葬儀の十日前のことだった。第七十五代目堂主のため、往生堂は遺言をもとに盛大な葬儀を準備した。全体の指揮を執ったのは当時13歳の胡桃。その頃、幼い胡桃はまだ堂主にはなっていなかったが、一人であらゆる仕事をこなし、葬儀屋の従業員たちを感服させた。 葬儀が終わった後、胡桃は荷物を背負い、夜の闇に乗じてこっそりと外へ出た。非常食と水、そして灯だけをもって向かった先は、世にも奇妙な場所—— 無妄の丘のずっと先にある「境界」だった。そこは往生堂が先祖代々管理してきた秘密の地であり、生と死の境界線なのだ。そこに行けば、亡くなった親族やこの世に未練を残す魂と会えると云う。胡桃がここに来たのも、祖父が遠くへ行ってしまう前に、もう一度会いたかったからだった。 丸二日掛けて「境界」に辿り着いた胡桃だったが、祖父に会うことは出来なかった。ここには数えきれないほどの魂が彷徨っているが、そのどれもが、祖父とは似ても似つかない。 一日中待ち続けたが、胡桃はとうとう疲れ果てて寝てしまった。再び目を覚ました頃には、既に真夜中だった。周囲にはいくつもの魂がうろつき、胡桃を嘲笑っている。 「バカな娘だな、胡じいがここにいるわけないだろ。こんな所まで探しに来るとは、さては正気を失ったか?」 胡桃は無視して待ち続けた。それから何日経ったのか…非常食と水が底を尽きかけても、胡桃の祖父は現れなかった。しかし、代わりにとある老婦人が目の前に現れた。 小柄な老婦人は疲れ果てた胡桃を見て笑った。「その頑固な性格は胡じいとそっくりじゃな。残念じゃが、歴代の往生堂堂主はこんな所に留まったりせんよ。彼らは堂々と生き、悔いなく去るのじゃ。じゃから帰れ、お前がいるべき場所へ。」 不思議な老婦人は胡桃に別れを告げると、境界の深部へと去っていった。胡桃は遠くへ離れていく背中を見て、なんとなく理解した。 祖父はすでに境界を越え、正しき場所へ向かったのだと。堂々とした悔いのない人生だったんだ、だから私も堂々と受け入れるべきだ…そう胡桃は思った。 そう納得した彼女はふいに笑みをこぼし、帰路につくことにした。ここへ来る時は月光に照らされていた道も、今は朝日に輝いている。祖父がいつも言っていたことを思い出した。「生まれるべき時に生まれ、死すべき時に死す。思いに従い、最善を尽くせ。」 昼頃に家に着くと、胡桃は裏庭を通って寝室に入り、荷物を片付けた。 すると空っぽだったはずの袋の中に、眩しく輝く「神の目」が入っていた。 「境界」に足を踏み入れた果敢で稀有な人間として、胡桃はどこかの神の心を掴んだのかもしれない。 彼女は高天からの贈り物を得た…計り知れないほど強大な、力の証を。
堂主の私に何か用かな?あれ、知らなかった?私が往生堂七十七代目堂主、胡桃だよ!でもあなた、ツヤのある髪に健康そうな体してる…そっか!仕事以外で私に用があるってことだね?
私たち往生堂には、二つの世界の人を満足させる責任がある。だから、依頼を受けたら必ず最後までやり遂げるの。
「往生堂」の仕事は別に難しくも怖くもない、少し面倒なだけ。私たちを見かけたら怖がる人がいるから、何だか悲しいな。もう~そんなんじゃないのに!
私は「往生堂」七十七代目堂主、おじいちゃんが七十五代目よ。私が初めて引き受けた仕事は、おじいちゃんの葬儀だったの。うん?意外だった?知らないうちに何年もやってきた…時間が経つのって早いね。
「往生堂」の堂主か?あぁ…相当の変わり者で、葬儀屋の悪い癖が身に染みついてしまっていると、周りの者は言っているな。だが、それは間違っている。「往生堂」は実に真っ当な生業であり、商売としても正しく成り立っている。仕事は仕事だ。上も下もなく、吉凶で判別できるものではない。 ただあの堂主様だが、あまり私のところには来ないんだよな、うーん…
璃月港の講談師が釈台を叩くなり、その口からは鬼神や妖怪の奇談が滔々と流れてくる。聴衆はそれらの物語を好んで聴いてはいるものの、同じ話の繰り返しに少し飽きてきているようで、「宝石売りの話も、お宝を盗む賊の話も前に聞いたぞ。他にないのか?」と口を揃えて言う。 そんな時、白朮が舞台の下を通った。それを目にした観衆は皆、心の中でこう呟いたという——「白先生なら何かしら逸話を持っているはずだ。だが、それを物語として話してもらうのは難しいだろう…」と。白朮の医者としての徳は広く知られている。食事の後、彼のことを語ろうにも「白先生は何やら裏で仙術を探し求めているようだ」といったことくらいしか話せることがない。ただ、人々が話すそのことに関して、白朮本人は特に隠す気がないようだ。 不卜廬には色々な人が訪れる。多少なりとも目聡い人であれば、白朮が手の空いた時に読んでいる本が医学書だけでなく、求道や仙法に関する古書であると気づくだろう。さらに、不卜廬の薬籠には各種稀有な薬材もしまわれており、一般的な病気の治療薬でもないのに、定期的に消耗されては補充されている。その辺の人なら露知らず、方士一族の者から見れば、それらは伝説にある様々な「不死の薬」を配合するための薬材だと一目で分かるはずだ。 不死という言葉は、一般人にとって実に摩訶不思議なものである。もし好奇心をくすぐられ、白朮がどんな方法で不死を追及しているのか、どの境地にまで達しているのか探ろうとすれば——暗闇の中で綱渡りをするような、一歩も進めない状況に陥るだろう。 やがてその噂は広まり、人々は様々な反応を見せるようになった。それを我が物にしようと目論む人、異を唱える者、または不死自体には関心がなく、それによって波風が立つことを恐れる人… 白朮は薬舗に身を置きながらも、そういった街の反応には気づいていた。広大な璃月の地において、もっとも厄介なのは三つ目の反応をする人たちだ。白朮は元々、それらを水面下で処理しようと考えていた。しかし、この一件により総務司の要注意名簿に「白朮」の名前が載ってしまったそうだ。幸い、白朮は普段から細心の注意を払っており、各地域の患者を問診する際に雑談を交わしていたことで、総務司が自分に対して警戒を強めているのを少しずつ耳にしていた。そこで、彼はちょっとした策を巡らせた——自身の研究に怪しい点はないと噂を流し、人々の言葉に乗せて世間に届けたのである。 噂とは、病原体と似たところがある。ひとたび人の口から放たれると、たちまち拡散していくのだ。そのような策を経て、白朮はやっと一連の問題を収めることができ…さらには岩上茶室の主·夜蘭の秘密情報名簿にも載らずに済んだのである。 また、前述の二つ目の反応をする人たちだが、その大半が宗家の子孫であり、彼らの考えはそう簡単に変えられないものとなっている。「天行常有り、生死定まりし」を信条とする彼らは、白朮のそれとは相反するものだ。そして何を隠そう、不卜廬から一本の道を進んだ先にある往生堂がその考えを持った者たちなのである。 「遠くの親戚より近くの他人」という言葉があるが、何年も前から付き合いのある不卜廬と往生堂は、いつも笑顔で挨拶を交わす間柄だ。もし生死に関して往生堂の堂主·胡桃に意見を尋ねれば、おおよそ決まった答えが返ってくる。「二言三言で意見がまとまるわけないでしょ。なんなら、白朮にご飯でもご馳走したほうが手っ取り早いんじゃない?」——白朮ほど心の澄んだ者であれば、宴席に誘えば快く応じてくれるだろう。異なる理念を持つ両家だが、年月を重ねていくうちにそう悪くない仲を築くようになった。気心こそ知れてはいないが、友と称しても差し支えないだろう。 そして、気心の知れない間は礼儀をわきまえ、それを知れば尽くすべき職務を語る。薬舗たる不卜廬は必然的に、治療の手遅れとなった者や寿命の尽きた者の相手を避けることができない。その者の運命が恵まれていれば、もちろん家族がその亡骸を引き取って葬儀が行われる。しかし、もしそうでなかった場合、亡骸を送るのは不卜廬だ。その際、不卜廬は往生堂と協力をして、故人の冥福を祈る。 葬儀はとても重要な仕事だ。そのため、堂主の胡桃はもっとも信頼のおける客卿·鍾離にこれを一任している。不卜廬の白朮も自ら参列して、その弔意を表す。葬儀は静かな夜、幽邃な草堂で執り行われることが多い。白朮が故人を送り、客卿が各種儀礼を行えば儀式は終わりだ。これできっと故人も安らかに眠れるだろう。 しかし、残念ながら故人は既に逝き、不卜廬と往生堂に礼を言える者はもう存在しない。天地は絶えず回り、規律は不変——生と死もまた同じなのだ。医者と客卿の二人——普段は隣人であり、食卓を囲めば友となる。唯一、亡骸を送る静けさの中でだけ、両者は心を交わす。そして草堂の扉を出たら、再びいつもの間柄に戻るのだ。 ——最後に、一つ目の反応をする人たちについて、その数こそ多いものの、単純で手荒な手段を取るため一番対処がしやすい。 荒れた山野には盗賊がはびこっている。山道で独り薬草を採る白朮を数人の無知な輩が発見した——「白先生は密かに不死の仙薬を探してるって噂だ。こんなところでコソコソやってるってことは、きっといい薬が見つかったに違ぇねぇ。悪いが、仙薬は俺らがいただくぜ!」と、その手が白朮へと伸びる。数時間後、通報を受けて現場に駆けつけた千岩軍が目撃したのは、まとめて地べたに転がっている盗賊と、その傍で余裕の笑みを浮かべた白朮であった。これではどちらが被害者なのか分からない。 「事情聴収の前に、失礼ですがひとつだけ質問させてください…」と千岩軍は躊躇いながら口を開いた。「白先生がこんな辺鄙な所まで来られたのは、本当に風邪の薬を採るためなのですか?」 「もし私が特別な薬を採りに来たのなら…」白朮は首を横に振りながら笑みを崩さずに言う——「彼らに見つかるわけがないでしょう?」 一連の物語は人づてに講談師の耳にまで届いた。だが少し思案した後、彼は首を振りながらため息をつく——「いや、やめたやめた。白先生は結局のところただの医者じゃないか。奇妙な逸話なんてあるわけがない。」
璃月港には絶えず大勢の人々が出入りしている。裕福な璃月の大商人、変わった身なりの異郷人、高級官僚、そして親切な鏢師など…性格も職業も様々な人々が行き交うこの街には、どんな者が現れようとも不審に思われることはない。 たとえ見覚えのない者が突然街に一人増えたとしても、住民たちは特に何の反応も見せないのである。 ある日、璃月港に突然やってきたとある女は、「閑雲」と名乗った。それはすらりと背が高い、なんとも気品のある女で、赤い縁をした眼鏡をかけている。 璃月にマシナリーを売りに来ているフォンテーヌの商人たちは、彼女をたまに見かける。彼女は屋台の前を通りかかると、足を止めるのだ。そして、仕掛けの設計をめぐって商人たちと議論を交わすうちに、日が暮れていることもある。万民堂の卯師匠と香菱は、彼女と顔馴染みらしい。彼女はしょっちゅう店を訪れては、グゥオパァーと一緒に卓につき、熱々の龍髭麺を待っている。新月軒と琉璃亭の従業員も、彼女を知っている。たまに往生堂の鍾離先生の客人として、一緒に来店することがあるからだ。おもちゃ屋の店主·山ばあやは彼女を覚えている。よく白い長髪の若い女を連れて、おもちゃを見に来ていた。申鶴と呼ばれる連れの女は、しばらく品を眺めてはいたが、特に気に入ったものが見つからなかった様子だった。それでも閑雲は、時々彼女をおもちゃ屋に連れてきていた。 ちょっとした趣味があり、広く人々と付き合い、友人も多い——璃月港のほとんどの住民と、閑雲はさして変わらないようである。 だから、彼女が玉京台近くの池のほとりでピンばあやと語り合っていても、その姿に何ら違和感はない。 「近頃、理水にはあまり会っておらぬな…削月のやつは、前に貸してやった『多用途洞天掃除呪符』をまだ返さぬのだ。」 「おや?新しく作ったと言っていた、呪符型からくりかい?」 「その通りだ。ふむ、説明しよう…」 また、璃月港の家々から灯りが消え、街がしばしの静寂の中で、再び目を覚ますまでの時間を持て余した頃…時に、閑雲は小径を辿って天衡山へ向かう。 岩だらけの険しい道も、閑雲にかかれば造作もない。両足で軽く地面を衝けば、たちまち足元には風が吹き起こり、瞬く間に山頂へと辿り着く。 朧気に見える遠くの街の景色を見降ろしながら、「閑雲」から鶴の姿となった彼女は、翼を広げて空高く飛び上がる。 なにせ、森羅万象を抱く璃月港なのだ——仙人が幾人か住んでいたとしても、何ら不思議ではないだろう。
そのほかのゲーム内テキスト
40昔、誰もアタイのロックを聞いてくれなかった。でもある日、「うちでやってみないか?合格すれば常駐の歌手として雇う」って急に彼に誘われてさ。やっとアタイの音楽を理解してくれるヤツが現れたって嬉しくてその話に乗ったんだけど。結局現地に行ってみたら、彼が葬儀業者の「往生堂」の客卿だったことを知った…どう考えてもアタイの音楽に合うわけないだろ、変なヤツだよ。
あの若い娘が口にする言葉は奇々怪々だ。しかし「往生堂」の者たちは皆あの子を敬っており、帝君でさえも畏まった態度で「客卿」とやらを務めておる…それにあの子は、食に対しても独特な見解を持っているそうだ。これほどの奇人、当然妾も好奇心を持たずにはいられぬ。
「往生堂、期間限定割引!1個買ったらおまけが1個、2個買ったらおまけが3個、どんどん増えるよ!」
でも、「往生堂」の堂主がそれを説くのはちょっとおかしいだろ。
「往生堂」のあの先生か?たまにみんなから彼の噂を聞くけど、面白い人のようだな。うん、機会があったらあんたも彼と交流してみるといい。
胡桃の衣装。暗い色を基調とした往生堂の服とは異なり、明るい色のワンピース。服は友人の香菱が胡桃のために用意してくれたプレゼントで、サングラスは胡桃の自前である。
往生堂はおかしな人ばっかりなの?
往生堂?うーん…別に必要ないかな。
…きである。その過程において、蔵書家は重要な役割を果たす。璃月港には「東明居士」を自号する博識な学者がいるが、これはまさにそうした蔵書家の一人である。 東明居士は往生堂の客卿·鍾離と親交があり、よく彼に古書の真贋鑑定を依頼している。ある時、鍾離が所用で向かえず、代わりに友人に鑑定を頼んだことがあった。 赤縁の眼鏡をかけ、すらりと背が高いその友人は「閑雲」と名乗った。東明居士は、鍾離と同じく、風雅の道に心を…
「往生堂」七十七代目堂主。若くして璃月の葬儀を仕切り、責任を持ってそれを執り行っている。
…目について知るには、彼女の祖父の葬儀が行われた時の話をしなければならない。 胡桃の祖父が病により他界したのは、葬儀の十日前のことだった。第七十五代目堂主のため、往生堂は遺言をもとに盛大な葬儀を準備した。全体の指揮を執ったのは当時13歳の胡桃。その頃、幼い胡桃はまだ堂主にはなっていなかったが、一人であらゆる仕事をこなし、葬儀屋の従業員たちを感服させた。 葬儀が終わった後、胡桃は荷物を背負い、夜の闇に乗じて…
ごめんください、往生堂の方ですか?
数百年後、琥珀に封印されていた七七は、やっと人々に発見され、埋葬するため「往生堂」へ送られた。 険しい山道を行く途中、琥珀はあっちこっちにぶつけられた。加え、長い年月の中で、七七の封印は今にでも解かれそうな状態であった。 ある夜、七七は完全に覚醒し、こっそり琥珀を打ち破り逃げ出した。 生前の習慣の影響により、七七は山森…
彼は鍾離先生、往生堂の客卿。
葬儀は、人生最後の舞台。 そして璃月の「往生堂」は、その終の演出を仕切る存在だ。 伝統的な葬儀には多種多様な仕来りがある——霊の守護、埋葬の方法、位牌に使う素材…すべての事柄に対して、厳しい掟が存在する。 亡くなった者の身分と貧富にかかわらず、彼らに見合った葬儀を行う必要がある。それが…
孟の話から、狼兄貴が彼の幼馴染で、昔事故でなくなったことを知った。そして今霊異事件が多発しているのは、恐らく狼兄貴の祟りであると孟は嘆いた。それに孟と同じく幽霊の話を信じる者はもう1人いた。それは往生堂を訪ね呪を祓おうとする洛成。胡桃は彼らの恐れがただの気のせいであることに気付き、偽の儀式を仕掛けた。しかし儀式が終わった後、なんと本当に狼兄貴の魂が出てきてしまった。
通常、キョンシーの体は冷たく硬いため、飛び跳ねるようにして動く。 普通の人に近い状態を保つため、七七はいつも柔軟体操をしている。 「往生堂」の七十七代目堂主である胡桃は、これをよく思っていなかった。彼女は七七と会う度に、熱心に提案する。「私に葬られた方が楽だよ」 もちろん、七七は葬られたくはない。そのため、彼女はいつも人気のない夜に、体を鍛えているのだ。 不死身の七七は、記憶…
見たところ、往生堂のサービスを売りつけてるみたいだな。
たとえば、往生堂は冒険者協会からの要請を優先的に処理するっていうのはどうでしょう?さらに、最初のお客さんには特製の箱を100個おまけしてあげます。
ああ、それは確かだが…そういえば最近、往生堂に入ったと聞いたな。
往生堂に帰って事の経緯を聞く
ご紹介します!こちらは往生堂の客卿であり、今回お呼びした宝物鑑定の専門家——鍾離先生です!
往生堂の鍾離殿か、すごい人物だってことはなんとなく分かる。悪党は人を殺し、ぼくら方士は妖魔を退治するが、彼は仙人を葬り去ることができるからな。
私たち往生堂には、二つの世界の人を満足させる責任がある。だから、依頼を受けたら必ず最後までやり遂げるの。
璃月の風習だと、普通の人は「往生堂」の者とは会話しないのです。
って、ええっ——!?まさか往生堂が病気で苦しむ人をわざわざ助けるとでも思ってたの?
でも、なぜか彼は往生堂に入ったんだ。正直言って、あそこの堂主は変わった人なのに。
往生堂の堂主になることは、きっと悔いの残らない正しいことなんだと思う。
「往生堂」に招かれた謎の客卿。博識であり、あらゆることに精通している。
かつての場所を訪れると、すでに災いが起こっており、往生堂の堂主も閉じ込められていた。あなたは奥へと向かおうとしている。慎重に行動しよう。
…談』と『薪米油塩』はまだ発刊されていない。 いつも本屋に入り浸っている行秋も、どのような人物か興味を持ち、わざわざ手土産を持って彼女を訪ねたことがある。 二人は往生堂の中庭で即興で詩をそらんじ、切磋琢磨した。行秋の伝統に則った整然とした句に対し、胡桃は常に奇抜な発想と奇妙な言葉で返す。 乱雑に見えるが実は奥が深く、心地の良い音律を持ち、理解しやすく口にもしやすい、平凡な詩よりも実に巧みであった。 胡桃の…
「往生堂」の仕事は別に難しくも怖くもない、少し面倒なだけ。私たちを見かけたら怖がる人がいるから、何だか悲しいな。もう~そんなんじゃないのに!
(往生堂が依頼の受け取りに使用する板。依頼人はここから木札を取って内容を書き込んだ後、また往生堂の門の隙間から木札を押し込む。)
絶対に効果があるから安心して。これは往生堂に代々伝わる方法なんだから。
分かってますって、お金の話でしょ。けど、私たち往生堂が出してる条件は十分魅力的なものだと思いますよ?
胡桃と一緒に往生堂に帰る
二日間も音沙汰のない胡桃。往生堂に戻っていないか、確かめよう…
でも、私はこの仕事を気に入ってるの。もし往生堂にして欲しいことがあったら、なんでも言って。
往生堂、「聞けない人」、もしかしてそれってこの世の人じゃないんじゃ?
胡桃の衣装。「往生堂」堂主が仕事する時に身に着ける日常的な服装。